常備したい。自家製ジンジャーエール
この夏、私は自家製ジンジャーエールを何度も試作しました。もともと、市販されている炭酸飲料も甘い飲み物も苦手な私は、そういったものをほとんど口にしません。ただ、甘みのついていない炭酸水は好きなので、アルコールの飲めない自分のために、ジンジャーエールシロップを作ってみようと思いました。
生のしょうがとスパイスにレモン。それらをはちみつで漬け込んだり、黒砂糖などで煮詰めたり。色々なタイプを作りましたが、炭酸水で割って飲んでみると、どれもすっきりしたおいしさにびっくりしました。甘すぎないので食事にも合わせられ、飲んだ後の胸焼けもお腹のはった感じもありません。
それ以来、その時の気分に合わせ、レモンを追加したり、ハーブを浮かべてみたりとジンジャーエール時間を満喫しています。自分で作ったジンジャーエールシロップなら、飲みすぎなければ体を冷やすこともなさそうです。しょうががたくさん入っているので、体を温める効果も期待できそうです。最近は朝夕も涼しいのでお湯やほうじ茶で割って温かくして飲むこともあります。
さて、夏だけでなく一年中楽しめる万能なシロップを『図書カフェ』コーナーで紹介したいと思い、ジンジャーエールに合わせた本を探しました。後半に紹介する絵本や児童書は私が実際ジンジャーエールを飲みながら、「これは合う、これは合わない」とソムリエ気分で選んだものです。これはなかなか楽しい作業なので、皆さんも、飲み物と本の組み合わせを考えてみてくださいね。
ジンジャーエールシロップを仕込みます
仕込んでから3日ほどおいた方がおいしくなるので本の準備より先にこちらを作りましょう。レシピにはたくさんのスパイスを書きましたが、まずは家にあるものから使ってみてはいかがでしょうか。
作り方は、しょうがやスパイスを砂糖で煮詰めていく方法もありますが、今回はより簡単で、味が少しずつ変化していく漬け込み方式をご紹介します。
<材料>
しょうが 50g
レモン 100g(他の柑橘類を合わせてもよい)
黒砂糖 50g
はちみつ 80〜100g程度
塩 ひとつまみ
スパイス
黒胡椒5粒、クローブ3粒、シナモンスティック1/3本、カルダモン3粒、
スターアニス1/3個、バニラビーンズ1㎝分
(種を除いた赤唐辛子を加えてもよい)
<作り方>
保存用の瓶は煮沸消毒しておくとよい。
1 しょうがはよく洗って、皮付きのまま薄切りにする。
2 レモンもよく洗い、輪切りにする。
3 瓶に、しょうが、黒砂糖、レモン、黒砂糖、しょうが……というように何回かに分けて重ねていき、塩、スパイスをのせ、材料が隠れるまではちみつを注ぐ。
4 しばらくして水分が出てきたら冷蔵庫で寝かす。
・3日目ぐらいからおいしくなります。好みの量を炭酸水やお湯で割って飲んでください。
- ・シロップが少なくなってきたら材料が頭を出さないように、砂糖やはちみつを足していきます。スパイスはそのままで、レモン、しょうがはどんどん使っていったほうがいいです。
- ・しょうがやレモンはそのまま食べる、または刻んでパウンドケーキに入れるのもおいしいです。
ジンジャーエールとつながる本
おいしいジンジャーエールシロップの仕込みも終わりました。ここで、少し脱線しますが、この記事を書いている途中で出会った本2冊を紹介したいと思います。
「ジンジャーエールってそもそもどういうものなの?」と思った私は飲み物の歴史やビールの本などを図書館で?借りてきて調べていました。
ジンジャーがしょうがというのはわかるけれど、エールってなんでしょう。
答えはビールの発酵方法に由来していました。
ビールには温かい環境で発酵させる上面発酵(エール)と低い温度で発酵させる下面発酵(ラガー)があるそうです。もともとは上面発酵させて作っていたことから、ビール全体をエールと呼ぶこともあります。
ビールといえばホップの苦みがポイントとなるのですが、ホップを使う前はハーブなどで作ることもあり、しょうがでも作られたようですね。しょうがで作られたビールは「ジンジャービア」として今でもイギリスなどで売られているそうです。
ジンジャーエールはそこが元になっているようですが、ノンアルコールの炭酸飲料になったのは、発泡水と一緒に売るシロップとして作られたことが始まりのようです。
エールのことを調べていたら小学6年生の長男が「エールってどんなものなの?」と聞いてきました。彼が最近読んでいた本『ダレン・シャン』と『クレプスリー伝説』(ともに、ダレン・シャン=作、橋本恵=訳、田口智子=絵、小学館)に書かれていたというのです。なんでも主人公のバンパイヤがよくそれを飲んで酔っ払っているのだそうで、こんな会話ができるのは本のおかげだなと思い、うれしくなりました。
もう一冊は、以前取材した家庭文庫「おはなしのへや ぽっぽ」のはる子さんが紹介してくれました。
この記事の構想を練り始めた時に、ジンジャーエールが出てくる物語を探していました。けれども、残念ながら自分では見つけることができず諦めかけていた時です。はる子さんから「しょうが水が書かれた本を見つけましたよ!」とうれしいメールが届きました。
それは『長い冬』(ローラ・インガルス・ワイルダー=作、谷口由美子=訳、岩波少年文庫)です。
ジンジャーエールとは違いますが、ローラにとって「しょうが水」はよほどおいしかったのでしょう。厳しい暑さでの農作業中、かあさんが作ってくれたしょうが水を飲んだローラは「こんなびっくりのおかげで平凡な今日という日が急に特別の日となった」と言っています。
この文章を読んだ時、このローラの感動を知ったことが私にとっても特別なことになりました。今の私たちにとっては、どんなにおいしいしょうが水を飲んでもそこまでの感動は味わえないでしょう。でも、ローラの体験を読むことで、ローラの味わったそのおいしさを想像することができます。本を読むってそういうことなのかなとあらためて思いました。
ジンジャーエールと一緒に楽しみたい本
ではお待たせしました。最後は私がソムリエになりきり、選び抜いた本を紹介しますね。
私の中の、ジンジャーエールのイメージは、「大人に近づきたい子ども」そして、「ちょっとおませな子ども」です。
また、このジンジャーエールがおいしく飲み終わるぐらいでさくさく読めるという視点から探しました。
まずは『ちいさいロッタちゃん』『ロッタちゃんとじてんしゃ』(ともにアストリッド・リンドグレーン=作、ヴィークランド=絵、山室静=訳、偕成社)
です。
ロッタちゃんのおませな感じもはちゃめちゃな感じもジンジャーエールに合うように思います。
こちらもリンドグレーンの本ですが、『長くつ下のピッピ』はいかがでしょうか。ピッピのびっくりするような行動がジンジャーエールのピリピリにちょうどいいようです。
最後は『おさるのジョージ』シリーズで、ジョージと一緒にジンジャーエールを楽しみましょう。
テンポよく進むお話がジンジャーエールのシュワシュワ感にぴったり。悪役が登場しないお話は安心して読むことができます。
このシリーズで一番おすすめは『おさるのジョージ としょかんへいく』(M.レイ、H.A.レイ=作、福本友美子=訳、岩波書店)です。アメリカの図書館の様子がわかるし、ジョージと一緒に図書館の中を歩いている気持ちになれます。
今回はこれらの本を選びましたが、ジンジャーエールをホットで飲むと、また違う選書かもしれませんね。皆さんもぴったりくる本を探して、素敵な図書カフェ時間をお過ごしくださいね。
参考文献
『「食」の図書館 ビールの歴史』(キャビン・D・スミス=著、大間知知子=訳、株式会社原書房)
『ビールが美味しくある話』(橋本直樹=著、ウェッジ)
『歴史を変えた6つの飲物』(トム・スタンデージ=著、新井崇嗣=訳、楽工社)
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