老いても暮らしていける街に。 あざみ野で「認知症の人にやさしい街プロジェクト」進行中!
青葉区は2015年に男性長寿日本一に輝いています。しかし今や65歳以上の5人に1人は認知症と言われる時代で、地域でいかに高齢者を支えていけるかが一つの課題となります。
そんな中、立ち上がったのが「あざみ野:認知症の人にやさしい街プロジェクト」。
実行委員長の根岸里香さん、あざみ野商店会会長・プロジェクト副委員長黒沼勤さん、横浜市議会議員・プロジェクト副委員長藤崎浩太郎さんに活動のきっかけや思いを伺いました。

毎月第4木曜日、東急田園都市線・あざみ野駅そばの東急ストア前にオレンジ色のビブスを着た老若男女が集まってゴミ拾いを行っています。

この活動は認知症にやさしい街プロジェクトの一つの「多世代交流ゴミ拾いウォーキング」です。このプロジェクトは「地域の課題を考え理解し協力していく」を理念としており、“認知症”になっても外出ができたり、社会貢献ができることを実証していく場になっています。

 

ゴミ拾いの参加人数は毎回30人程度。中心は40代から70代ですが、時には「日体大S M G横浜」(日本体育大学女子サッカー部)のメンバーや小学生の参加もあります。参加者の中に認知症の方もいらっしゃいますが、活動時に「この方は認知症です」と参加者に伝えることはしません。認知症の方にとっても、学生や一般の方とお互いの普段の生活の話をしながら歩く1時間はとても楽しい時間になっているそうです。

 

*オレンジ色は明るさや苦痛を和らげるという意味が含まれ、人の支え合いを表現した色であることから、日本では認知症のシンボルカラーとして使用されています。オレンジ色は認知症サポーターの目印なのです。

参加者の中には認知症のお母さんとその娘さんがいます。お母さんは電車に乗ってやってきて、現地で娘さんと待ち合わせしての参加です。最近は誰かにお世話されることが多くなり、ゴミ拾いで人の役に立てることがうれしいそうです(写真提供:藤崎浩太郎さん)

実行委員長の根岸里香さんは2000年の結婚を機にあざみ野に移り住んで来ました。静岡在住時代は子どもを対象とした 肢体不自由と知的障害の重症障害者等包括支援・自閉症療養指導員を行っていたとのこと。そんな中ご自身のおじいさんが認知症になったのがきっかけでお年寄りのことも学びたいと思い、療養型老人保健施設の医療ソーシャルワーカーとして転職。転職先に在宅介護支援センターが併設されていたことから、根岸さんは必然的に地域の高齢者の輪の中に入って行きました。

今回お話を伺った実行委員メンバー(右から藤崎浩太郎さん、根岸里香さん、黒沼勤さん)

あざみ野に暮らすようになった根岸さんは夫の家業である不動産業を手伝いながら、青葉区主催の区民企画運営講座に参加するなど、自分のやりたいことを探していました。そんな中、高齢者に限らず地域で長く住み続けるためには近隣住民同の見守りも必要ということに思い当たったそうです。まずは自分自身が地域の多くの人とつながり、困っていることが解決できるようにする事ができたらよいのに、と思い始めました。

ある時、参加した区民企画運営講座で知り合ったスパイスアップ編集代表の柏木由美子さんに「街の相談所」というグループがあると聞いて参加してみたそうです。

「街の相談所」はまちのことを、まちのなかで解決するネットワークづくりを目指しているグループです。根岸さんは「一人ではできないことも、いろんなネットワークがあればできる!」と思い、毎月の定例会に参加するようになりました。

𡸴山開発株式会社店舗前。根岸さんは不動産と福祉が密接に関わっていることに気づき、事務所の横に街の相談所の“のぼり”を出しました(写真提供:根岸里香さん)

街の相談所という“のぼり”は出したものの、しばらくは不動産屋としての日常業務が続きました。

そんな時“街の相談所の関係者が大家さん”というつながりで相談者の住むところを確保できたことがあり、地域に住んでいる方々とつながっていることの強みを感じ始めました。

その直後、地域情報のフリーペーパー「スパイスアップ」の記事で、藤が丘・もえぎ野地域の「見守り支え合うまち」の文字を見て「あざみ野でこれができる」と直感で思ったそうです。

スパイスアップの記事

早速、街の相談所のメンバーであるあざみ野商店会理事の藤崎浩太郎さんに相談、コロナ禍でできることはなんだろうと考え、大場、すすき野、たまプラーザの3つの地域ケアプラザにお声かけし、2020年9月に山内地区センターで商店会の有志と意見交換の場を設けました。高齢福祉に関わることを商店会で何かできないか?というケアプラザさんの問いかけに、みんなの口から出てきたのが認知症の問題でした。

街の相談所のメンバーと3カ所のケアプラザの9人から始まった会議が、3回目になると口コミや声かけで自治会や桐蔭学園の方々も加わっていきました。誰でも参加できる実行委員会という形を取ることにし、2021年2月に「あざみ野:認知症の人にやさしい街プロジェクト」が確立されました。

実行委員会の様子 (写真提供:藤崎浩太郎さん)

認知症というと、どう対応して良いかわからない、と思う方は多いのではないかと思います。自身が経営する蕎麦屋「そばくろ」にて定期的に認知症の啓蒙活動をしていたプロジェクト副委員長の黒沼さん。実際に認知症の方々と交流し、認知症となった方が、今までできていた事が、できなくなっているのを見て、自分が認知症の方への理解がなかったらどう対応していいか分からないし、店の常連さんが急にこうなったらびっくりするだろうなと思ったそうです。この経験から、個人としても商店会としても認知症を理解してもらいたいと思い、現在は毎月1回水曜日、店舗を貸し切って25人くらいの認知症の方やご家族、介護従事者などと交流できる「あざみ野オレンジバル」を開催しています。

 

商店会としては、加盟店の半数を目標に、「認知症養成講座」を受けて認知症を知ってもらうことで、認知症の方が外出しやすい環境をつくることを掲げています。黒沼さんが商店会の方々に養成講座を受けてもらいたいのは、認知症特有の症状がわかれば対処が可能であること。お店側が認知症について知っていることで、相手の気持ちを傷つけることなくそれに合わせた対応ができたらよいと思っているからです。

「認知症になったとしても、社会貢献や社会参加の機会をなくすことはしたくない。普段通り外出し、買い物ができる街になればよい」と黒沼さんはおっしゃいます。

 

認知症とは、さまざまな原因で記憶や思考などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすことを言います。私も介護福祉士として老人ホームで働いていました。認知症の症状で多いのは、自分がどこにいて何をしてるのかわからなくなったり、今していたことを忘れてしまったりするので何度も同じ話を繰り返します。何を話したかがわからないので話の辻褄が合わなくなります。外出するとどこに行こうとしたかがわからなくなったり、帰る家までの道順もわからなくなってしまうことも多々あるのです。私も、当事者が落ち込むことなく、家族が認知症ということで恥ずかしい思いをすることもないということは地域で暮らすことでは大切なことだと思います。

2021年12月にはアディダスフットサルパークあざみ野で、ウォーキングフットボールを開催。参加者約80名。未就学児から60代の方々の参加でにぎわいました(写真提供:藤崎浩太郎さん)

地域住民の子どもから高齢者まで、誰でも参加できるようにと企画した2021年7月のキャンドルホルダーワークショップでは、併せて認知症養成講座も行いました。キャンドル作成に使った牛乳パックには認知症について思うことなどのメッセージを書いていただいたそう。認知症にやさしい街プロジェクトは立ち上げから20回の実行委員会を行い、延べ400人が参加。啓蒙活動の牛乳パックで作ったキャンドルは1,000個以上作っているとのこと。当初から行っているゴミ拾いは、毎月第4木曜の11時〜12時の時間帯で開催。オレンジ色のビブスが目立つこともあり、お声かけが多くなってきて差し入れを頂いたり、「作業後に使って」とウェットティッシュをいただくこともあったそうです。

ゴミ拾いを行っているところ(写真提供:藤崎浩太郎さん)

 

2021年6月には、桐蔭横浜大学の学生さんとの企画で、認知症アンケート調査を実施。商店会向けと個人へのアンケートの2つを行いました。アンケートの結果はあざみ野 認知症の人にやさしい街プロジェクトの公式HPに公表しているのでぜひ読んでほしいです(写真提供:藤崎浩太郎さん)

根岸さんは、思ったより規模が大きくなって驚いている反面、みんなが求めていたものが目の前に現れたということや、個人ではできないことがみんなと思いを共有することで実現できた、という実感が湧いてきたそうです。

それぞれできることを、というのが実行委員の中の暗黙の了解です。実行委員会は毎月第2火曜日の10時から、ご自分のタイミングで参加できますが、それでも毎回20〜30人のメンバーが会議に参加しているそう。

活動の内容もやりたい事もどんどん膨らんでいます。

 

実際には、こういった活動は認知症のご家族やご本人である当事者から見ると、活動に参加したからといっても具体的に何か助けてもらえるわけではありません。ただ、活動中参加者からの雑談の中には困っていることのヒントがあります。「その中でこれはケアプラザに相談しに行けばいいんじゃない?」とか、相談先を一緒に考えたり、ちょっとしたアドバイスができることは多いものです、と根岸さん。

「当事者の家族の意見も聞いて、商店会や子ども向け、地域住民向けと対象を考えながら今後の活動を進めていきたい。そして、認知症ということに限らず地域全体を巻き込むような企画をやっていきたい」と今回取材をさせていただいた御三方はおっしゃいました。

アルツハイマー月間に行われたグループワークのイベント体験の感想。梨の形のカードにどんな街になっていったらいいのか、やさしい街への思いが書かれています(写真提供:藤崎浩太郎さん)

“誰もが安心して暮らしていける街”とは?”

誰もが歳をとります。誰もが老いていきます。私の経験からも認知症を理解していたら、対応できることがあると思っています。

義両親が認知症の友人との会話で「私のこと、知らない人が家に来たって言われちゃうんだよ」という話をしたことがありました。こういった会話は今や「子どもがね〜」というのと同じくらい普通のこととなりつつあるのだと感じます。

私の叔父は認知症で、ある年の12月行方不明になり3カ月後に山の中で見つかりました。認知症の方の行動をわかっている人がいたら、行方不明になる前に声をかけてくれたかもしれないと思います。

数年続くコロナ禍の影響で、なんとなく人との関係が疎遠になっていってしまったような気がする昨今、認知症の方に限らず、困ってる人を見かけたら声を掛ける勇気を持ちたいと思います。

 

2024年以降、65歳以上の5人に1人は認知症と言われている日本。

安心で安全な街というのは「犯罪がない」、ということが主だったと思います。が、高齢化が進む今後の社会では街ぐるみでのこのような取り組みは、安心・安全な街づくりの中核になるべきだと思います。いち早く、認知症をテーマにして、地域で安心して暮らせるようにと始まったこのプロジェクト。

老いても暮らしていける。住みやすい街を商店街や地域住民を巻き込んでつくっていくことは今後大切なのではないでしょうか?

Information

「あざみ野 認知症の人にやさしい街プロジェクト」

 

公式HP:

https://sites.google.com/view/8341azamino/?fbclid=IwAR3ON8_wLy60cVHPvuBDblyrpemOC216_lYA35uLETbz90NXAmVeV655kIg

 

Instagram:

https://www.instagram.com/8341azamino/?hl=ja

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この記事を書いた人
塚原敬子ライター
2000年に青葉区に引っ越してから早20年、長男は藤が丘で産まれました。 その頃、これからは介護だ!と介護福祉士やアロマ、ヨガの資格を取りました。「健康は自分で作るもの」がモットー。月や星、石や植物が大好きで山や海での拾い物多し。
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