
えっ?キッチンカーを自分で作る?そんなことができるの?がぜん興味が湧き、宮本さんにキッチンカーの作り方を伺いました。
森ノオトもお世話になっている「JIKEマルシェ」や、春と秋の「里山ガーデンフェスタ」、毎月第3日曜日開催というたまプラーザの「軽トラ元気市」など、横浜市青葉区を中心としたイベントへ出店しているデリオット。地元でとれた野菜やお米を使って食事メニューを提供しています。
店主の宮本さんは、実は私と同じダンスサークルで活動しているメンバー。お話を聞いてみることにしました。

現在の定番メニュー。左上からガパオ・焼肉ビビンバ、左下が黒糖生タピオカ・タコライス
自動車の設計業から転身
昭和のスーパーカー世代の男の子だったという宮本さんは、小学校にあがった頃からNHKの工作番組「できるかな」を見て物づくりに興味を持ち、真似して車を作って動かしていたそう。大学卒業後は車を作る会社に勤めて設計を担当、レーシングカーをゼロからつくる仕事をしていました。その後独立し、自動車の修理や点検、整備や販売を行う「アートモービル株式会社」を設立。リーマンショックで本職のレーシングカーの仕事が減ったときに、興味のあったキッチンカー作りを始めました。

デリオット店主・宮本隆さん(JIKEマルシェ出店中にお邪魔しました)
自分で何でもやりたいという性格だという宮本さんは、仕事が終わると実際に自作のキッチンカーでフランクフルトも焼き始めました。
その頃、家族で遊びにいったこどもの国で、まだ当時は今よりも珍しかったキッチンカーを見かけました。そのキッチンカーにお客さんが絶えず来ているのを見て、自分でも出店したいと思い始め、ついにこどもの国で出店することに。「その時の売り上げは2万もいかなかった」と思い出す宮本さんですが「金額の問題ではなく、その時の達成感が忘れられない」とうれしそうに振り返ります。この経験が、自らキッチンカー運営を本格的に始めるきっかけになりました。

2010年頃作った1代目キッチンカー(写真左の黄色の車)と、出来たての2台目キッチンカー。後ろから商品の出し入れができ、中を使いやすくする工夫がされています。さすが車の設計からデザイン改装、塗装、商品の調理まで全てこなす宮本さん。こんな人はなかなかいない!(写真提供:宮本隆さん)
キッチンカーは法律上、改造車の扱いになります。車の登録には地方運輸局、調理には保健所の認可が必要です。全てを自分でやることにこだわる宮本さん。それらの届けを自ら行い、ついに、会社の事業の一部としてキッチンカーを組み入れ自動車整備・修理・販売業との二足の草鞋がスタートしました。
その頃の苦労を伺うと、「趣味で始めたことを事業として成り立たせること」ときっぱり。「商品に対する責任や、家族や従業員への対価が払えるようにする」そう語る宮本さんからキッチンカーへの熱い思いを感じました。
野菜やお米は地産地消で
デリトオットの看板メニューを聞くと、「そりゃ全部だよ」笑う宮本さん。当初は、調理も簡単で在庫の心配も少ないことからフランクフルトなどを焼いていただけでしたが、事業として始めるにあたって何が喜ばれるか?何なら売れるか?を徹底的に考えたそう。食事としてはサイドメニューだけでなくメインのフードがあると喜ばれることから、焼肉やハンバーグ等の試作を繰り返したそうです。
そんな時、知り合いからすすめられ “はまふぅどコンシェルジュ”を取得。地産地消のキッチンカーに舵を切りました。
青葉区藤が丘で育った宮本さんの友人知人には、農業をされている方も多く、地元の野菜やお米を使うことに自然と前向きに。そこには友人・知人とのつながりを大切にしていること、普段から地元を大事にするという考えがあったからだと宮本さんは話します。
地元産の新鮮な食材を使っていること。これもデリオットのおいしさの秘訣です。
※はまふぅどコンシェルジュ…横浜の「食」と「農」をつなぎ地産地消を広める活動をする人ことで、横浜市が2006年度から認定しています。

青葉区役所で毎月行われる「あおばマルシェ」。ここでの出店が、地産地消に方向を定めたきっかけにもなったそうです。ちなみに、デリオットの名前の由来は「デリバリー夫」だそう!おしゃれなネーミングだと思っていたら、実は日本語混じりの由来に大爆笑!全てに遊び心が満載です
宮本さんのキッチンカーづくり
宮本さんはキッチンカーを作っている時の話をすると、小学生の子どもに戻ったように目がキラキラと輝きます。
現在も、年に2台程度は依頼を受け、キッチンカーを作っているそう。自分で車の設計から出店までの全てを行っている経験を生かし、車としての改装から調理のしやすさ、使い勝手のアドバイスまで行うのだといいます。

デリオットのキッチンカーを作る工程がこちら。キッチン内装も宮本さんの手作業!(写真提供:宮本隆さん)
キッチンカーの運営で宮本さんが大事にしていることは“お客さんとの対話”と“つながり”だと仰います。対面販売が好きでお客さんと話をする。会話をしたお客さんと仲良くなる。他愛もない会話でもお客さんとコミュニケーションをとったことで、覚えてくれてまた次回も、しかも友達を誘って来てくれる!そんな循環が楽しいと話します。

キッチンカーの製作や整備、車検対応を多数手掛けてきたという宮本さん。このエリアでよく見かけるキッチンカーのうち、宮本さんが担当したものも多かったと知り驚きました(写真提供:宮本隆さん)
何事も好奇心から楽しむ姿勢
宮本家では、家族で食事を作るときに誰の料理が一番おいしいのか競い合うなど普段の生活にもちょっとした遊び心を取り入れています。そうすることで自然に料理の腕は上がり、それが高じて、奥様は独学で調理師免許まで取得されたそう。
こんな家族の在り方も、商品のおいしさにつながっていると私は思いました。
「自分が今の歳になって思うのは、小さい頃に誰かが教えてくれたり、経験できることがもっとあったら良かったということ。だから自分の子どもたちには小学生の頃からいろんなことをやらせている」という宮本さん。二人のお子さんは、小中学生の頃から、宮本さんが揃えた本格的な工具を使って、工作作品を制作してきたのだそう。
「小学生から中学生は、いろんなことをさせないと将来進む道の選択肢が浮かんでこない。もの作りもその一つ。あとは大きくなった時に子どもが自分で考えれば良い」のだと。
キッチンカーの作り方の取材のはずが、子育てへ話が広がり、宮本さんの仕事や暮らし、人とのつながりへの思いが印象深く残りました。

お子さんにも、小さい頃から何でもやらせてみるという宮本さん、お子さんも一緒に制作に参加です。 「無理に勉強をさせなくても、興味があることならどんどん吸収する」という宮本さんの話を聞くと子育てのヒントまでもらえたような気がしました。(写真提供:宮本隆さん)
キッチンカーデリオットの今後
今やイベントやマルシェには欠かせない存在のキッチンカー。車一台で食事が作れて移動が出来るというキッチンカーは、とても魅力的で、今や文化として定着していると思います。
「将来は身の回りのものも自分で作りオリジナルの作品に囲まれた生活がしたい」と話す宮本さんが、これまで作ったキッチンカーは10台以上!これからも青葉区のキッチンカー文化を引っ張っていくことでしょう。
宮本さんの遊び心と探究心、ものづくりへのこだわりが生んだデリオット。この夏は、ナイトズーラシア(よこはま動物園ズーラシアが行う夏期限定・夜の開園イベント)はじめ地域のマルシェに出店するとのこと。見かけたらぜひ声をかけてみてくださいね。

「つながりが大事」という宮本さん(写真右上から2番目)。写真は仕事のストレス解消になっているという趣味のダンスの様子

デリオット(インスタグラム)
https://www.instagram.com/deliotto1115?igsh=MThtZmhlNDk4bjNhOA==
アートモービル(インスタグラム)
https://www.instagram.com/artmobil0220?igsh=MXNvbGNvcmk5ejR0aQ==

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