「日本一の小松菜の産地」として知られている横浜。その小松菜を主力で生産している若き農家が、港北区にいます。江戸時代から代々続く農家で、就農して5年の小山晃一さんに、農業の魅力を聞いてきました。
横浜の野菜といえば、小松菜! 平成15年、16年には小松菜の収穫量が全国1位*になったほど。都筑区、港北区が主要な産地です。
*平成16年の小松菜の収穫量は3,760トンで、全国の市区町村で1位となった(横浜市環境創造局ホームページより)。
港北区新羽町で代々続く農家の小山晃一さん(40)は、美しく整備された小松菜ハウスでこの日も懸命に小松菜を収穫していました。就農して5年、「親には一度も農家を継げと言われたことはないのですが、やっぱり自分は農家の子だったんですね。大学を卒業してから12、3年勤めた後、自然と農家の道に進むことになりました」と振り返ります。
お父様の代で小松菜をメインに生産するようになりましたが、横浜の農家らしく、少量多品目の野菜を生産しています。小松菜のほかに、ほうれん草、トマト、きゅうり、なす、パプリカ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、オクラ、大根、かぶ、ジャガイモ、玉ねぎ、人参、里芋、いんげん、枝豆、ネギ、白菜、スイートコーン、水菜、さやえんどう、にんにく、ラディッシュ、ズッキーニと、年間通していろんな野菜を手がけている小山さん。
「企画、生産、販売まで、トータルで経営できるのが農業のおもしろさ」と、元営業マンらしい言葉に、なんとも頼もしさを感じます。
「濱の料理人」の仕掛け人で、農林水産大臣認定「地産地消の料理人」として知られる「大ど根性ホルモン」(横浜市西区北幸)オーナーシェフの椿直樹さんが、小山さんの小松菜に出会ったのは3年前の「食と農のプロデューサー養成講座」でのこと。講座を受講していた小山さんとの出会いから、小山農園の小松菜を仕入れることになりました。
「小山さんはとにかく真摯に小松菜と向き合っている。品物を切らさないし、安定して小松菜が手に入るのは、レストランとしては本当にありがたい」と椿さんは評価します。
「それに、(小松菜の出来が)よくない時は、ちゃんと言ってくれるんです。旬がずれると少し固くなることもあるんですが、食べ方で工夫ができるので、そういうところが小山さんの真面目さだと思います」(椿さん)
小松菜の旬は冬ですが、ハウス栽培で一年を通して安定して生産することができます。四季折々で環境が変わるなかで、手間暇をかけて、美味しい小松菜づくりを追求している小山さん。小松菜が病気にかからないよう、外の畑ではネットを張って病害虫を防いだり、冬場はネットよりも温かい不織布をプラスして保温性を高めるなど、工夫を凝らしています。このように、ていねいに手をかけることで、農薬の使用を最低限にとどめることができるそうです。
「面倒くさいなと思って手間を惜しむと、ダイレクトに結果に跳ね返ってしまうのが農業。天候に左右されるので農業は大変な部分もありますが、支柱やネットなど手をかければきちんと応えてくれるので、手は抜けないですよね」と、小山さん。整然としていて美しい小松菜の畑を見ていると、小山さんの人柄が伝わってきます。
椿さんは「小山農園さんは、横浜の小松菜の第一人者だと思っているので、ぜひ横浜、神奈川、そして全国に小山さんの小松菜を発信していきたい」と発破をかけると、照れた表情を見せる小山さんです。
今は、市場やJAの直売所、スーパーや、横浜野菜を取り扱う「濱の八百屋」などの5カ所と、レストランへの卸売がメインですが、「いずれは直接お客さんに野菜を販売する直売所を持ちたい。できたら、数年以内に農家レストランを開きたいんです」と、大きな夢を語ってくれた小山さん。
夢を言葉にするのは、叶えるための一歩になります。森ノオトで6年間、様々な取材を重ねていますが、ていねいな仕事と誠実な人柄が目に見える人は、着実に仲間を増やして、夢を実現しています。次に小山さんを取材する日は、きっと農家レストランにうかがっているにちがいない……今からその日が待ち遠しくてなりません。
小山農園(Koyama Farm)
横浜市港北区新羽町
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