森ノオト編集部・「毎日がロケハン♪」チームがゆく! 大学学食めぐり 横浜美術大学編
森ノオト編集部は昨年度から4つのチーム制になりました。今年度(2024年)、コミュニティを探求する「毎日がロケハン♪」チームでは、地域の大学を起点に広がる多様な関係性を、楽しみながら観察・考察するべく、近隣にある大学の「学食」をめぐる旅を始めます。

学食めぐりシリーズの第一弾は、横浜美術大学です。

 

森ノオトの事務所のある青葉区鴨志田町内には二つの大学があります。事務所から歩いて10分ちょっとのところに、日本体育大学健志台キャンパスと横浜美術大学が並んでいるのです。どちらも、中里北部連合町内会の「気づきの和連絡会」に森ノオトも加入して、職員の方と顔を合わせるようになって、心理的な距離もぐっと縮まりました。美大の中には画材店があり、そこで時々買い物もする私にとっては、生活するのに必要な地域資源、社会資源にもなっています。大学全体を取材した記事もあるので、ぜひ合わせてお読みください。

 

横浜美術大学の学食は、食堂ではなくおしゃれなカフェテリアです。リニューアルの際に、今年学長になられたテキスタイル専門の加藤良次先生が色彩設計をしたというだけあって、センス良く美しい空間が広がっています。

真っ白なテーブルに明るい黄緑色の椅子、木目の床や天井、窓の外に広がる青々とした緑、天井から吊り下がるペンダントライトの柔らかな光。全体が調和していてとても落ち着きます(写真:山田留美子)

 

こだわりの手洗い場(某有名カフェと同じ水栓だそう)とゴミ箱。壁にかかっている作品展示用のフックが美大ならではかも

横浜美術大学は学生数が、一学年200人前後、全校で800人ほどと小規模な大学です。学食も大々的に外に開かれている訳ではありませんが、一般の人も利用することができます。利用するにあたっては、近隣住民として大人として、マナーを守り、学生たちの邪魔にならないよう気をつけたいものですよね。授業の関係で水曜日は比較的空いているそうですよ!

メニューは、A、B、C3種類の日替わりランチの他に、定番のカレーライスやラーメン、そばなどの麺類、ポテトなどのスナック類、チュロスやドーナツなどのデザートも人気なのだそう。券売機は現金のみ対応のタイプ(写真:山田留美子)

 

取材した日のAランチ、ごまだれ唐揚げ丼350円は、添えられた千切りキャベツやブロッコリーとごまの風味が合って、さっぱりと油っこくなく40代の胃にもやさしいお味でした(写真:山田留美子)

 

取材同行してくれた新ライターの山田留美子さんはBランチの台湾風まぜそば400円を注文。野菜たっぷり、辛さは控えめで、量もちょうどよいと完食。食器も美大ならではの美的センスを感じさせる色とフォルムでした(写真:山田留美子)

大学ではたらく人々と学食

カフェテリアの運営を担うのは株式会社SHIDAX。学校、幼稚園、高齢者施設、企業など、さまざまな施設で食を提供している会社です。HPで会社の沿革を見てみると「1964年10月に、東京オリンピック大会組織委員会より指定を受け、大会運営スタッフの食事提供業務を受託。組織委員会より感謝状を受ける」とあり、歴史ある会社だったのだなと初めて知りました。調布市で設立され、現在、本社は渋谷区。横浜美術大学の学食で働いているのはほとんどが青葉区在住の地域の方々です。

 

ここにきてから3年目という社員の方に、美大ならではの特色や、ここで働くことの面白さについて伺うと、「やっぱり個性的な子が多いですよね。学生さんたちが割と気軽に話しかけてくれるんですよ。いっぱい食べるより変化があった方が喜んでくれるかな。だから、学生さんたちからのリクエストを取り入れて、おいしく食べてもらえるように、人気のある油淋鶏やとんこつラーメンは頻度を高くするとか、工夫して、日替わりのメニューを考えています。ここは、社員食堂なんかとはやはり雰囲気が違って、自由な感じで、学生さんだけでなく、先生や職員さんとも距離感が近いなと思います。働きやすいからか、パートさんの中には10年以上働いている方もいるんですよ」と、明るい笑顔でお答えいただきました。

 

厨房から眺める学生たちの姿に元気をもらったり、心配したり。地域の大学の学食で働くというのは、実は、人や地域を育てることにつながっている仕事だよなと改めて感じました。

こちらは取材の下見にいった日のCランチ、ポークビーンズ450円。Cランチは一番豪華で満腹になりました。でも、お隣の日体大のメニューと比較するとボリュームは控えめかも

今回の取材をコーディネートしてくれた、大学の事務方で地域連携担当の小林あず沙さんと広報担当の山田倫子さんも、「この大学は、先生と学生との距離が近くて、のびのびとおおらかな、とってもいい雰囲気なんです」と口を揃えます。

 

「入学時に学科を特定せず、さまざまな分野の技術を横断的に学んでから専攻を決めるという、他の美大にはない、独自のカリキュラムだからということもあるかもしれません」と、小林さん。生涯学習講座に通う地域の60代、70代の方々との交流から学ぶことも多いそうです。

 

こどもの国近くで育ち、小さい頃から、ここの大学の存在は知っていたという小林さんは、

「大学は閉ざされたところと思っていたら、地域との連携がこんなにあるのか!学生時代に地域の方々と関われる大学ってあるんだと、働き始めてから知りました」と、学内と学外をつなぐ役割を楽しんでいらっしゃいます。

 

高校生とその親御さんに接することが多いという、広報担当の山田さんからは「オープンキャンパスでは事前予約をすると、ワークショップが受けられたり学食のランチが無料でつきますよ!」と、ご紹介いただきました。

 

ちなみに、小林さんと山田さんは、普段、お弁当と学食半々くらいで利用する派だそうです。

広報担当の山田さん(左)のおすすめはCランチ。手にしているのは、2024年7月14日(日)のオープンキャンパスのハガキです。地域連携担当の小林さん(右)は、月ごとのメニュー表を見て、アジア系の珍しいメニューがある日などは学食を選ぶ確率が高いのだとか。お話を伺ったテラス席の開放感も心地よかったです

さて、ランチでお腹を満たした後は、構内をのんびり散策しました。構内のあちこちに作品がごろんと転がっているのが美大らしいところです。学生さんのカラフルでおしゃれな姿がまたキラキラと眩しく、みんなかわいいなあ、夢に向かって頑張って!と、目を細めて見守るおばちゃん目線になっている自分に気づきます。

 

みなさんは、「学食」と聞いて思い出すことはありますか?あの時のあの味、匂い、音、一緒に過ごした仲間との会話や気持ち、忙しく働く厨房の人々の姿など、記憶の糸をたどると学生時代の色とりどりの思い出が蘇ってくるのではないでしょうか?

学生たちの憩いの場所。天然芝が美しいグラウンドも大学の特色の一つです。小林さんと山田さんも、「学校の中で一番のお気に入りスポット」と口を揃え、桜の季節には、お花見しながら、ここでお弁当を食べるのだと聞き、なんて素敵な!と、さらに青春の妄想物語が脳内に広がっていきました……

最後に、画材屋の「地球堂」にも立ち寄りました。ここは短大だった時代からあるお店で、学生や先生だけでなく、地域の方々からも広く愛されています。

営業は9:00-17:30。学内には、本館と体育館の他に7つの建物があり、「地球堂」はビジュアルデザイン研究室と教職課程研究室のある建物の近くにあります

 

「地球堂」の主、ここで働き始めて20年以上になるという小林克彦さん(右)と、「今年、横浜美術大学を卒業して4月から正社員として働き始めたばかり」という金悌奈(キム ジェナ)さん(左)

小林さんはロック好きで店内にはギターが。金さんも自身の作品作りをしながら新人社員として奮闘中で、金さん作のペンギンモチーフの作品も店内に展示されています。長らく、小林さんお一人で営業していたため、配達などで留守にする時にはお店を閉めていましたが、二人体制になり、常時オープンできるようになりました。

 

大学構内にあるため、「常に若い子ばっかりやってくるのが、ここの特徴だね」と店主の小林さん。「青葉区周辺にはプロの作家さんも住んでるし、学外のお客さんの方がむしろこだわりが強くて対応が大変だよ」と笑います。地球堂は昼休みなく営業しているので、お二人は、隙間時間にささっとお弁当などを食べるとのこと。学食へはほとんど行かないと伺って、寺家鴨志田周辺のおいしい地産地消のお弁当を届けたくなった私です。

 

公式、公的な地域との連携企画にも力を入れている横浜美術大学ですが、私的な趣味や仕事から始まる関係にも豊かさや連携の可能性を感じた取材となりました。

Information

学校法人トキワ松学園 横浜美術大学

神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1204

 

横浜美術大学
https://www.yokohama-art.ac.jp

 

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この記事を書いた人
梅原昭子ライター
引き算の編集が好きです。できないこと、やりたくないことが多過ぎて消去法で生きています。徒歩半径2キロ圏内くらいでほぼ満ち足りる暮らしへの憧れと、地球上の面白い所どこでもぶらりと行ける軽さとに憧れます。人間よりも植物や動物など異種から好かれる方が格上と思っている節があります。
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