農に学ぶ。シンポジウム「土と健康」その4 パネルディスカッション

2月7日(日)、あざみ野アートフォーラムで開催された「NPO法人農に学ぶ環境教育ネットワーク」のシンポジウム。「土と健康」をテーマに、地元で教育に携わるパネラーによるパネルディスカッションが行われました。

パネラーは、寺家ふるさと村に近い鴨志田中学校校長の高橋功さん、同じく寺家町でのむぎオープンコミュニティースクール、のむぎ幼児部・保育部を主催する樋口優子さん、五感教育プログラムの普及を行う五感教育研究所の高橋良寿さん、青葉台の自然素材工務店ウィズハウスプランニングの玉置哲也さん、そしてゲストパネラーに医学博士の真弓定夫先生、主催者を代表して農に学ぶ。代表の木村広夫さん。司会進行は森ノオト編集長の北原まどかが務めました。

まず、それぞれのパネラーが自己紹介と活動報告を行いました。鴨志田中学校では農に学ぶ。の指導のもと、中学2年生が一年を通して稲作体験を行っています。「クロ切り(田んぼの畦に土を塗り付けて水漏れをふせぐこと)、代掻き、種まき、田植え、草取りから収穫まで、あらゆる行程を実行委員が責任を持ってやり通します」と高橋校長。木村さんとの信頼関係も厚いようです。

続いて、のむぎの樋口優子先生は、「地域の新しい教育力」をテーマに、障害児も不登校児も受け入れた教育活動を行っています。「子育ては親だけでするものではない。のむぎでは太陽のもと、全面発達を保障しています。自然の中で、農を通じて人間らしく生き、平和な社会をつくること。子どもたちによる田植えや稲刈りの風景は、地域社会のあり方そのものを表しているのではないでしょうか」と話しました。

五感教育研究所の高橋良寿さんは、学校の教員や野外活動の指導者に対して生命科学に基づいた五感教育プログラムの研修を行っています。「子どもの発育ステージの中で、自然の中で様々な体験をしていくことによって、生きることの大切さを教えている」と話しました。

ウィズハウスプランニングの玉置哲也さんは、「家は人と同じくらい長く住まうものです。自然素材は土から生まれて土に還ります。国産材や自然素材を身近に感じてもらうためのギャラリーを青葉台で開いている」と企業活動を紹介しました。

次に、パネルディスカッションのテーマに沿って、「子どもたちが土にふれることの大切さ」について、樋口さん、高橋良寿さんに語っていただきました。

「土や泥にさわり、浸かるのは、発達の道筋の一つです。お風呂のようにいい気持ちだと感じられれば、お母さんの胎内にいるのと同じ安心感を得られます。まずは水、それから泥、土にふれ、ものをつくり出していく。集団の中でこそ子どもは育つ。それに、土と泥はとても役立ちます」と樋口さん。

高橋良寿さんは「今はほとんどがプロセスカットされた人工的な遊びに取って代わられています。自然の中ではそうはいかない。多様性と複雑系の中で育つと、自分で工夫するようになり、五感が発達する」と話しました。

これらの話を受け、真弓先生はインディアンの知恵についてご紹介くださいました。「インディアンのある部族は、ものごとを決める時に、7代先の子孫のことまで考えるといいます。裏を返せば、我々が今生きているのは、7代前の先祖のおかげと言えます。大いなる知恵の引き継ぎなのです」。

ウィズの玉置さんは「自然素材の家は100年先まで残り、3代以上続きます。自然素材の家は、日に焼けて艶が出るといった経年変化がある。その中に美しさがある」と、長く住み継げる自然素材の良さを強調。高橋功さんは「生徒たちに“自分を教育するのは自分だよ”と伝えています。自分で味わう力をつけよう、と。食を味わおうとする気持ち。人を理解し、味わうこと。そして幸せを味わう力は同じことです。それが人生の幸せや生き甲斐づくりになる。木村さんは農を通じてそれを教えてくれる」と話しました。

最後に真弓先生は、マニュアルに従った子育てではなく、大人が“子育ち”することが大切、と提案しました。「子どもの能力は大人よりも、医者よりも高い。●●しなさい、●●してはいけない、は禁句。大人は子どもを信頼し、行動で示していただきたい」と結びました。

最後に木村さんが、会場にいる皆さんに大豆の種を渡す意味を説明しました。

「いのちある食べ物をつくるのは、人間ではなく土である、ということを感じてほしい。封筒に入れてある大豆の種を、土に蒔いて、枝豆にして食べないで冬まで育てて種をとって、1粒の大豆から何粒の種、つまり次のいのちができるのかを体験してほしい」と呼びかけました。

小さな種を蒔くことから、人間を育む糧が生まれます。いのちの根本をそこから学び、気づきの種を蒔いてゆくーー。

農に学ぶ。の活動のエッセンスを大豆の種に託し、シンポジウムは幕を閉じました。来場者から多数の熱いメッセージをいただき、スタッフ一同、大感激するとともに、NPOの役割を強く自覚することになりました。

今年度の農に学ぶ。の活動が、いよいよスタートします。シンポジウムで蒔いた種が芽を出す、春。寺家ふるさと村の土にふれ、ともに汗を流しませんか。

 

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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