「100人のひとしずく〜手前味噌プロジェクト〜」がスタートしたのは2018年のことです。
森ノオトでは創刊以来、青葉台エリアでの手前味噌づくりの記事の発信や、地産地消講座で手前味噌づくりを実施してきました。2017年春、横浜市環境創造局の職員から地元の若手農家グループ「遊休農地を活用する会」の三澤元芳さんを紹介され、森ノオトの味噌づくりのために、神奈川県の在来作物・津久井在来大豆の作付けをお願いすることになりました。プロの農家さんにとって、市民グループの「無農薬で在来大豆を育ててほしい」という要望はなかなかの無理難題だったと思います。豊作の年もあれば、猛暑や鳥害の影響で不作の年もあり、農家さんにはご苦労をおかけしてきましたが、毎年「約束した量をお願いして買い続ける」という関わりを5年間続け、横浜の生産者と消費者の結びつきを10年単位でつなげていきたいなあ、と思っています。
私が手前味噌づくりを始めた2006年には、「味噌を自分で作れるの?」とだいぶ珍しがられていましたが、今では「手前味噌?私も作っているよ!」とずいぶんメジャーになってきている気がします。わが家では、できあがり5kg分の甕(かめ)と10kg分のホーロー容器がありますが、実は大鍋でつくるカレーや豚汁がおいしいように、味噌も大きな桶で大量に仕込む方がおいしくできるのだ、ということに気づいたのは、「100人のひとしずく〜手前味噌プロジェクト〜」を始めてからのことです。
「100人で味噌を仕込みたい」。そんな壮大な夢を持ちながら、100人で味噌を仕込める場所はどこにある? と探し求めていた、たまプラーザ在住の料理家・みつはしあやこさん。味噌づくりや梅仕事など、季節の発酵食レシピを通して、健康な人もそうでない人も、性別や学区を超えて集い、再会できる関係を地域で育みたいと考えていました。みつはしさんの思いを森ノオトにつないでくれたのが、たまプラーザで地域活動している山本久美子さんです。
「100人で味噌」というみつはしさんのスケールの大きな夢を叶えられる場所はないだろうか……と考えた時に、「30年前、毎年何トンも味噌をつくる教室を青葉区で開催してきた、元祖・味噌ガールがいる!」と、私の頭にある人のことが思い浮かびました。その人は、寺家ふるさと村四季の家開設時の職員で、現在にいはる里山交流センターを運営する吉武美保子さん。さっそく相談に行くと、「だったら、うちでやりましょうよ」との力強いお言葉。吉武さんの鶴の一声で、横浜の里山環境の象徴とも言える新治の森で、日本人だけでなく外国の人も、体が不自由な方も赤ちゃんも、文字通り老若男女100人が集う記念すべき味噌づくりができたのが、2018年3月のことです。初年度は、横浜の伝説的な女性農家・平野フキさんのお宅に三澤百合子さんのつくったお米を持ち込み、糀をつけてもらいました。2019年度からは、江戸期文政年間から代々糀づくりを続ける瀬谷区の川口糀店の川口恭さんに毎年お願いをしています。
この時、みつはしさんが「100人で味噌を仕込む」という夢のために特別にあつらえた職人さんの味噌桶が、「100人のひとしずく」のシンボル的な存在になりました。毎年この桶を開封することによって、単に味噌を仕込む以上の価値が生まれることに気づいたからです。
・本物の調味料をつくるには、生き物の力を借り、年単位の歳月がかかる
・神奈川県の在来大豆は、豆自体が次の年の種になる
・最初の年に仕込んだ味噌が種味噌となり、毎年つなぐ新しい味噌が次の年の種になる
・木桶は一度使われなくなったらすぐにダメになる。木桶についた菌も味噌の味になっていく。木桶を生かしていくには毎年味噌を仕込む必要がある
・同じく、伝統的製法の糀づくりを続けていくのにも、職人の心と気力、それを支え求める消費者の思いが必要である
・里山の自然環境は一度開発されると元に戻らない。谷戸田がある風景を守るには、市民が里山環境に関心を持つことが大切である
・こうした味噌づくりを通して、横浜の豊かな農的な環境を未来に伝えていく意義がある
毎年同じ100人で味噌を仕込まなくても、多くの人の手を介してつくった手前味噌は、これらのメッセージを伝える力を持っています。
2020年2月ににいはる里山交流センターで開催した手前味噌プロジェクトを最後に、100人で集って手前味噌を仕込むのは社会的に難しい状況になりました。人が集まること、手と手を介して手仕事をともにすること自体がリスクを伴う現代社会において、私たちはこの活動を続けていくべきか、否か、何度も話し合いました。
2021年の春は「つなぐ年にしよう」と、1年後にまた100人で集まることを期待して、にいはる里山交流センターで集まることは諦め、寺家ふるさと村四季の家の農産加工室に主催者だけで集まりました。大豆をつぶして塩切り糀と味噌玉をつくり、みつはしさんの自宅に持ち帰って6人で大きな桶に味噌を仕込みました(その様子はテレビでも放映されました)。材料費は、前年の味噌づくり参加者への頒布とスタッフによる寄付で賄いました。1年後、今年こそは再会できるだろうか……その思いもむなしく、年明けに急拡大するオミクロン株に肩を落とし、再び関係者で話し合いました。
「もしかしたらこの先、100人が集まって味噌をつくる、ということ自体が戻らない社会になるかもしれない」
「それでも、この手前味噌づくりを続ける意義は?」
何度も話が行きつ戻りつ、右往左往しながらも、私たちの結論は「横浜の農的環境と手仕事の価値を、未来に伝えていきたい」に行きつきました。
今年も、横浜の手前味噌づくりの発祥の地の一つである「寺家ふるさと村四季の家」で、スタッフが、同じ大豆、同じ糀、同じ塩、そして横浜の水を使って、みつはしさんの大きな桶に味噌を仕込みます。そして、この味噌は、横浜の食・農の環境を未来に伝えていくメディアなのだ、と。21世紀の横浜型「大豆トラスト活動」として、おいしく軽やかに発信していきます。
今年も味噌を仕込み続けるために、材料費のご寄付を集めることにしました。再び100人で集える日が来るかはわかりませんが、手前味噌をつくり続けることで、遊休農地を活用する会の活動とつながっていくこと、横浜の農家さんの暮らしや里山の農的環境を保全する活動を発信していくこと、伝統的な手仕事・食仕事を未来に伝えていくことの糧にしていきます。
ご寄付は1口1000円で、お礼に500gの「100人のひとしずく〜手前味噌〜」をお送りします(送料着払い、または森ノオトで直接お引き取りを選べます)。また、寄付者には、長年の森ノオトサポーターで動画クリエイターの荒井優紀子さんによる「100人のひとしずく〜手前味噌プロジェクト〜」の限定公開動画のリンクをお送りします。手前味噌、ならびに限定動画の発送は、2022年3月末日の予定です(お引き取りの場合は4月中にお願いします)。
寄付キャンペーン(寄付:2022年3月1日〜3月27日)
https://syncable.biz/campaign/2413/
どうか、私たちの「100人のひとしずく〜手前味噌プロジェクト〜」が、未来につながるよう応援してください。
寄付で応援!
「100人のひとしずく〜手前味噌プロジェクト2022〜」
ご寄付の受付期間 2022年3月1日(火)〜3月27日(日)
1口1,000円からのご寄付をお願いします(最大80口)。
リンクはこちらから▼▼
https://syncable.biz/campaign/2413/
生活マガジン
「森ノオト」
月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる
森のなかま募集中!