お花で染めた糸で織る、ふんわりこどもマフラー……町田市金井・クラフト工房 La Mano
木々はもう冬支度。落ち葉が美しい季節ですね。みなさんもお出かけ前には温かな冬のワードローブ、巻物や手袋を合わせる日々を送っているのではないでしょうか。今回はその中でも首元をあたためるマフラー、しかもマリーゴールドで染めた糸で織る、こどもマフラーができるまでの工程をご紹介します。「手」しごとの温もりも届きますように……。
町田市金井の住宅街の一角に、里山のような風景が広がります。そこに一歩足を踏み入れると……
入り口の垣根にすてきな看板が。可愛らしい小さな実も一緒にうれしいお出迎え
垣根を通り、見えてきたのは築90年近い古い民家、アトリエ、重厚感のある土蔵が。
そして……
2000坪ほどの敷地内では季節の移ろいを感じることができる。藤棚をくぐりぬけると織り場が。とても気持ち良い空間
シンボルツリーでもある大きな銀杏に抱かれるように織り場があり、柿・栗・びわ・ユーカリなどの木々の間を登って行くと、山のてっぺんに畑が広がります。
スペイン語で「手」を意味するLa Manoは、障がいがある方々と優しく寄り添うスタッフのみなさんが、それぞれ得意なことやこだわりを活かし、藍や茜、びわや栗、たまねぎなど天然素材を使った染めや染め糸での刺繍、織り物など、丁寧な「手」しごとにキラリと光るセンスが加わり、さまざまなアート作品を生み出している工房です。
そんな工房で数日間、施設長の高野賢二さんから手織りのこどもマフラーができるまでを丁寧に教えていただきました。
みなさんには花摘み、染め、織りと分けて、すべての工程をフォトレポートでお伝えしますね。
まずはマリーゴールドの花摘みから。
大切に育てたマリーゴールドを両手で丁寧に摘む咲さん。「お花にぴったりなお名前ね」と話しかけると、小さな声で「ありがと」とにっこり微笑んでくれた
陽当たりの良い母屋の縁側で。マリーゴールドは大きく分けて2種類ある。オレンジと白がアフリカン種。黄色はフレンチ種。並べるとかわいいな
ここからは染めの工程。染場へ……
手前の白い糸は発色のために媒染。ウールの場合は40℃から60℃の火にかけてゆっくりと100℃近くまで上げる。その後、放冷して温度を下げる。真ん中の鍋は加熱前の染料(マリーゴールド)。左はアンティークな染色用の銅製の蒸し器。伝導率が良く、蒸気が安定するのだそう
染液づくり。染める糸の同量から倍量のマリーゴールド(この鍋にはオレンジと黄色)を入れ、沸騰したら20分から30分ほど煮、その後、染料と染め液に分ける。ふわっとマリーゴールドの香りが広がる
糸染。約40℃に冷ました染め液に、40℃のお湯に浸しておいた糸をそっと入れる。10分毎ぐらいに、染めむらが出来ないように、糸を動かし温度を上げていく。1時間かけて温度が90℃になるようにする。温度が上がったら火を止め、一晩かけてゆっくり放冷していく。白い糸が美しい黄色に
きれいに染まった3種類の糸(かせ糸)はぬるま湯で表面についた染料を落とし、物干しにかけて中表を乾燥させる。奥の建物は1階が織り場。2階は多目的スペースであり、イベント時にはギャラリーとして活用され、アート作品などが展示される。こちらは使われていなかった離れの建物を2010年に改修。その際、空気感を大切にしたかったので、梁を残したり、壁も漆喰にし、建具もできる限り自然素材にするこだわり。こんなお家に住みたいぐらい
そして織りの工程。織り場へ……
織り場にはこのサイズとマットやストールなどを織る大きなサイズと合わせて13台の織機(ろくろ型4枚そうこうの織機)がある。手前はいつ訪れてもにこにこ平野智之さん。作成している織り物のテーマは「チョコレートケーキ」だそう。ミルクチョコレートかな? おいしそう
この糸を使い、こどもマフラーを織る。どれも優しい色に染まっている。白に近い一番薄い色がセイタカアワダチソウ。その他はすべてマリーゴールドで染めた糸。色が所々違う上2玉は、段染めされた糸。左の小さなマフラーはできあがりのイメージ。これに合わせてタテとヨコの糸を選ぶ
「整経」という、織る長さ、デザインに合わせてタテに糸を揃える工程を経て、織物の幅とたて糸を整え、織り目の密度を決める道具「おさ」に「おさ通し」という道具を使い、タテ糸を通す
真剣なまなざし。今回マフラーを織ってくれた安藤広野(こうや)さん。「すてきなお名前ですね!!」と思わず言ってしまったわたし。そしてとても丁寧な手しごとが印象的
細かい!! たて糸を「そうこう」ごとに(小さな穴に)糸を通していく「そうこう通し」
準備した経糸を後部にある千切りに巻き、手前の糸は同じ張り具合になるように結んでいく「巻き込み」を経て、製織。横糸を経糸に通し、おさで手前に打ち込んでいく。生地に厚みとやわらかさがでるマフラーに向いている織り方、「綾織り」
房がほつれないように4本ずつ結び、表面を軽くフェルト化させ、あたたかい感触の風合いに仕上げるために、「縮絨」という工程を経る。お湯(60℃くらい)→水→お湯→水と交互に温度差を付けていき、天日干しして乾いたら完成。房を入れてタテ16cm、ヨコ11cmのこどもマフラーのできあがり
モデルはおかのしきちゃん、3歳。お母さんが作ってくれたすみれ色のワンピースと短い前髪にマリーゴールド色のマフラーがよく似合う
小さなこどものマフラーを1本作る工程はすべて「手」しごと。こうして文字にすると、大変な手間がかかっているのがわかります。すべての工程が工房の中で行われるのも魅力的ですね。
たくさんの木々や草花、畑には季節の野菜が側にあり、常にボランティアの方が手入れをしている環境の中、施設長の高野さんをはじめ、工房のみなさんがゆっくりあたたかく接してくださり、ついつい長居したくなる居心地の良い場所でした。ご協力に感謝しています。
さて、クラフト工房La Manoでは、2015年12月4日(金)から12月7日(月)まで、年に2回の冬の染織展がひらかれます(開催時間は10:00-16:00)。
天然素材で染めた色とりどりの糸で織られ、かつデザイン性のある、クオリティーの高い品々が並びます。同じ色でもグラデーションがこんなにもあるものかと驚かされます。この自然の色をみたりふれたりするだけでも、優しい気持ちになれそうです。冬のあたたかなアイテムを探しに、La Manoのみなさんの笑顔に逢いに、ぜひ訪れてみてくださいね。
期間内は小田急線玉川学園前駅から1日5本、無料送迎車(予約制)もご利用できます。
染織展の詳細はこちらをご覧ください。
http://la-mano.seesaa.net/article/429748296.html