学童保育施設の空き時間に開くおむすび屋さん「むすび家」のお店づくり
JR根岸線の山手駅のすぐ近くにある「むすび家」。学童保育施設が使われていない時間を利用して、おむすびやお惣菜、汁物を販売しています。店主の金成陽子さんにお店づくりへの思いを伺いました。

JR根岸線の山手駅は、元町・中華街がある石川町駅を大船方面に一駅先に行った場所にあります。

 

石川町駅方面へとつながる大和町通りの商店街がある他には、駅周辺は坂道と住宅街に囲まれている街です。

 

前年度から森ノオトでは東急田園都市線の「降りない駅に降りてみた」連載を行なっていますが、JR根岸線の山手駅もあまり知られていない「降りない駅」かもしれません。

JR根岸線山手駅

そんな山手駅の平日の午前中は学生たちでいっぱい。

 

わたしは今まで通勤・通学の時間に山手駅を降りたことがなかったので、小さい子から高校生までが改札前にごった返す光景にびっくり。

 

街周辺に小学校、中学校、高校などが密接していて、駅の改札を出てすぐ左側も、横浜市立立野小学校が目に入ります。

横浜市立立野小学校

小学校を横目で見ながら高架下の道を右に行き、ふぞく坂の入口付近にある青い建物にむすび家はあります。

 

 

学童保育施設の空き時間に開くおむすび屋さん

むすび家の外観。放課後学童保育施設「ヒルトップガーデンアカデミー」

実はこの建物、普段は民間の学童保育施設です。

むすび家は学童保育を運営していない、月曜日〜木曜日の8時〜14時(木曜のみ12時まで営業)の時間帯を利用し、お店をオープンしています。

むすび家店内

施設内は子どもたちの学び舎らしく、たくさんの本が並びますが、壁には工夫も。白の壁を基調に水色や青、サーモンピンクの壁があったり、よじ登って入れる穴があったり。

 

並んでいるテーブルと椅子は子どもたちに合わせて座面となっており、大人が座るといつも見る視点より少し低く感じられます。

 

カラフルな壁やテーブルと椅子など、内観全てが子どもたちのために工夫を凝らした、明るく楽しい印象を受ける施設です。

入り口すぐの右手を見るとテイクアウト用に購入できるおむすびとお惣菜が目につきます。

テイクアウト用のおむすびと惣菜

定番は梅・昆布・おかか・ツナマヨカレー・かつおゆかり・生姜おかか・鮭・明太子・味玉。

 

時間に余裕がある場合は、テイクアウトでも食べたいおむすびの種類を言うと、できたてを握ってくれます。

 

おむすびのこだわりは、お塩の代わりに梅酢で握っていること。できるだけ地域の食材を使いたいという思いから海老名のにこまる米や小田原の梅干しを仕入れているそう。

 

おむすびのラインナップは定番商品の他にも色々な変わり種が並びます。

 

「常連さんもいるので、毎日いろんなものが食べたいという声に応えたいという思いがあって、何これ?って驚いてもらえるような具材を出したいなって思って作ってます」と陽子さん。

 

自分が好きな味やおいしそうだと思う具材の組み合わせをイメージしながら、おむすびを作ってきたそう。

 

今まで出てきた変わり種おむすびを少しご紹介すると、ミートソース、メンマ、エビフライ+チリソース、キムチとクリームチーズ、ごぼうおかかなど、玉手箱のように何が入っているのかワクワクする工夫が感じられます。

 

むすび家はテイクアウトだけでなく、イートインも可能です。

おむすびと汁物(みそ汁または梅白湯)、からあげ、小鉢、たまご焼き、一口デザートがセットになったむすび家セットと、おにぎりと汁物、つけものがセットになったメニューが選べます。

 

そんなむすび家のメニューの中でも私のイチオシは、梅白湯とおむすびがセットになったものです。

梅白湯とこんぶのおむすび(通常のセットはつけものが付いてます)。お湯に燻した梅干しを入れて潰し、あられを入れていただきます

梅白湯は白湯に梅を入れて潰して飲むもの。梅の表面を燻してあるのと、カリカリの食感のあられが添えてあるのがむすび家流。

 

梅1個だけでも白湯を2、3杯飲めるほどの旨みがあるため、ぜひおかわりするのがおすすめです。そしてカリカリ食感が好きな私は、いつも最後のシメであられを入れて飲むのが定番です。

 

店内の空間や、おむすびや梅白湯のおいしさだけでも十分魅力的ですが、それと同じくらいに魅力的なのは、店主の陽子さんです。

むすび家店主の金成陽子さん

取材した日も新規のお客さんや常連さんなどが何人も来店し、お客さんとの会話が絶えません。

 

「コミュニケーションが好きなんですよ」

 

そう話す陽子さんは、お客さん一人ひとりに自然と声をかけ、初めて訪れた人もすっと輪の中に入れるような空気をつくっています。

 

「おむすびがおいしいから来る」というだけではなく「陽子さんに会いに来る」。

そんな常連さんが多い印象を受けました。

 

 

やってみたいという気持ちを大事にして形になったお店

陽子さんの「自分が興味の持ったことに対して、臆せずにすぐに行動する姿勢」は、お店づくりにも表れています。

 

もともと、食べることや飲食店、居酒屋などに行くことが大好きな陽子さん。

 

楽しくみんなで笑い合い、語り合える場所に惹かれて、自分でもお店を開いてみたいと思うようになったと言います。

 

1年9カ月前、そんな思いを行きつけの居酒屋のオーナーさんに話してみたところ「やってみたら」と背中を押され、朝の時間帯にお店を貸してもらえることに。

 

朝の時間帯の間借りだったこともあり、通学や通勤の方がターゲットになることや老若男女、手軽に食べられるものを想定し、おむすびを出すことに決めたと言います。

 

「朝の時間は忙しいから、朝ごはんを食べずに行く人もいるでしょう。そんな人にしっかりとご飯を食べられる場所があったらいいなという思いでした」

 

お客さんの口コミや商店街のつながりなどで、おむすび屋の評判は地域に広まっていきました。

 

ママ友との間で子どもたちにランチを提供してほしいという要望が高まる中、

「自分の子どもやほかの子どもたちも気軽に立ち寄れる場所でお店を開きたい」と思いはじめていたところ、学童保育施設のオーナーさんとご縁がつながったそうです。

 

そして現在は学童保育施設の空き時間を利用して、むすび家を経営しています。

 

「自然に思い描いていたことが、いつの間にかつながっていました」と陽子さん。

 

何気ない「あったらいいな」という思いに、ワクワクしながら直感的に「やってみよう」と軽やかに行動して形になったもの。

 

それが今のむすび家の気兼ねなく立ち寄れて、そこにいるだけで自然と顔がほころぶ、あたたかな雰囲気をつくっているように感じました。

 

 

忙しい人がほっと一息をつく居場所になりたい

2024年10月にむすび家がオープンしてから陽子さんの「しっかりとごはんを食べられる場所を提供したい」という思いは、現在の形態にとどまらず、本格的な定食の提供や夜の営業にも挑戦していきたいという方向へと発展しています。

 

その手始めとして、2月にはカレーのテイクアウト、5月からはワンナイト居酒屋にチャレンジしています。

カレーの写真とワンナイト居酒屋のチラシ(写真提供:むすび家)

ワンナイト居酒屋では、親子で一緒に楽しめる空間を目指していると言います。

 

「家で食べるごはんだと、テレビがあったり仕事帰りで忙しかったりとゆっくりと親子の時間が取れなかったりしますよね。ここでは、親子が目と目をしっかり見て向き合う時間になればいいなと思います。今は目の前のことに感謝して喜びながら、色々挑戦していきたいです」

 

自分の心に正直に「あったらいいな」や「やってみたい」という気持ちを大切にし、一つひとつ行動に移してきた陽子さん。

 

おむすびを食べに来る人、おしゃべりをしに来る人、親子で過ごす時間を楽しむ人。
その積み重ねが人とのご縁をつなぎ、今のむすび家という場所につながっています。

今後も陽子さんがつくる温かな居場所づくりが、山手のまちでどのように広がっていくのか楽しみです。

Information

むすび家

アクセス:JR根岸線・山手駅 徒歩1分

営業時間:月・火・水 8:00〜14:00 木 8:00〜12:00

定休日:金・土・日・祝

住所:横浜市中区立野73 立野ビル 3階

TEL :07040013993

Instagram:https://www.instagram.com/musubiya2024/

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この記事を書いた人
岡島知美ライター
2020年よりライターとして活動を始める。私生活では菜食、グルテンカット、エコ生活など、自身の心と体が求める食事や生活を実践中。取材を通して人々の思いや活動を知ることで、これからのことを考えていきたいと思っている。
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