
私が以前取材をさせていただいた「めめ菓子工房」と、横浜市民ギャラリーあざみ野が協働し、2026年6月6日(土)・6月7日(日)の2日間、イベントを開催するというお知らせをいただいて、足を運んできました。
イベントの名前は「手話だらけの日」。その名の通り、手話やろう文化がテーマのマルシェです。今回のイベントを、聴者=聞こえる人の立場からレポートします。
私が伺ったのは、6月6日。入り口付近はすでにたくさんの方達でごった返していました。あとから聞くと、なんと2日間合わせて5000人を超える方が訪れたのだとか!

横浜市民ギャラリーあざみ野の当日の様子。アートプラザ(屋外)、エントランス、交流ラウンジ、3Fアトリエ、どこもたくさんの人であふれていました(写真提供:青木康一さん)
まず驚いたのは、こんなにたくさん人がいるのに、会場がとっても静かだ、ということ。どこを見渡しても、手話、手話、手話。ほんとうに手話だらけ!表情豊かに手話を交わし、会場のあちこちで笑顔のおしゃべりが弾んでいたのが印象的でした。
手話で絵本の読み語り
はじめに、交流ラウンジで行われていた手話による絵本読み語りを覗いてみました。こちらは、特定非営利活動法人しゅわえもんによるもの。大型絵本の『やさいさん』(作:tupera tupera/Gakken刊))を、手話で読み語りしていました。

ページをめくるたび、大笑い。たくさんの親子が読み語りを楽しんでいました
ページをめくるたび、観客の笑顔が広がります。手話が分からない私も、絵本の文字と照らし合わせながら、これは「にんじん」かな、「たまねぎ」かな?と想像して楽しい時間を過ごしました。
両手を顔の横でひらひらとさせる「拍手」の手話がわーっと沸き起こって、読み聞かせは終了。私も真似して手話の「拍手」をやってみましたよ〜!音の出ない拍手は初めてで新鮮。こんなふうに「楽しかった」の気持ちを伝えるのもいいな、と思いました。
お買い物と、おしゃべりと
館内、そして建物の外にも、雑貨、アクセサリー、イラスト、絵本、おやつ、キッチンカーなどなど、個性豊かなお店がたくさん並んでいて、どこから覗こうか目移りしてしまいます。
店主のみなさんの多くは、ろう者や難聴者。どうやってお話をしたらいいかな、とすこし心配していましたが、手話や筆談、唇の動きを読む読話、手話通訳を介す、などさまざまな方法で一緒におしゃべりを楽しむことができました。
私はまず、インスタグラムで気になっていた「もったんin再生屋」へ。古着を再利用したハンドメイド雑貨を制作している滋賀のお店です。ユーモラスな顔の刺繍が施されたビタミンカラーの雑貨は思わずニヤニヤしてしまうかわいさ!お互いの携帯電話のメモ帳に文字を打って見せ合いながら、たくさんお話しをさせてもらいました。

手に持っているのはゆりやんレトリィバァをイメージした顔刺繍のポーチ。携帯のメモ帳を使ってお喋りをするうち、どんどん盛り上がってなぜか過去の恋バナまでしてしまいました(笑)
主催者でもある「めめ菓子工房」のブースは大人気!「手話だらけの日」限定商品で販売されていたハーブティー(横浜市港北区のいちご、湘南産オリーブ葉、ハイビスカスを使用した特製ブレンド)目当ての方もたくさんいて長蛇の列ができていました。

おそろいのえんじ色のエプロンがかわいい「めめ菓子工房」の店員さん。お会計は、レジ用タブレットに表示して確認します
私は、「ノノハ日和」で手話の絵本と、「モノ△カラ」でピアスを購入しました。手話ができない私にも笑顔で接客してくださって楽しいお買い物Time♪
「ノノハ日和」は、ろう夫婦 × 聞こえない長男 × 聞こえる次男のファミリー。「モノ△カラ」は、生まれつき聴覚障害を持つ姉妹。ご家族でお店を出されていることも、とても素敵だなと思います。

手話の絵本は、春夏秋冬のカテゴリー別に、手話を学べるイラストが描かれています。この動きにはこんな意味があったんだ!と、視覚的に手話を学べてたのしい。この絵本で少しずつ単語を覚えたいなと思っています。ピアスは透明感のあるものをチョイスしました。夏につけたら涼やかに見えそうでとってもかわいい〜♡

左は手話をモチーフに、ろう者や盲ろう者も触って楽しめるような作品を販売していた「おてての家」のみなさん。おててがついたカチューシャがキュート! 右は、似顔絵を描くイラストレーターの「Yukomo」。似顔絵のオーダー受付もされていました
聞こえにくい、ってどういうこと?
今回印象深かったのは、こちら。VRを通して、<聞こえない・聞こえにくい世界>を疑似体験できる株式会社シー・エヌ・エスのプログラム「Deaf VR」です。
聴覚障害と一言でいっても、聞こえ方は人それぞれ。一つのシーンを映像で見ながら、「全く聞こえない」「少しだけ聞こえる」「全部聞こえる」という3パターンで「聞こえ方」を体験することができました。
VRゴーグルを装着して私が見たのは「小学校の教室に座って、男の先生が話しているのを見ているシーン」。全く聞こえないと何が起きているか一切分からずポカンとするばかり……。ちょっと聞こえると左右で誰か喋って教室中で爆笑が起きていることだけが伝わってきて、全部聞こえると何故で笑っていたかが完全に分かる……という体験をしました。
聞こえ方によって、同じシーンの感じ方がこんなにも違うとは!聞こえないと、「状況の把握」ができずに心細くなるのだな、ということを身をもって知りました。

VRゴーグルは、360度ぐるりと見渡せて、まさにその場にいるかのような感覚を味わえました。私が選んだ学校の他にも、カフェ、食卓、道路、などさまざまなシーンを選ぶことができます
最新テクノロジーでコミュニケーションを円滑に
「手話だらけの日」には、ろう者や難聴者に関連するさまざまなテクノロジーも紹介されていました。聞こえる私にとって「なるほど、こういうところで困るのか。こんな風に解決することができるのか」と、衝撃を受けました。
未来だ〜!と思って感動したのが、「YY System」のAiLENS(スマートグラス)の装着体験。
これ、会話内容をメガネに字幕表示してくれるメガネなんです。携帯電話のアプリを介して文字起こしされたものが、メガネにリアルタイムで表示されます。そのスムーズさにも正確さにもほんとうに驚きました。
「私は難聴で、会社で会議に参加する際に会話が聞きづらいことがあります。でも、このメガネをかければ相手の発言を文字でも確認できるので聞き間違いが減り、自信を持って自分の意見を述べられるようになりました」と担当の方が教えてくださいました。

見た目にはなんの変哲もないように見えるスマートグラス。拍手のマークや歌のマークもあり、視覚的に状況がわかる工夫も。「今日から販売開始なんですよ〜」とのこと!
「電話」でのコミュニケーションも大きな課題の一つ。
ろう者難聴者だけでなく、吃音など音声で話せない方達が、手話や文字を用いて、聴者へ電話を掛けたり受けたりできるコミュニケーション支援サービスも紹介されていました。
左は、日本財団電話リレーサービス。法律に基づいた公共インフラで24時間365日利用でき、110番・119番など緊急通報にも対応しています。右は、株式会社プラスヴォイスによる「代理電話サービス」。民間企業や、各種行政窓口とも連携しているほか「(電話でしか受付のできない)レストランや美容院の予約」といったプライベートな利用もできるのだそう。

「電話をかけなければ伝わらないシーン」をサポートする団体があることを、心強く思います
「みんなで一緒に舞台を楽しもう!」を合言葉に、誰もが楽しめる舞台づくりを目指して、舞台芸術を楽しめる環境づくりに取り組む、特定非営利活動法人 TA-net(シアター・アクセシビリティ・ネットワーク)のブースにも立ち寄りました。視覚・聴覚障害のある方もない方も、誰もが舞台芸術を楽しめる環境づくりを推進しているNPOです。
舞台を作る劇団はもとより、多くの劇場、公共施設でもこの取り組みは浸透しはじめているとのこと。
「先日は、木ノ下歌舞伎のアクセシビリティ公演を行って好評でした。落語の寄席に行ってみたい、という要望も多いんですよ。ほんとうは全ての舞台でこのような公演ができたらいいなぁと願っているところです」とスタッフのお二人は教えてくださいました。

「観劇アクセシビリティガイドブック」で具体的なサポート事例を読んだり、「どんな公演を見たことがあるか」というアンケートを読んだりしながら、思いをめぐらせました
子ども向けクイズラリーも
当日は、小学生以下の子どもたちが楽しめるスタンプラリーも開催されていました。会場内のあちこちに手話に関するクイズが張り出されていて、それを解きながらスタンプを集めていきます。こちらには森ノオトスタッフの小4の娘さんが参加。
「難易度はやや高めでしたが、大人の手を少し借りながらも最後まで楽しんで取り組んでいました!
最後のプレゼントは、自分の名前を指文字にして表した手話スタンプ。かえでの<で>の点々はどうするのかな?と思ったようで、スタッフさんに聞いて、<て>を2回並べて<で>になることを教えてもらいました。手話の面白さを感じたようです」とレポートしてくれました。

<かえで>の指文字をスタンプで押してもらったところ。自分の名前を手話で伝えられるようになりました!
ここでは紹介しきれなかったのですが、ほかにも会場では、おいしそうなお店、ろう者難聴者や聴者をつなぐ企業、手話の学びを深める企業のブース、絞り染めやコミュニケーションをテーマにしたワークショップもたくさん。熱気あふれる日となりました。
最後に
ろう者、難聴者、聴者が自然に混ざり合い、多様なことばや文化に出会う日に――。
そんな願いを掲げた2日間のマルシェ「手話だらけの日」には、聞こえ方の違いを越えて、それぞれの方法で会話や買い物を楽しむ人たちの姿がありました。
手話やろう文化をテーマにしたマルシェは、全国的に見てもまだまだ珍しい取り組みです。そんな場が、ここ横浜市青葉区で開かれたことを、地域の一人としてうれしく思います。
普段は音声で話す人が多数派のこのまちで、この日、この場所では手話を使う人が多数派でした。私はこのイベントで初めて少数派になる体験をしたのです。手話ができない不自由さや心細さを感じる中で、環境が変われば自分自身がコミュニケーションに困る立場になるのだと気づかされました。
しかし同時に、伝えたい気持ちさえあれば、手話や筆談、テクノロジーなど、様々な方法で私たちはつながることができる。そのことを、たくさんの人との出会いが教えてくれました。
「障害は人ではなく、環境によって生まれるものなんですよ」そう教えてくれた、めめ菓子工房の伊藤ホサナさんのことばが深く心に響きます。
ことばやコミュニケーションの違いを知ることは、地域でともに暮らすさまざまな人たちに思いを寄せることでもあります。「伝えたい気持ち」が、多様なアプローチできちんと届くまちであるために、自分にできることをこれから探していきたい。
ここで見た静かでにぎやかな風景を、私はこれからもずっと覚えておこうと思います。

※このイベントは終了しています
日 時:2026年6月6日(土)・7日(日)
場 所:アートフォーラムあざみ野(青葉区あざみ野南1-17-3)
入場料:無料
公式サイト:
https://shuwadarakenohi.memelab.jp/
Instagram:
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