地域とつながる横浜美術大学 地元密着の活動も広げています!
青葉区鴨志田町にある横浜美術大学は、横浜市で唯一の4年制の美術大学。横浜市で行われる現代アートの国際展「横浜トリエンナーレ」の企画協力や、学生作品が内閣官房東京オリンピック・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局が推進するbeyond2020認証ロゴマークの最優秀賞を受賞するなど、学外にも積極的に出て活躍しています。普段立ち入る機会のない大学ですが、卒業制作展(卒展)が一般公開されるとのこと。この機に足を運んでみてはいかがでしょうか?

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2023年10月14〜15日の2日間、横浜美術大学の芸術祭「横幻亰⼤蔡(オウゲンキョウタイサイ)〜ヨコビニューロマン〜」開かれます。10⽉15⽇(⽇)には、「のん」さん制作の映画『Ribbon』の上映会とともに、のんさんのトークイベントもあります!!文化祭シーズンに、ぜひ足を運んでみてくださいね。

詳細はこちら。

https://www.yokohama-art.ac.jp/news/8968

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「横浜美術大学」は、森ノオトの事務所と同じ青葉区鴨志田町にあります。こどもの国へいく道すがら、大学の青い看板を見たことがある方も多いことと思います。
2022年1月、その横浜美術大学を取材させていただけるチャンスに恵まれ、うかがってみました。お話をお聞きしたのは、横浜美術大学の副学長・美術学部学部長の加藤良次さんです。加藤さんは染織作家で、同校ではクラフトデザイン研究室主任とテキスタイルデザインコース教授を務めています。

バス通りに面するここが正門。お隣は日本体育大学(撮影:梅原昭子 以下特記なき写真は梅原撮影)

 

1990年代、横浜美術大学が短大の頃から教鞭をとっていた加藤さん。取材で学内を案内してもらうと、行く先々で学生たちにアドバイスをしたり相談に乗ったり。みんな顔見知りなんですね

 

加藤さんといえば、“「寺家回廊」で田んぼのインスタレーションを手がけている作家さん”というと、ご近所の方々は「ああ!」と思われるのではないでしょうか?
寺家回廊とは青葉区の寺家町で毎年10月に行われるアートイベント。絵画や陶芸、家具などの木工、染織、版画などの工房やギャラリーを公開し作品展示などを行うイベントとして2006年からスタートしており、加藤さんは従来から同イベントに参加していた「JIKE STUDIO」の方に誘われ、第2回目から里山風景を生かした田んぼでのインスタレーションを毎年展示しています。

寺家町は人の住まいも含む谷戸全体が保全されている地域。加藤さんのインスタレーションは寺家ならではの作品で、メディアに取り上げられることが多いそう。写真は2021年の作品(写真提供:加藤さん)

加藤さんによれば「毎年準備や片付けを含め1週間は現場に通います。僕は展示の間もずっとそこにいるので、観に来てくれた人と話しているうちにいろんな人と仲良くなっちゃった」とのことで、森ノオトでもおなじみの「社会福祉法人グリーン」や青空自主保育「ぺんぺんぐさ」、鴨志田地域ケアプラザの方々ともそこで知り合ったのだそう。グリーンやぺんぺんぐさでは植物染めのワークショップを行ったり、ケアプラザには生徒の作品を展示するなど、寺家回廊での出会いが大学としての地域貢献活動に展開しました。

大学としても、地域連携には力を入れているのだそう。青葉台郵便局の2、3階をリノベーションし開業したコミュニティ&コワーキングラウンジ「SPRAS AOBADAI」では、外部の壁面デザインやイベントへの参加をはじめ、定期的なワークショップを開催しています。また、青葉区で恒例となっていた「よこはまハロウィン」では東急百貨店たまプラーザ店のエントランスでオブジェの展示やワークショップを行いました。最近では、学生たちが制作した絵本を青葉区内の4つの保育園に貸し出す取り組みも始めるなど、実は地域の様々な場にアートを通して関わりがあることを知りました。

2019年度のよこはまハロウィンでの作品展示。このときは子ども向けのワークショップも開催(写真提供:横浜美術大学)

 

リユース・リサイクルショップを展開するNPO法人「We21ジャパン」は、青葉台にも店舗を構えており、大学に古着を寄付するなどつながりが深い。写真は同法人のイベントにて大学のワークショップを開催したときの様子。このほか、県外でのアートイベントへの参加や社会貢献活動も多数実施しているとのこと(写真提供:横浜美術大学)

 

横浜美術大学といえば、短大だったというイメージのある方もいるかもしれませんね。
横浜美術大学の設置者である学校法人トキワ松学園は1916年(大正5年)に、自立できる女性を輩出することを目的として女学校を創設しました。この青葉区の地には、1966年(昭和41年)に「トキワ松学園女子短期大学」として開学後、男女共学化や専攻・コースの再編成などを経て、2010年(平成22年)に現在の4年制大学「横浜美術大学」を開学したのだそうです。

 

現在、学生たちの学びの仕組みとしては、まず1年次にA系(絵画・彫刻)、C系(クラフトデザイン)、V系(ビジュアルデザイン)の3つのカリキュラムモデルの中からメインとサブの系を1つずつ選び、基礎的な表現技法と知識を学びます。2年次~3年次は10コース(絵画・彫刻・クラフト・プロダクトデザイン・テキスタイルデザイン・ビジュアルコミュニケーションデザイン・映像メディアデザイン・アニメーション・イラストレーション・修復保存)に分かれて高度な表現技術の修得を目指し、4年次には10専攻に絵本と写真を加えた12専攻で社会に必要とされる表現を実践的に学べます。イラストレーションや絵本、アニメーションの専攻を大学に設けているのは珍しく、学生に人気があるのだといいます。

 

学生数は全体で850人ほどと大学としては小規模なため教員と学生の距離が近く、自分の専攻と違う授業でも選択できることが特徴だそう。こうした説明を聞くと、横浜美術大学に入った学生たちは、入学してから興味を持った分野をあれこれと選択して受講しながら、先生や仲間たちの間で刺激を受けつつ、自分のやりたい分野を見極めていけるのだろうな…と、思わず学生生活を想像してしまいました。

構内を案内してもらうと、テキスタイルデザインコースの染色工房では学生がタコをモチーフにしたカラフルで大きな染めの作品を制作中。テキスタイル(染織)デザインの魅力は、描いて染めたり織った作品が、衣類や傘など立体や日常づかいできるモノにもできるのが面白さだという

 

友禅の柄を描く学生の姿も。今まさに唯一無二の素敵な作品が生まれようとしている瞬間を、学内のあちこちで目にすることができた。若いパワーにふれられることが学校取材の醍醐味!!!

 

織り工房では、ラグなどを制作する技法「フックドラグ」による制作が行われていた。使っている糸は個性的で表情豊かなものが多く、アパレルの産地として有名な愛知県一宮市のメーカーから寄付されたものも多いという。遊具のような立体作品を作った学生は、完成後の撮影方法について加藤さんに相談中

 

金属工房では鍛造の授業中。銅板をトンカントンカンと叩き出して鍋を作る。ツナギを着て、様々な道具を使いこなす学生の皆さん

 

実は私も地方の小規模な美術系大学を卒業していることもあって、家族とコロナ禍前の2019年に横浜美術大学の学祭を見に行ったことがあります。その時の学生たちののびのびとした楽しそうな様子といったら! 広々したキャンパスのあちこちに作品が置かれ、ワークショップや物販、ステージでは催しものが行われ、なかにはカラフルな髪型にデコラティブな服を着た学生グループがあったりと、一人ひとり個性を全開にクリエイティブな環境を謳歌している姿が印象に残っています。

 

ビジュアルコミュニケーションデザインコースの授業成果展では、コンセプトの立案から誌面デザインまで制作した雑誌や、コーポレートアイデンティティ(CI)が一貫した企業のロゴマークデザインなど、実用的な作品も多く並び、即戦的な実力を培えるカリキュラムなんだということも感じました。学生も先生も気さくに声をかけてくださり、フレンドリーな雰囲気だったことをよく覚えています。(「横浜美術大学芸術祭」(学祭)については、2020年度は感染拡大防止の観点から中止、2021年度はオンライン形式に変更)

 

学祭のほか、外部の人が学内を訪れることのできる機会としては卒展(卒業制作展)があり、そちらは2月に感染症対策を行いながら一般の人にも学内展は公開されるそう。全学生の卒業制作が全て並ぶのが学内展で、優秀な選抜作品は上野の東京都美術館でも展示されるのだそうです。私も学内展にぜひまた訪れてみたいと思いました。

昨年リニューアルしたばかりのおしゃれなカフェ(学食)。学外に飲食店がないので、学生は皆ここに集まるそう。優しい色合いは加藤さんが色彩計画をしたそうで、テーブルには電源を配備するなど、学生思いの設計になっている

他にも大学では一般への公開講座を土日に開講していたのだそうですが、そちらは現在感染拡大防止のためオンライン開催だとか。オンラインになる前、加藤先生の公開講座では浴衣地を染める講座を行っていたところ好評で、リピーターが多く他県からも通ってくる人もいたそうですよ。生涯学習として様々な世代の人に楽しんでもらう目的で開催されているというこの公開講座、大学の工房で一流の講師陣から実際にものづくりを学べるなんて、とっても魅力的です。早く本来の形で再開できるといいですね。

 

この日加藤先生からお話を聞いて、横浜美術大学って、想像していた以上に地域密着のつながりを大事に広げようとしていることを知り、私はとっても嬉しくなりました。キャンパスに入れば、作品を運ぶ学生の様子や、過去の作品を目にすることもでき、構内に溢れるクリエイティブで自由な空気に触発されるよう。ご近所にこうした美術大学があるなんて、すごく素敵なことだなと実感した取材でした。

Information

横浜美術大学
住所:横浜市青葉区鴨志田町1204
https://www.yokohama-art.ac.jp/

<2021年度 横浜美術大学 卒業制作展>
https://www.yokohama-art.ac.jp/lifestyle/graduation_works/index.html
学内展(横浜美術大学 構内)2022年2月4日〜 2月7日
学外展(東京都美術館)2022年2月14日〜 2月19日

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この記事を書いた人
松園智美ライター
まちづくりの専門誌、自然派住宅雑誌の編集部を経てフリーの編集&ライター業に。新潟の米どころ長岡市出身、今は港北ニュータウンの団地に暮らす3児の母。子らの育つこのエリアのことをもっと知って楽しみたいです。レイアウトやイラストのお仕事も好き。
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