みなさんは、毎日の食事で、お米をどのくらい食べますか。また、そのお米は、どこで購入したものですか。
「お米のおいしさは、稲の育った土壌や育てた人の手のかけかたで、違ってきます」と、出会った瞬間から、お米の味を熱く語ってくれたのは、「里のあさじろう」こと、佐藤浅治郎商店の三代目店主、佐藤敬之さん(61)です。
佐藤さんは、農業仲間からの紹介や、小売り商店と生産者を結ぶマッチング団体を通して知り合った農家さんと直接やり取りをして、日本の全国各地から、約30種類のお米を揃えています。
仕入れる際のこだわりは、なるべく農薬の使用を抑えた特別栽培米や、農林水産省から有機JAS認証を受けたものなど、長い年月を費やしたり、手間暇のかかる、高い技術を必要とされる栽培法のものを選ぶことです。
「お店に届く品物が、どんな環境で育ったものなのかを知るために、実際に田んぼまで足を運ぶこともあります。土壌の性質から、風通しや日照時間、付近にはどんな生物が自生しているか、それが作物にどんな影響を及ぼすのか」。佐藤さんは、安心、安全で、おいしいお米を、わたしたち消費者のもとへと届けるために、長年にわたり培ってきた知識と経験を惜しみなく伝えてくれます。
コシヒカリに、あきたこまち、ササニシキなど、生産者ごとに陳列されたお米は、さらに、品種別に分けられています。
炊きあがりに甘味を強く感じるもの、粘りがあるもの、炊き込みご飯に適した水分を含みにくく固めに仕上がるものなど、特徴を親切に教えてくれるので、選ぶ楽しみが広がります。
玄米の状態で販売されていますが、その場で精米してもらえます。1キロから購入できるので、食べ比べてみるのもおもしろいかもしれません。
「あさじろうというのは、おじいさんの名前なんです」と、佐藤さんは言います。昭和20年代、農業をするために、山形県から横浜市泉区に移り住んだ佐藤さんの祖父・浅治郎さんでしたが、もともとお菓子づくりの職人でもあり、副業として店舗を構え、お菓子を販売し始めました。
近所に住むお客さんのニーズに応えるために、生活雑貨や肉や魚などの生鮮食品を取りそろえるようになりました。
今から30年ほど前、周囲にコンビニエンスストアが立ち並ぶようになると、リカー&フーズサトウと名前を変えて、お酒と加工食品に特化したお店へと移ります。
このとき、現店主の敬之さんは、25歳。
「お店を継いだあと、物の受け渡しをするだけの仕事に違和感をもっていました。どうせやるなら、地元の産業や農業を生かし、手助けしながら、自己実現できるような店にしたい」と、当時の想いを語ってくれました。
平成21年にJA(農業協同組合)の直売所ができる前から、「地元の農産物を地元で循環させたい」と、横浜市泉区の農家さんと協力しあい、矢澤農園の浜リンゴなど、地元の農作物の販売を始めました。
「手つかずの自然ではなく、人間がきちんと管理をして、共存した状態の自然が生活のベースにあることに、幸せや充実感を感じます。“里のあさじろう”を通して、そんなライフスタイルを提案できれば」と、佐藤さんは話してくれました。
畑仕事とお店の切り盛りの合間に、ブログやSNSによる情報の発信、米びつの製作などもこなします。週末には、自作のロケットストーブで炊いたお米の試食を行うこともあります。
「百姓は、なんでも自分たちの手でやってきました。時には、家まで建てることもあります。わたしも、人に任せず、すべて自分でやっているので、大変です」と笑う佐藤さんの「不便なのは、不幸というわけではない」という言葉が印象的でした。
品種による味の違いから、農家さんそれぞれのもつストーリーを伝え、日本各地にいる生産者と横浜に住む消費者をつなぐお米屋さんでもあり、畑を耕しながら自然の生態系を細部まで観察し、農的な暮らしを提案し続ける「里のあさじろう」。
歴史への考察も深く、稲作が広がりを見せた弥生時代から、年貢米を納めていた江戸時代の話し、現代のお米を取り巻く状況の変化など、足を運ぶたびに、たくさんのことを教わります。
佐藤さんの豊かな知識と経験を聞きながら、お米一粒から広がる様々な世界を学ぶことができました。
「常に、勉強。ここで終わりということはないですね」と語る佐藤さんのお店に、これからも、通いたいと思います。
里のあさじろう
住所:横浜市泉区和泉町1376
電話番号:045-802-0681
営業時間:10:00〜19:30
定休日:水曜日
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