
地域訓練会とまとのおうちは都筑区を拠点に、横浜市社会福祉協議会障害者支援センターを通じて運営費の助成を受けながら活動しています。地域訓練会は、発達に不安のある子どもたちの権利を守るために活動する「横浜障害児を守る連絡協議会」に所属していて、他の区の地域訓練会や県や市の教育委員会とつながっているので、さまざまな情報を得ることができます。地域訓練会としては、遠足や親睦会、勉強会などの活動を行い、交流を深めています。
とまとのおうちでは月曜日にリトミック、木曜日に体操、金曜日は水泳、土曜日に音楽療法を行っています。
対象は、市内在住で発達が心配な子どもとその家族です。入会には、愛の手帳の有無は問われません。保護者の方は入会と同時に、とまとのおうち親の会のメンバーとなります。

とまとのおうちのパンフレット。都筑区役所、北部地域センター4階待合室、区内地区センターに置いてあります
私には障害がある小学生の子どもが二人います。昨年まで、とまとのおうちに所属していました。入会したのは2021年。2020年に都筑区から緑区に引っ越してきて、息子はこのとき小学2年生で元気いっぱい。敏感でテンションが上がりやすく、お友達に手をあげることもありました。周囲から理解を得られない場面が多く、私自身も責任を感じどうしようもない不安を抱えていました。今の姿がずっと続くのかな?誰にも息子を受け入れてもらえないのかな?なにかスポーツを始めたら落ち着くかな?そんな思いの中、とまとのおうちに入ったのでした。あのときの私と同じように、子どもの発達に不安を抱えている保護者の方に知ってほしい居場所です。

左からとまとのおうち副代表・彦坂弓絵さん、親の会在籍・川谷久子さん、とまとのおうち代表・森竹菜々子さん、親の会会長・篠森英里さん
この日横浜市営地下鉄・都筑ふれあいの丘駅近くにある、障害者研修保養センター横浜あゆみ荘の一室を覗くと、慌ただしく活動している保護者の皆さんがいました。取材当日は、月に一度の定例会。定例会では、あゆみ荘や、センター南の都筑区福祉保健活動拠点かけはし都筑にて今後の活動の相談や勉強会を行っています。
取材では、お子さんが大きくなり、現在は親の会の活動のみに参加している川谷さんを中心にお話を伺いました。

会の運営メンバーや、会員の皆さんと話し合い、試行錯誤しながら活動をつくりあげてきたと話す川谷さん(写真中央)
川谷さんは息子さんが3歳のときに都筑区に引っ越してきて、未就学児のための居場所であるバナナのおうちに入会しました。まだこの頃、都筑区内には発達に不安のある方が安心して過ごせる場所は今ほど多くはありませんでした。そのため学校や生活の中で困難に陥ったときに、少しでもプラスになるようにと「ピンチはチャンス」と自分を奮い立たせていたと言います。
とまとのおうち親の会は親同士のレクリエーションが行われたり、勉強会、障害のある成人の方が通う作業所の見学など、他ではできないことが学べます。たとえば私が参加したときには「性教育」を講師から学びました。年頃に近づいた時、親としてどう教えるのか、デリケートなことを参考になる書籍とともに教えてもらいました。
また、いつかは働くかもしれない作業所も、個人ではなかなか見学にいくことはできません。まだ先だと思っている未来のことも学ぶことができます。発達に不安のある子どもの未来は親も一緒に決めていくことが多いです。そのときに親が知っているか知らないかで、その子の未来の選択肢が変わってきます。親の会は、成長と共に必要な子どものための学びと、少し先をゆく先輩との交流が深められる場所だと思います。

とまとのおうち主催のお祭りイベントで、手作りのさかなつりに夢中な娘。他にも手作りのおもちゃがいっぱい。これもとまとのおうち有志で手作りして仕上げました
現在は、働きに出る親御さんが増えたこともあり、児童発達支援や放課後等デイサービスといった、発達に不安のある子どもたちを支援する通所サービスを利用する親子が増えてきたそうです。
「同じ立場の先輩から、『もう親がそんなに頑張らなくてもいい時代が来たのではないか。訓練会は役割を果たしたのではないか?』と言葉をかけられ、喜ばしく受け止めたこともありました。しかし、親同士がつながれて情報交換ができ、親子で成長を見守れる、とまとのおうちのような場所もまだ必要だと思っています」と、とまとのおうち代表の森竹さんは話します。
参加できる親御さんが減り、自主運営は時に大変なこともあると、親の会・会長の篠森さんは話します。一方で、とまとのおうち親の会での情報交換のおかげで、今、篠森さんのお子さんは、自分に合った学校に楽しく通うことができているそうです。「うちの子は学校では普通に過ごしているように見えても、じつは無理をしていたんだと、とまとのおうちの時間で気づけました。子どもも自分と似た子がいるから安心でき、友達と自分らしく遊べていたようです」。
「預けるだけじゃなく親が参加することで、他の子どもの様子も見られる。本人も親も成長する」とみなさん口を揃えて言います。それは、親同士も褒め合えて時には愚痴を言い合い、称え合うことができるからだそうです。
とまとのおうち副代表の彦坂さんは、活動中先生が自分の子どものことを褒めてくれて「自分では気づかない発見があった」と言います。私もとまとのおうちで水泳に子どもと参加しているときに、子どもが興奮して大きな声を出すのを注意しそうになったら「それでいいのよ」と言われて救われたことがありました。

とまとのおうちの体操の様子。ここは横浜市北部地域療育センターのお部屋。場所を広く使い安心して身体を動かし走ることができます(写真提供:とまとのおうち)
コロナ前には、「ボラさんとあそぼう」という、大学生や社会人の方にボランティアを募り、子どもたちが社会に出るために親以外との関わりが持てるような活動もあったそうです。
また、都筑区に依頼され、避難場所である地区センターに災害が起こったとき、発達に不安のある方には何が必要でどんな配慮が求められるか、訓練会に相談がくることもあったそうです。現在では、幼児検診のボランティアをとまとのおうちの会員がお手伝いもしています。長年、声をあげてきたからこそ行政との信頼もできてきたのだと私は感じました。
そのほかにも専門家を呼んだ勉強会の企画、外部団体との会議への出席、運営費の管理とさまざまな役割を保護者の皆さんが担います。近年は人数も少なく、役割をかけ持ちしながら運営をしているそうです。
そして現在、取材させていただいた川谷さんは、子育て支援センターで働かれています。篠森さんは親と子のつどいの広場に関わり、彦坂さんは小学校で支援員をされ、森竹さんはバナナのおうちの保育ボランティアをされています。自分達も、引き続きサポートを受けながら、他の子どもや親御さんたちをお手伝いする役割を担っています。お話の中で川谷さんは「恩返し」という言葉を使っていて、それが私には印象に残りました。

地域の団体が主催した大根掘りイベントの様子。このように他の団体との連携も進んでいます(写真提供:とまとのおうち)
今回取材してみて、改めて私たちがとまとのおうちで過ごした活動を振り返りました。水泳の時間にはじめは補助具とビート板で怖がりながら泳いでいた息子。さいごは、ほんの少し顔をつけられ、補助具なしで泳げるようになりました。浅いところでプカプカ浮いてばかりいた娘も、さいごはビート板を使って泳ぐことができました。そうなるまでに2年ぐらいかかったけど、成長する姿をプールの中でサポートして、見守ることが一緒にできたのはよかったと思います。ゆっくりだからこそできたときの喜び、その一瞬に立ち会えたのは忘れられない思い出です。
今年退会したのは、ずっと子どものためにやってきて少し息切れした自分を感じたからですが、活動する中で、とまとのおうちのメンバーの方に「なんとかなるわよ」と言われた言葉は私にとって忘れられない言葉です。今も私の支えになっています。そんな言葉を、顔を合わせながら話せる仲間がいるのはとても安心できました。この会に入って川谷さんをはじめとした、発達に不安のある子どもの親御さんたちと出会い、私は何度となく励まされてきました。歴代の親たちが励まし合い、涙をにじませながら、活動してくれていたおかげです。私自身もいつか子どもたちとの経験が、「あなたも大丈夫よ」と言えるように誰かを支える活動をしたいと思います。

横浜市地域訓練会 とまとのおうち
対象:発達の不安のある親子(現在は幼児から成人が在籍)
*親の会のみの参加もできます。
活動:月曜日 リトミック、木曜日 体操、金曜日 水泳
土曜日隔週 音楽療法
メール: tsuzuki.tomato.oyakonokai@gmail.com
Facebook:http://www.facebook.com/tomatonoouchi
Instagram:https://www.instagram.com/tomato.oyanokai/
都筑区地域訓練会 バナナのおうち
対象:発達の不安のある未就園児~未就学児の親子
活動:毎週火曜日保育クラス 9:20~13:30頃
隔週土曜日音楽療法クラス(1グループ20分程度)
HP:https://877ouchi.web.fc2.com/
Instagram:https://www.instagram.com/hoiku_madoka

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