本書の作者は、川崎市に住むシナリオライターで、映像作家でもある宮沢あけみさん。あざみ野ガイアシンフォニー実行委員長の顔も持つ、実に魅力的な笑顔の持ち主です。宮沢さんが41歳で出産した娘・そらちゃんは、予定日よりも3カ月も早く、わずか620gで生まれてきました。
来る日も来る日もおっぱいを持って病院に通い、NICUにいる我が子と手をつなぎ、見つめ合う。カンガルーケア(母が胸元を開き、素肌に赤ちゃんを乗せてぴったり抱き合うこと。低出生体重児の哺乳能力の向上や、生存率の改善に寄与すると言われている)を行ううちに、小さなそらちゃんが笑顔を見せるようになり、徐々に体重も増え……。「ああ、何てかわいいの!」というそらちゃんへのあふれんばかりの愛情と、一人の女性が突然母となり、戸惑いながらも親子の物語をつむぎ出していく様が、まるでドラマを見ているかのように、生き生きとした筆致で描かれています。
一方で、同じNICUにいた赤ちゃんとの別れ、笑顔で退院できなかったお母さんたちとのエピソードも。超低出生体重児(1000g以下で生まれた赤ちゃん)を巡るドラマは、時に過酷で、厳しいものです。そんな中で、常に前向きに未来を切り拓く筆者の生き方は、同じ境遇にいる母たちへの強力な応援歌とも言えます(そしてそらちゃんは今、元気に幼稚園に通っています!)。
受精そのものがものすごい生存競争であり、そこから出産までの道のりは、まさに奇跡の連続です。そして、この世に生を受けたその瞬間から、母の手を借りながら、同時に自分の力で生き抜いていかねばならない子どもたち。
そう考えると、子どもは、存在そのものが、ミラクルなのかもしれません。今、我が子が目の前で笑っていてくれること。そのささやかな幸せの「有り難み」、そして誰もが持ちうる絶対的母性が、胸に響いてくる一冊です。
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