横浜市内18区の中で公園の数が最も多い青葉区。大小さまざまな公園が私たちの暮らしの周りにあります。そんな公園を、身近に感じ、草木のお手入れを体験する機会をつくってみようと、「プロの造園家と公園さんぽ&愛護会体験」を2019年9月8日(日)に開催しました。会場は、里山の原風景が残る藤が丘公園です。
藤が丘公園の愛護会は、長年の活動が評価されて、2019年11月に、神奈川県美化運動推進功労者として、横浜市を飛び越えて県から表彰されました。しかし、限られた固定メンバーでの活動が続いているため、広い公園内で、手が回らないところもたくさんあるのが悩みだと聞いています。
NPO法人森ノオトと青葉区の協働事業「フラワーダイアログあおば~花と緑の風土づくり~」では、花や緑を囲みながら、多世代が自然と交流できるよう、現代版の井戸端会議ともいえる「花端会議」を提唱しています。公園愛護会の活動は、「花端会議」そのものだから、活動の担い手を、私たち森ノオトとしても増やしたい。どうしたら新しい人が関心を持って参加してくれるのか、行政と共に悩み考え続けています。今回のプログラムも、公園愛護会の担い手不足を解決するための一つの実験でした。
まず、考えたのが、植物のプロを招くこと。横浜市都筑区在住の樹木医で、川崎市で3代目となる造園業を営む持田智彦さんを講師に招き、樹木医ならではの視点で藤が丘公園の植生について学び、剪定のコツなどを教わります。
それから、体験の時間にゲーム性を持たせることを考えました。上記写真の地図は、公園愛護会の方が作成したデータなのですが、その絵が、昭和のファミコンを思わせたことから思いつきました。手入れの行き届かない鬱蒼とした藪を、最後に参加者みんなで、すっきり明るくすることが、この日のミッションです。
加えて、青葉土木事務所から、公園の種類や管理の仕方についてのレクチャーをしてもらうという三本立てで、青葉区ならではのプログラムを考えました。
プログラムのはじめは、青葉土木事務所から、公園の種類や管理の仕方についてのレクチャーです。公園には大きく分けて自然公園と都市公園があり、青葉区内にあるのは全て都市公園です。自然公園(自然を保護するためにそこにある自然を区切って公園としたもの)はありません。
防災やレクリエーション等のためにも、まちづくりをするときには、一定の割合で公園を配置することが法律で定められています。都市公園は、広さや用途によって分けられ、まちなかの小さな街区に属する公園を街区公園と呼び、2ヘクタール以上の広さがあって、近隣住民が利用する公園を近隣公園、4ヘクタール以上の広さがあると地区公園と言います。
他にも種類があるのですが、青葉区内の公園は、ほぼこの3種類。藤が丘公園は、近隣公園です。日常的な清掃や草木と花の手入れは愛護会が担い、年一二回の、広範囲の草刈りや、大木を切る作業、遊具の修理といった大きな仕事は、土木事務所の担当です。
ハード面から、公園への理解を深めたところで、いよいよ、散歩の時間です。
「アカマツが残っているのは、最近では結構珍しいかも」という持田さん。クヌギとマツのゾーンは、かつて日常的に薪や材として、木々が使われていた時代には、全体的にもう少し樹木の背丈が小さくて、明るかったのではないかと推測。アカマツは、大きな木々に覆われると育たなくなるため、放置されてしばらく経つ鬱蒼とした里山からは、姿を消してしまうのだそう。
持田さんは「木を切る=悪と考えるのは、ちょっと違うのではないか」と言います。昨今、
大きくなりすぎた樹木を整備する仕事の依頼がとても多く、手がまわらないほどだとも。
日常的に、暮らしの中で身近な樹木を使うことからすっかり遠のいている現代の都市生活の状況が浮かび上がりました。
ハランが繁茂しているエリアでは、持田さんがハサミを手に、少し黄色がかった葉っぱを根元からサクサクカット。「ハランは抗菌作用もあり、お料理の仕切りなどに使います。余分な葉をすくだけで、縦のラインが出てスッキリまとまります」と実演。ビフォーアフターをその場でみて「結構大胆に切っていいのね」と、愛護会や参加者の方々も、自分でやってみて感覚を確かめます。
シイやクリのゾーンでは、実のなる樹木が、縄文時代から動物や人間の命を繋いできたことを想像します。マテバシイは、いわゆるどんぐりの一種。常緑の丈夫な木で艶やかな緑の大きな葉っぱが特徴です。その実は生では食べられませんが、アクはそれほどなく、茹でたり焼いたりすることで食べられます。
マツタケなどのきのこと木の共生関係、枝が切られた部分は樹木自身が修復して節となることなど、持田さんの話はつきませんが、そろそろ時間も迫ってきたので、ミッション遂行のため、藪へと急ぎます。
クサギやヤマグワなどは、実生(みしょう)でどんどん増え、気がついたらかなりの大きさに育ってしまいます。実生とは、植物が種からそのまま発芽することです。その地にあっているから育つので適当な場所であれば残します。移植したり、苗の段階で抜いておけば藪にならずに済むのですが、適度な剪定が必要です。片手で楽に掴めるくらいの細い段階ならば、小さめのノコギリで女性の手でも切れます。
無事にミッションを達成し、みんな清々しい笑顔です。「光が差し込んで、見た目がすっきりした!私でもできた!」と、藤が丘在住の女性が話せば、「自宅の庭の剪定にも役立つ話を聞けた」と、田奈町からやってきた女性も満足そうでした。愛護会活動は、地道な活動ですが、時には、いつもと少し見方を変えて、工夫することで何倍も楽しくなります。
そして、この日実感したのは道具の大切さ。手入れを怠るとけがの原因にもなります。持田さんの持ってきた道具を使ってみて「自分たちは、なんて切れ味の悪い剪定バサミを使っていたのか!」と、愛護会の方々が気づいたそうです。愛護会費の使い道として、時々、プロを招いて外の視点から普段の活動を見直すのも、いいかもしれないですね。
本来、ここでお弁当を広げて、植物や公園の話をしながら参加者同士でさらに花端会議をしたかったのですが、この日は午後から台風予報のため縮小プログラムとし、これにて解散。そう宣言した途端に大雨が降ってきました。参加者みんなでテントの中で雨宿りをしながらの、束の間の「花端会議」がおこなわれたのでした。
9月8日の夜から9月9日にかけて関東地方を直撃した台風15号は、藤が丘公園にも甚大な被害をもたらしました。この講座の後から、土木事務所や区の方々は、緊急体制をとり、大忙しだったそうです。前の日に、直接ふれて語りかけた木のうち、何本かが根元からボッキリと倒れていました。日頃からの手入れがなければ、太く育つべき木が育たず、木も密集し、もっと被害が拡大していたかもしれません。台風の襲来で、愛護会活動は、防災にもつながることを、身をもって感じられました。
フラワーダイアログあおば~花と緑の風土づくり~についての記事は、こちらのリンクからご覧ください。
https://morinooto.jp/special/hanatomidori/
今後のフラワーダイアログあおばのプログラム
5月開催の予定で日程調整中です。
<中止になりました>>>#フラワーダイアログ SNSキャンペーンを実施中です!
「みちくさのススメ」
雑草博士とまちあるき>>>オンラインZASSOトークの記事になりました。
日時:2020年5月23日(土)10:00-12:00
集合場所:青葉区役所1F区民ホール
参加費:無料
定員:20名
申し込み方法:event@morinooto.jpに①参加者全員のお名前②申し込み者の住所③メールアドレス④電話番号をお書き添えの上、メールでお願いします。Eメールをお持ちでない方は、上記内容を明記の上、青葉区企画調整係へFAX(045-978-2410)でお申し込みください。
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