マイクロプラスチックによる海洋汚染、脱プラ、リサイクルなど、プラスチックごみをいかに減らし、リサイクルしていくかは、社会全体の大きな課題です。レジ袋の有料化や、お菓子のパッケージが紙に変わるなど、少しずつ取り組みは広がっているものの、毎日の生活の中で、プラごみが出ないことはほとんどないのではないでしょうか。ペットボトル飲料や、お菓子の個包装の袋、お惣菜の容器、歯磨き粉のチューブ、手指消毒のボトル、おもちゃ、家電、テレビのリモコンなど、私たちの暮らしはありとあらゆるところでプラスチックに囲まれています。言葉を変えれば、プラスチックなしでは私たちの生活は成り立たないといっても過言ではありません。
プラスチックは再生できる資源です。横浜市では「よこはまプラスチック資源循環アクションプログラム」を策定しており、今年1月にはさらに踏み込んで「ヨコハマプラ5.3(ごみ)計画」を策定しました。2030年度までにプラスチックごみの量を2万トン、一人当たり年5.3kg削減する(2022年比)するという目標を掲げ、分別ルールの変更や、マイボトルスポットの利用促進、海洋汚染に対する啓発を進めていきます。
私たち森ノオトは、2013年度より青葉区地域振興課と一緒に、暮らしの3Rをすすめるさまざまなイベントを実施してきました。
今年は、小学生とその保護者向けに、理科の実験によって「プラスチックはごみではなく資源!」をテーマにした「3R理科実験教室」を行います。
講師は、横浜市を拠点に、理科実験を通して科学的思考を子どもたちに伝える「理科クラブ」の西沢久美子さん。「プラスチックごみを分別することの大切さや、ごみとして捨てるのではなく資源として循環させていく大切さを伝えたい」と企画を相談したら、次から次にアイデアが浮かび上がってきて、ワクワクしました。さっそく、「3R理科実験教室」のために、当日行う実験のテスト開催をしてみました。当日実施する内容は、原料からプラスチックを作ってみることと、廃プラスチックを再生してみる実験です。
実験① プラスチックを作ってみる
西沢さんが取り出したのは、二つの液体です。
「これはモノマー液といって、プラスチックの最小単位である化学物質です。水素や炭素などの元素が結びついた低分子化合物で、これらをたくさん反応させて複雑な鎖を作ってできるのが、プラスチック製品です」と西沢さん。
プラスチックの原料は、主に石油からとれる「ナフサ」という油が原料で、ナフサを高温で熱分解反応させてプラスチック製品として加工しやすくしたものが、モノマー液や、気体のエチレンやプロピレンです。
2種類のモノマー液をかき混ぜるだけで、液体が反応して熱を持ち、泡が立ち上がって、冷えたら固まって、発泡ウレタンができあがることがわかりました。あら、カンタン。
「これをきちんと型に入れて反応させたら、プールで使うビート板になります。プラスチックは単純な化学反応で製品を作ることができます。とても安価で、加工しやすいので、プラスチック製品は簡単に作れるのです」と、西沢さん。
実験② プラスチックを溶かしてみる
続いて西沢さんが取り出したのは、発泡スチロールです。梱包の時の緩衝材や、冷蔵品を配送する時によく見かけますよね。軽くて便利ですが、資源ごみとして出す時の容量が大きいのが難点です。
「発泡スチロールは簡単に減容できるんです」と、西沢さんは発泡スチロールを割ってビーカーに入れて、ある液体をかけました。すると、みるみるうちに発泡スチロールが溶けていきます。
「発泡スチロールは、アセトンやリモネンといった液体をかけると、溶けて小さくなります。たとえば市場などでは資源回収用にリモネンのプールがあって、そこで発泡スチロールを入れてプラスチックごみを小さくしています。ただ、こうした減容方法が可能なのは発泡スチロールなど限られた性質のプラスチックなので、種類ごとに分別することが大切なのです」と西沢さんは言います。
実験③ プラスチックごみを再生してみる
続いて行うのは、プラスチックごみを熱して溶かして固めて、製品を作る実験です。西沢さんが取り出したのはたこ焼き器。こちらを熱して溶かし固めるので、においが発生します。実験中は換気を十分に行います。
今回の実験で使ったのは、りんごなどの緩衝材として使われているネットです。他にも、緩衝材のプチプチや、ポリエチレンのプラスチック包装を使うことができます。
この実験では、プラスチック容器包装を熱で溶かして固めることで、新たなプラスチック製品に生まれ変わるということがわかりました。
「プラスチックごみによって、簡単に再生プラスチック製品ができます。元のプラスチック製品の色によって再生プラスチック製品の色にも影響することもわかります。横浜市でもプラスチック再生原料で作った文房具や、プランターなどを作っていますよね。再生プラスチック製品の見方が変わるかもしれません」
実験④ プラスチックから繊維を作ってみる
最後に、プラスチックから繊維を作る実験をします。
私たちが普段着ている化学繊維の洋服の中にも、再生プラスチックからできているものがあります。代表的なのがフリースや、機能性繊維として速乾性に優れた肌着などがイメージできます。
再生プラスチックから繊維を作ってみると、プラスチックはごみとして捨てるだけではもったいなく、リサイクルによって多様な形になり、それはまさに資源そのものであると体感的に理解できました。実験中、西沢さんは「バージンプラスチック」と「再生プラスチック」と言葉を使い分けていました。バージンプラスチックの原料は石油だけれど、再生プラスチックの原料はプラスチックそのもの。つまり、一度使ったプラスチックも、きれいな状態で資源回収に出せば、次のプラスチック製品の原料になるということです。
マイクロプラスチックの海洋汚染や、脱プラという言葉を聞くと、プラスチックが悪者のように感じてしまうのも事実ですが、プラスチックそのものには罪はありません。製品を作るのにとても簡単で、便利で、しかも安価であり、だからこそ大量に作られ、私たちの暮らしになくてはならないものになっているのです。
プラスチックがこれからも必要であるならば、今の世代でその原料を使い切らず、また汚れたままごみとして燃やさずに、限りある有効な資源として、使う量を減らして、未来世代のために使える余地を残しておくこと。そして、プラスチック以外で代替できるものならば、再生可能な資源を使うことや、今あるプラスチック製品を、繰り返し、長く、大切に使っていくことも大事です。
西沢さんは、「プラスチックの実験をする時には、いつも問いを立てるんです。もしプラスチックの原料である石油がなくなって、それでもプラスチック製品を作らなければならない場合、何を優先に作る?と」。限りある資源の有効な使い方について、子ども自身で考える力が身に付くはずです。
ぜひ、お子さんの環境教育や、資源循環の学習として、春休み目前に生きた学びを体験しにきませんか。
※この記事で紹介した実験は、理科実験のプロの監修のもと、換気を確保できた状態で行っています。材料によっては、引火性のあるもの、身体反応が引き起こされることや、火傷の危険性もあるので、この記事を読んでのご家庭での実験はご遠慮ください。
※青葉区で実施する実験では、西沢さんが講師となり、換気を確保したうえで実施します。プラスチックを溶かす実験がありますので、化学物質に対して感受性の高い方の参加については、ご自身で判断ください。熱の発する器具を使いますので、必ず保護者のご同伴をお願いいたします。また、未就学児は同伴いただけませんので、弟妹の保育が必要な方は別途お申し込みください。
3R理科実験教室
- 日時:2024年3月24日(日)10:00〜12:00
- 場所:横浜市青葉区役所4F大会議室(横浜市青葉区市ケ尾町31-4)
https://www.city.yokohama.lg.jp/aoba/annai/kuyakusho.html
- 主催:青葉区地域振興課、企画・運営:認定NPO法人森ノオト
- 参加人数:青葉区内に在住・在学の小学校3〜5年生の児童と保護者30組程度(要保護者同伴)
※未就学児の参加不可、1歳以上の未就学児については別室での保育利用ができます
- お申し込み締め切り:3月12日(火)17:00応募締め切り、応募者多数の場合抽選、3月19日までに参加の可否をご連絡します。
- お申し込み方法:
参加者(お子様)のお名前、ふりがな、学年、同伴する保護者のお名前、住所、電話番号、メールアドレス、普段のごみ分別で気をつけていることや分別法の質問、弟妹保育の希望(その場合、お名前、生年月日、アレルギーの有無等)を記載のうえ、以下のフォームよりお申し込みください。
※2月26日より申込開始
- 主催、問い合わせ:
青葉区地域振興課(資源化推進担当)
TEL 045-978-2299
E-mail ao-shigen@city.yokohama.jp
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