森ノエコキネマ「ぼけますから、よろしくお願いします。」上映会を終えて
昨年末、5年ぶりに森ノオト主催の映画上映会・森ノエコキネマ「ぼけますから、よろしくお願いします。」を市が尾の「くらしてらす」にて開催しました。
最近は手軽に携帯端末などで映画を観る機会も増え、それはそれでありがたいと思う反面、やはりこうやって集って一緒に観ることで、より細部まで自分の中で深まり広がるということを改めて感じる機会になりました。

これまで、このエコキネマで取り上げてきた映画は、子育て世代向けのものが多く、森ノオト読者との親和性もあり、告知や集客で苦戦することはあまりありませんでした。

が、自分たちも年齢を重ね、介護や認知症の話なども遠からず身の回りで聞くようになり、少し趣向を変えてみようと選んだのが今回上映した映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」です。

 

従来のような森ノオトのウェブサイトやSNSなどを使っての情報告知ではなかなか届かず、申し込みが伸び悩みヤキモキしました。

途中、申し込み方法を変えたり、電話での受付に変更してみたところ、電話口で、どれだけ楽しみにしているか、というお話を伺ったり、「一度会場の下見に行ったのよ」という方も。

段々と当日が楽しみになってきました。

上映した「ほけますから、よろしくお願いします。」は、娘であり監督の信友直子さんが、認知症の患者を抱えた家族の内側を丹念に描いたドキュメンタリー映画です

上映会の開催日はクリスマス直前の12月22日(金)。

冬だということを忘れるほどのそれまでの暖かさから一転、急に芯から冷える寒さ到来の日で、会場の床暖房のありがたみを存分に感じました。

 

午前と午後2回上映をしたところ、皆さん、プププっと笑うところ、ほんわかと笑顔が出るところ、涙が溢れてしまうところ……。みんなそれぞれ違っていて。

 

終わってからお客様と立ち話をしたり、片付け後にスタッフとお茶を飲みながら、映画の内容を語り合いましたが、みんなが自分の家族のことと重ね合わせ、お互いの家の話をし合うのも印象的でした。

 

私は、試写と合わせて3回も観たのに、何度見ても両親と重ねてしまい、色々な感情が湧き上がって、心が忙しかったです。

 

わが家の無口な父が、実は、この映画のお父さんのように、心の中ではこういうことを思っているのかもしれないと思ったり、

お母さんの、娘である監督に対する愛情が、自分が母から受けてきたものに重なって、言葉が出せなくなってしまった今の母の感情を慮ったり。

 

この映画のその後が気になり、上映後、すぐさま続きの作品を観ました。

 

そして、年末には父母に会いに行き、一緒にお正月を過ごしました。

 

一見何も変わらないようで、私の中では父母への労りの思いや、日常的に2人の老老介護生活を近くで支えてくれている妹夫婦への感謝の気持ちが湧き上がるようになり、「ありがとう」という言葉を自然と頻繁に伝えられるようになりました。
とても些細な変化ですが、私の中では大きな変化。

この時間を、もっと大切にしたい、今できることを大事にしたい、と思えた、今観られてよかったと心の底から思える映画でした。

 

 

上映前、集客に伸び悩んだ時には、こんなに映画が気軽に見られる時代に、わざわざ自主上映会をすることもないのかもなあと思ったりもしましたが、終えてみて、一緒に映画を観た方々の顔や語り合う様子を見て、やっぱり同じものを観て、一緒に笑ったり泣いたりして、そして一緒に語る、そんな時間が豊かで大切な時間なのだと感じました。

 

また懲りずに上映会をしましょうね。

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この記事を書いた人
齋藤由美子ファクトリー事業部マネージャー/ライター
森ノオトの事務局スタッフとして、主にAppliQuéのディレクションを担当。神々が集う島根県出雲市の田舎町で育ったせいか、土がないところは落ち着かない。家では「シンプルな暮らし」関連本が十数年にわたり増殖中。元アナウンサーで、ナレーターやMCとしての顔も持つ。小6女子の母。
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