嘘のない不動産業を営む。アーキプロジェクト ・田尻竜也さん(横浜市瀬谷区)
住まいづくりは大きなライフイベントです。信頼できる伴走者がいたら、思い描く住まいに向けて大きな力になってくれることでしょう。コロナ禍の最中、住み替えを実行した私が頼りにしていた不動産屋さんが、アーキプロジェクトの田尻竜也さんです。魔物が潜んでいそうな不動産の業界にあって、あくまでもまっすぐに誠実にある田尻さんを取材しました。

結婚や子どもの誕生、家族のライフステージの変化……。人生で、住まいを変えるタイミングはそれぞれにあります。わが家の場合は、子どもの小学校入学を前に住み替えを検討し始めました。いくつか気になる物件を見せてもらいながら、不動産屋さんに土地探しを手伝ってもらうように。ところが、思うような物件にめぐり合えないまま月日が流れていきます。このままで住み替えできるのかしらと不安になったころ、友人から紹介してもらったのが、アーキプロジェクトの田尻さんでした。

 

アーキプロジェクトは大手の不動産屋さんとは立ち位置が異なり、おもに、設計事務所や建築会社さんとの家づくりをしたい人に、土地や物件探しをサポートする仕事をしています。建売物件やリフォームのない新築マンションのような物件と比べると、住まいづくりの工程が長く複数の専門家がかかわり、資金計画も複雑になりがちです。こうした住まいづくりの土地サポートの知識と経験が豊富なことが、アーキプロジェクトの特徴です。

 

初めてお会いしたときに、「どうして住み替えをしたいんですか?」と田尻さんに尋ねられました。

物件ありきではなくじっくりと話を聞いてくれるあり方が、これまで足を運んだ不動産屋さんとはどうやらスタイルが違う。そして資金計画の話に……。物件を探す前に、住まいづくり全体にかかる費用を試算してもらいました。なんとなく価格帯のイメージをもっていたのですが、具体的に積み上がっていく金額を目にして、予想していたよりもずいぶん費用がかさむこと!

なんとなく、では危なかったとひやっとしたのを覚えています。振り返ると、これが私たちの住まいづくりのスタートでした。

わが家の家づくりの途中。2021年当時、子どもたちも小さかったです

お客さんの話を聞きながら、田尻さんは物件を勧めずに「今の家に住んでたほうがいいんじゃないんですか?」と言ったりもするのだそう。不動産屋さんぽくなくて、それって儲からないですよね?と私は少し笑ってしまいました。

「商売にならないけど、腑に落ちないんですよね。お家づくりをどう考えられているのか。なぜ?というのは必ずお聞きしています。今の住まいを売らなくていいと思ったらそう伝えて、その上で、本当の思いが出てくるはずなんですよね。本当に住み替えをされたいのであれば、進められたらいいと思うんです」

 

不動産屋さんといえば、物件チラシがずらりと並ぶ店先が思い浮かびますが、アーキプロジェクトには、販売物件の掲示は一つもありません。どんな不動産屋さんなのでしょう。あらためて田尻さんに聞いてみると、完成した建売物件やマンションを売ることをほとんどせず、注文住宅やリノベーションなど、設計事務所や建築会社がかかわる住まいづくりをしたいお客さんとのやりとりがほとんどなのだそうです。会社の規模の大小にかかわらず、物件は不動産情報ネットワークを通じてアクセスできるので、大手でないことに心配はいりません。

アーキプロジェクトは2020年に青葉台から今の瀬谷区の事務所に移転しました。相鉄線・三ツ境駅から歩いて5分の場所。事務所の場所にかかわららず、横浜市内はもちろん神奈川県全域までエリアを広くカバーしています。長くたまプラーザで仕事をされていたので、青葉区周辺のこともお詳しい!!

なぜ今のようなスタイルになったのでしょう。

 

住宅展示場の運営会社での広告業や、建築プロデュース業の会社で20代を過ごした田尻さんは、30代前半で建売物件をおもに扱う不動産会社に転職します。そこでの経験が、今のあり方につながっています。

 

異業種から転職した田尻さんにとって、仕事のあり方に違和感がぬぐえなかったと言います。「まったくお客さんの方を向いていない。稼げればなんでもいいという感覚の人が周りにいて、変な業界だなと思いながらも染まって生きていたんです」。売らないほうがいいと思うような物件でも、売らざるをえない環境に「それって正しくないよなと。どこかでおかしい、という思いが常にあって」と振り返ります。「仕事をしたぶん報酬を得られるのは、望んだ環境ではあったけれど、人を不幸にしてまでそれをやっていくのはどうなのか」と自問し続けていたそうです。

 

2013年、その前年に知人が立ち上げていたアーキプロジェクトに籍を移します。

売ったら終わりという関係性にはしたくない。自分が納得感があるまでお客さんとやりとりしよう、という指針が胸にあったと言います。

飾らないお人柄は、初めてお会いした時から印象が変わりません

私が不動産屋さんを何軒か回っていて感じたことは、デメリットがほとんど語られないということ。逆に田尻さんは、ネガティブな要素を含めて得られる限りの情報を提示してくれました。たとえば災害時のリスク、解体・造成にかかる費用、法的な要件など、素人ではなかなか気付かない点をきめ細かくフォローしてくれました。

 

そして、特定の物件を推す、ということがありません。賃貸物件も含めて、住まいを決めるときに決断を促された経験はありませんか?田尻さんとのやりとりでは、最初から最後まで、私たちがどうしたいかということが軸にあり、冷静な判断ができました。

 

「特別ヒアリング能力が優れているわけではないですし、営業的センスは自信がないくらいで……。唯一言えるのは、嘘をつかないということ」と田尻さんは言葉を続けます。

 

「お客さんにとってどっちがいい?というのは全て本音で言っています。勤めていたら絶対に言えないです。会社の立ち上げのころは経営が火の車でしたけど、数字のために売っちゃだめなものを売ったことはないです」ときっぱりと言い切ります。

 

恥ずかしい話なんですけど……と話してくれたことがあります。「前の会社では100件以上の物件を売っていながら、いまだにお付き合いのある人は数えるほどしかいないんです。それが、会社をやめて自分の道を模索しようと思った理由でもあります」。

 

その言葉に、今の田尻さんからは想像がつかないなと驚きました。土地の引き渡し後も、たびたび家を見にきていただいたり、完成後1年たって撮影に来てくださったり。ふらりとお野菜を持って尋ねていただいたり。そして今回のインタビューへと、つながりが続いてます。

 

「おかげさまで、独立後は変な関係で終わった方は一人もいません。お客様には、いろんな業種やライフスタイルの方がいらっしゃる中で、いつ頼らせていただくかわかりません。売って終わり、それきりっていうのはもったいないと思ってます。そういうつながりを積み上げていくと宝物になりますから」。

 

そんな田尻さんの人とのつながりが、アーキプロジェクトのホームページの記事を読んでいると豊かだなあと感じるのです。お客さんとのお付き合いが始まる経緯や、決定までのプロセス、どんな方がどんなふうに住まいづくりをしていったのか、丁寧に描かれています。

アーキプロジェクトのホームページで、田尻さんがかかわった住まいづくりの実例が紹介されています

不動産業の宅地建物取引士のほかに、2級ファイナンシャル・プランニング(FP)技能士の資格を持ち、私たちの資金計画も丁寧にシミュレーションしてくれました。今年、 行政書士の資格も新たに取られたそうです。「お客さんとのかかわりを、その場限りにしたくないので。ライフプラン、ローンとか、そういったところもできるだけ、ケアできたほうがいいなと思っています。自分でFPや行政書士を取ったのも、相続など不動産以外の部分もサポートできるかなと思って。違う業につながっていく可能性もあるので、なにかしらお役に立てたらうれしいです」と田尻さん。

 

数々の住まいづくりを見届けてきた田尻さんに、いい住まいづくりってどういうことでしょうね?と漠然とした質問を投げかけてみました。

 

「納得感かなと思うんですよね」と、言葉を選びながら話してくれました。「100パーセント希望に合った物件はなかなかないと思うんです。そんな中での、ご自身たちの納得感をどう持てるかどうかですかね」。

その場限りにしない人間関係を大事にする専門家がいること。インターネットで自分でいろんな情報を得られる時代にあっても、そんな存在は人生の大きな選択での納得感を底上げしてくれるのでは、とお話を聞きながら感じました。

 

家づくりをしていたころ、友人に勧められて読んだ『正直不動産』(小学館)という漫画があります。業界を生々しく描いた漫画で、主人公は嘘の付けない正直者の営業マン。周りは巧みな営業術でお客さんをだますこともありますが、主人公は正直さを武器に関係性をつくっていきます。それがまわりまわって、お互いに幸せを感じる仕事につながっていくのです。そんな姿が、田尻さんと不思議と重なりました。正直さがつないでいく縁が、地域に一つでも増えていくと豊かだなと思います。

Information

株式会社アーキプロジェクト

住所:横浜市瀬谷区三ツ境102-14 エクセルアイキ101号

TEL:TEL 045-752-8103

メール:info@archproject.co.jp

URL:https://www.archproject.co.jp/

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この記事を書いた人
梶田亜由美編集長/ライター
2016年から森ノオト事務局に加わり、AppliQuéの立ち上げに携わる。産休、育休を経て復帰し、森ノオトやAppliQuéの広報、編集業務を担当。富山出身の元新聞記者。素朴な自然と本のある場所が好き。一男一女の母。
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