町田のお店で出会った、美しい紫紅色の日野菜カブ (*1)。お店の方に、「この野菜はどこでつくられているのですか?」と聞いたところ「小山田のバンブービレッジファームというところで、若い子が自然栽培で作っているのよ」といいます。
後日、自宅でその一部をぬか漬けにしたとき、他の野菜とは一際違うシャキッとした食感を維持していました。この野菜を、どんな方がどんな風に育てているのかが気になり、農場を訪問しました。
(*1)日野菜(ひのな)カブ 滋賀県の特産で、桜漬として親しまれる、茎や根の一部が紫紅色をした美しい色のカブ。
延べ2000人と共に耕し学ぶ農場
農場主は竹村庄平さん。2014年9月から農場経営をはじめ、現在6年半を迎えます。現在、1名の社員を雇用し、竹村さんと二人で運営しています。気さくで優しい人柄の竹村さん。美しい里山の風景が広がる畑で、バンブービレッジファームにまつわるお話を聞きました。
里山の景観、農地や自然が、東京の中で比較的残っている町田市にあっても、農家数の減少や農業人口の高齢化、耕地面積の減少は課題となっています。竹村さんは、そんな町田市で、耕作面積を拡大し続け、現在では15,000平方メートルもの畑で作物を栽培しています。驚くことに、それが全て自然農法で栽培されています。農業にとって、雑草などの管理は手がかかることの一つですが、除草剤の使用や資材で雑草を抑える農法もあります。しかし、バンブービレッジファームではそれらをしていないのです。広い面積の畑を、手間のかかる方法で、どうやったら二人で管理することができるのでしょうか。
その答えは、年間延べ2,000人はやってくるという、「人の集まる農場」だからできる、という解でした。農場を訪問する人々が、共に畑を耕しているのです。では、なぜバンブービレッジファームは、多くの人が集まる農場になったのでしょうか。
竹村さんは、「食育、農育をしたいと思ってやってきた。農業をすることや自然栽培はその手段でしかない。自分の考える食育/農育とは、生産者と消費者の溝をなくすこと、そして農家がちゃんと職業として認められる世の中をつくりたいんだよね。そのためには多くの人に農場に来てもらい、農業という仕事を知ってもらいたい」と言います。つまり、竹村さんは、多くの人のやってくる農場を目指して、バンブービレッジファームをつくり上げてきたのです。
農場に行くことは、食べ物をつくることや、農家の仕事とはどういうものなのかを知り、その価値を改めて感じる機会となる。そして、農場を訪れた人が、例えば、農業やフードロス(食料廃棄)、環境の問題など、さまざまな点について考えを巡らせるきっかけになる。そして、自分の考えた良い行動を選択できる生活者が増えれば、それが社会をより良く変えていくうねりになるのかもしれないと、わたしは思いました。
なぜ人は農場に集まるのか
竹村さんは、農場に来たいという人をまずは受け入れます。受け入れは、畑の案内から作業手順を教える、考え方を伝えるまで、手間がかかります。日々の農業の膨大な業務がある中で、丁寧に対応するため、時間も取られます。しかし、竹村さんはこれをずっと続けています。
1回の見学で終わる人もいる一方で、常連さんになる人も。常連さんは、定期的に農場を訪れ、無償で、農作業を喜んで手伝います。その常連のファンが、広い農場を共に耕し、そうして出来た野菜の購買もしています。
そういった、繰り返し農場にくる人々は、なぜ、わざわざ「無償」で農作業をしにやってくるのでしょうか。
竹村さんは、農場にくる人々個人の「やりたい」を尊重し、農場という舞台で、惜しみなくその機会を提供します。
農業にまつわる仕事を考えている学生が、農作業を体験し、実際に野菜を販売してみる。食育もできる食堂作りを始めたいと考えている女性が、自然栽培について学び、野菜を調達する。健康を保ちたいと考えている高齢の方が、自然の中で畑作業をし、気持ちのよい汗をかく。子どもたちは広い大地の上で、裸足で思いきり走り、虫を捕まえ、野菜が実際どのように育っているのかを知る。
つまり、人々は農場に行くことで、お金ではない、別の大きな価値を得ているのです。この農場で行われていることは、純粋な価値の交換。この気持ちよさを知った人々は、農場に繰り返し訪れ、皆で一緒に野菜を作り、協力しあいながら、それ以上の多様な活動を展開していきます。
このような農場を通じた価値の交換、関係性の構築を、竹村さんは大切に、丁寧に6年半続けてきました。それが、現在の「年間延べ2000人が集まる農場」につながっています。
地域の豊かな暮らしを支える農場の今後
竹村さんは、今後の展望をこう話します。
「今後は、さらに人が来ることができる仕組みをつくったり、農場のサブスクリプション(定額購入)とかいろいろと新しいことにチャレンジしていきたい。今のやり方では、やることが多すぎて限界に近づいていて、2年後に、実は農場を閉じる可能性についても考えていたりする。仕組みを変えないとな」。その話を聞いたボランティアの方が、「閉じては困る。私たちもいるから大丈夫よ」と。その会話を聞き、バンブービレッジファームは、まさに、生産者と消費者のつながっている農場になっているのだと、感じました。今後も支えあいながら、農場は続いていくのだと思います。
地域で食べるものを、地域の人々でつくり、地域の環境や人々の健康、楽しい暮らしを支えていく。そんな農場が、都市の中にあることで、私たちの暮らしはより豊かで心地よいものになっていくのではないでしょうか。
都市の中にある、年間延べ2000人が集まる農場では、今日も素敵な何かが生まれています。
バンブービレッジファームでは、畑deコンサート、ヴィーガン食、包丁研ぎなどの各種勉強会といった、様々な活動を今後も展開していきます。Facebookでも告知されますので、皆さんぜひチェックして、農場を訪れてみてくださいね。
バンブーブレッジファーム
住所:〒194-0202 東京都町田市下小山田町付近
ブログ:https://ameblo.jp/keke0323
Facebook: https://www.facebook.com/bamboovillagefarm
E-mail: keke0323@hotmail.com
農場に訪問の際は、事前にFacebookメッセンジャーやメールアドレス宛にメッセージをお送りください。詳細の場所が案内されます。
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