実は耐震スペシャリスト! 大丸建設に聞く地震に強い家
森ノオトと大丸建設がコラボで送る「土曜日の日曜大工講座」。毎回満席になるほどの大人気講座です。9月1日は防災の日。耐震診断の登録業者で、木造住宅の耐震のスペシャリストでもある安田佳正さんに、住まいと命を地震から守る知恵についてうかがいました!

明治初期の天才宮大工に始まり、5代にわたり「匠の技」を受け継いできた、東京都稲城市の大丸建設。6代目を引き継ぐ予定の安田佳正専務は、一級建築士で、かつ東京都の応急危険度判定員の資格や、木造耐震診断資格者など、木造住宅の耐震のスペシャリストです。稲城市の耐震診断の登録事業者として、助成制度が始まった平成17年から数多くの耐震診断と耐震改修を手がけてきた大丸建設。国土交通省の耐震診断講習会の講師を務めるほど深い知識を持つ安田専務は、これから数十年以内に大震災に見舞われる可能性の高い首都圏で、地震に備えるためのポイントについて、こう語ります。
 
「住宅は基本的に、上から下に加わる“縦の力”(重力)に耐えうるようにできています。ところが、災害は地震や台風、強風など、四六時中かかる重力とは異なり、突発的に“横の力”が加わることで、バランスが崩れます。地震などの横の力に耐えるためには、横からの力を受ける壁の量を増やし、かつバランスよく配置することが必要です」と、安田専務。
 
昭和56年の建築基準法改正では、「壁の量」に関する規定ができたのですが、安田専務がこれまで耐震診断をおこなってきたなかで、「残念ながら昭和56年以前に建てられた家で、壁の量が足りている家はほとんどない」とのこと。つまり、大地震が起こった時に、建物が地震に耐えうるだけの性能に満たない、ということなのです。

木造建築に関する知識が豊富で、耐震のスペシャリストでもある安田専務。住宅のことについて聞けばなんでもわかりやすく答えてくれる

それでは、耐震診断で性能が十分でないと判断された家は、どのようにすればいいのでしょうか?
 
「住まいの基本性能である“安心・安全”が担保されていない家が地震に備えるためには、耐震リフォームが必須です」(安田専務)
具体的には、足りていない壁(耐力壁)をつくる、壁をつくれないのであれば筋交いといって、柱と柱の間に斜めに角材を渡して補強する工事をおこなうことで、必要な壁量を確保します。
 
それから、耐震リフォームの意外なポイントとしては、「屋根を軽くする」ことなのだそう。
 
「木造住宅が地震に耐えるには、壁や柱梁でガチガリに構造を強くするというのも一つの方法ですが、“縦の力”と“横の力”のバランスをよくするというのも大切なポイントです。昭和56年以前の木造住宅は、壁の量が少なくて“横の力”に耐える力が弱いのにもかかわらず、屋根材が重い瓦であることが多く、日常的にかかる重力=“縦の力”の負荷が大きくてバランスが悪いケースが多々みられます。屋根材を瓦から、軽量のガルバリウム鋼板などに葺き替えることで、建物そのものにかかる負荷を減らすことができます」(安田専務)

「ただ、ここで注意したいのは、屋根瓦そのものが地震に弱いわけではなく、あくまでも“バランス”で考えることです」と安田専務。

日本で昔から使われてきた瓦材は、その地域の土や釉薬で焼いてできた伝統技術であり、日本の美しい景観を作り出してきました。瓦屋根の家を見ると、どこか懐かしい気持ちになりますし、実は保水や断熱性能だってある。瓦を活かすために壁量を増やすという選択肢もあるわけです」
 
では、昭和56年以降に建てられた住宅であれば、耐震性能については安心できるというわけでしょうか。
 
「実はここに落とし穴があって、昭和56年から平成12年までに建てられた木造住宅を“耐震のグレーゾーン”と私は呼んでいます」と、安田専務は気になる発言をします。
 
「昭和56年の建築基準法改正では、木造住宅の壁の量に対する規定が設けられましたが、そのバランスまでには言及されていませんでした。例えば、日光が入る南面には全面的に大きな窓を設けて開放的にする代わりに、北側に壁を集中させて壁量だけを確保するような住まいが増えてしまったのです」(安田専務)
 
安田専務は「家全体で壁量が足りていても、壁の配置バランスが崩れている家は、決して地震に強いとは言えません。地震による“横の力”がかかることで、建物がねじれて揺れて崩れてしまう、というパターンが考えられます」と指摘します。そのため、平成12年にまた建築基準法の一部が改正され、地震に耐えるための壁の量とバランスを考慮すべきことが基準として設けられたのです。
 
昭和56年以前に建てられた木造住宅は、耐震基準においては「アウト」であることが多いため、地方自治体による耐震診断の補助制度を利用できます。しかし、昭和56年から平成12年までに建てられた“耐震のグレーゾーン”の建物には、耐震診断の補助金を利用できません。

大丸建設の新築住宅の骨組み。「耐震のプロとして、構造については最も自信をもっています」(安田専務)

「ご自身のお住まいをふりかえって、“耐震のグレーゾーン”の時期に建てられ、さらに建物の東西南北で壁の量が偏っているな、と不安に感じたら、いつでも気軽にご相談ください」と、安田専務。
 
ただ、今までなかった壁をつくるとなると、壁紙をはがしたり、家具を移動するなど大工事になり、居住性能が変わる難点も。
 
「大丸建設では、“道連れ工事”といって、なるべく今ある居住環境を変えないように押入れのなかに構造用合板を張ったり、もともとリフォームをしたかった部屋に耐力壁をつくる、外壁塗装などと合わせて外壁で補強するなど、効率的かつ安価に抑えられるよう工夫しています。今の暮らしの満足度や快適性をそこなうことなく、地震に強くすることができますよ」と、頼もしい言葉です。
 
「耐震リフォームとは、“転ばぬ先の杖”だと私は思います。地震はいつ、どこで起こるかわかりません。そこに備えることで、いざという時に、ご自身や家族の命と財産を守ることができるのです」と、安田専務は力を込めます。

9/9(土)につくるのは「こども椅子」。背もたれの高さや角度はお好みで調整可能! 満席になりましたが、キャンセル待ちも受付中

さて、森ノオトと大丸建設のコラボ講座「土曜日の日曜大工講座」は、この9月で毎月開催を終了し、今後、森ノオウチ(青葉区鴨志田町)では3カ月に1回の開催となります。今後は、大丸建設の地元・稲城市を中心に展開していくそう。ぜひ、大丸建設のホームページかFacebookページにアクセスして、最新情報をゲットしてくださいね!
 
https://www.facebook.com/kkdaimarukensetsu/

Information

「土曜日の日曜大工講座」

201799日(土)10:0012:00「こども椅子」

会場:NPO法人森ノオト事務所「森ノオウチ」

神奈川県横浜市青葉区鴨志田町818-3

東急田園都市線青葉台駅よりバス「鴨志田団地」「寺家町循環」に乗り、「鴨志田町」バス停下車徒歩3分。開始時間の20分前に青葉台駅に到着するとちょうどよいです。

参加費:12000円(作品1つにつき。できあがった作品はお持ち帰りいただけます)保険代、道具レンタル代込み

お申し込み・お問い合わせ:

参加者全員の氏名、生年月日(保険のため)、住所、電話番号、メールアドレス、参加の動機を記入のうえ、event@morinooto.jpまでお申し込みください。

主催:NPO法人森ノオト

共催:株式会社大丸建設

Profile

株式会社大丸建設

http://www.kk-daimaru.co.jp

住所:東京都稲城市大丸71-2

TEL 042-377-4441

E-mail info@kk-daimaru.co.jp

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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