ここで働くのだから、ここに住む人々に知ってもらいたい。株式会社東京コールドチェーン(食品卸売・レストラン事業)
横浜市営地下鉄・東急田園都市線あざみ野駅から徒歩10分。厚木街道沿いのレンガ造りの建物から、何やらにぎやかな声が聞こえてきます。ここは株式会社東京コールドチェーンの本社です。主に生協への食品の卸売やレストラン事業を営み、森ノオトの法人サポーターでもある同社は、地域に会社をひらくマルシェを定期的に開催しています。どんなマルシェなのでしょうか?社長・社員のみなさまにお話を伺いました。

企業が地域にひらくマルシェ

本社外観。新横浜元石川線沿いに建っています

2026年7月ある日の午前10時。株式会社東京コールドチェーン(以下TCC)のオフィス正面入口脇の道の奥をのぞいてみると、人だかりができていました。

今日はTCCが年に4回開いているマルシェ「楽チン♩マルシェinえとわ」の開催日です。

マルシェの会場であるスタジオえとわの入口

 

スタジオの中はこぢんまりと美しい空間。奥にはキッチンがあります

フロアに出された長机の前には、開始早々人だかりができています。近づいてみると、「訳アリセット販売コーナー」の張り紙が。賞味期限が近い冷凍食品が「もったいない」と販売されていました。

 

この日のラインナップはロールキャベツ、豆腐ハンバーグ、いかと生姜のかき揚げ、豚肉の大葉チーズ巻き、冷凍ぶなしめじ、てまり麩……。普段の食卓にも日々のお弁当にも活躍しそうな商品が並びます。

驚くのはその価格。ラインナップの中から好きな商品を三つ選んで500円!全種類買ってもいいかも?と思わず考えてしまいます。

 

その奥では小学生くらいのお子さんが魚釣りのゲームに挑戦。お母さん方が周りでその様子を見守っています。

ゲームでゲットしたポイントに応じて、TCCの食品がもらえます。魚釣りのほか、ピンポンカップインゲームも

マルシェで買い物を楽しんでいた方にお話を伺いました。「ポスティングのチラシでマルシェを知った」という声や、「いつも生協でTCCの食品を買っていて、気に入っているからマルシェにも来ました」という方が。

 

TCCは全国の生活協同組合(生協)を中心に、冷凍食品の販売を行なっています。

プライベート商品の販売ブースも。メンチカツ、アメリカンドッグ……見たことがあるという方もいるのでは?

 

奥のキッチンスペースではシフォンケーキとコーヒーの試食が。商品企画を行う安澤智恵子さんがブースに立っていました。社員さんとお話しできるのもこのマルシェならでは!

お買い物、試食、ゲーム……たくさんの笑顔があふれるこのマルシェをひらいているTCCは、どのような企業なのでしょうか。

 

 

食品・外食事業を展開。周囲とのよい関係が継続の要

株式会社東京コールドチェーンは、食品事業と外食事業の二つの事業を展開しています。

 

食品事業では、全国の生活協同組合(生協)を中心に冷凍・冷蔵商品の製造と卸しを行なっています。プライベート商品の開発と信頼できるメーカーからの仕入れの両輪で商品を揃え、食品添加物を極力使用しない商品づくりを実現しています。

お手軽パエリア風セットやおくらとなめこの山芋和え(茎わかめ入り)など、解凍したり温めたりするだけで本格的な味が楽しめる商品を揃えています(写真提供:TCC)

外食事業の核となるのは、東急田園都市線・梶が谷駅にあるレストラン「&YOU(アンジュ)」です。

「お客様と一緒に」を常に考え、食材を作る生産者の思いが届く店をコンセプトに丁寧な一皿を提供。山形牛のハンバーグや地場野菜のサラダといった看板メニューのほか、季節限定メニューも豊富です。

そのほかTCCのプライベートブランド商品やこだわりのコーヒーも購入できます。

TCC社長新蔵英仁さん

「TCCは1969年に創業し、私は三代目のトップとして就任二年目となります。かつて私たちは川崎市や横浜市港北区にいくつか工場を持っていて、地域との関係を築きながらここまで事業を続けてくることができました」

 

そう語るのは社長の新蔵英仁さんです。創業時、TCCは冷凍庫や食器、包丁など調理用品を主に扱う企業でした。

 

「一生物の道具を揃えていたんですけど、何しろ一生使えるから、販売数が伸びない(笑)。事業範囲を拡大して今のTCCがありますが、いいものを売りたいという気持ちは昔から変わりません」

 

商品開発では、なかなか食事作りに時間が取れない方も含めて誰にとっても扱いやすいよう、「自然解凍でOK」「レンジ調理できる揚げ物」など簡便さにこだわっています。そしてさらに、TCCには大切にしていることがあると新蔵さん。

 

「自分たちだけ利益を上げようとは思えないんです。いいものを作れるのは、メーカーや生産者の方がいてこそ。感謝の気持ちを持っていたいんです。そのためTCCでは卸売の際、自社の名前は出さずにメーカーのお名前で販売を行なっています。

私たちの周りにいる方々とよい関係を積み上げていくことが継続の要だと思っていますし、やっぱり自分たちだけがうまくいってもつまらないんです」

 

そんなTCCは、川崎市を拠点に活動するNPO法人みどりなくらしや生協、管理栄養士、料理研究家の方と連携し、老若男女問わずさまざまな方が食事やマルシェで集う「コミュニティキッチンCocoron from アンジュ」を運営しています。

あざみ野での地域食堂の様子を2021年に森ノオトで取材しました。レストランの一角を地域食堂の会場として提供し、食材も支援するTCC(現在はあざみ野から梶が谷へ場所を移動)。「キッチンを地域のコミュニティに育てていけたら」という当時からの思いを今も育て続けています

ここでやるのだから、ここに住む方々に自分たちを知ってもらいたい

冒頭でご紹介したようなマルシェは、そんなTCCの事業の一角を担っています。マルシェ運営を行う「えとラボ事業」は、新卒の若手社員を中心に構成されているそうです。

 

どのようなきっかけで事業が生まれたのでしょうか。

 

「2020年から始まったコロナ禍で中食需要が高まり、弊社の売り上げは伸びました。この売り上げをなんとか未来につながる形に還元したいと、人材育成に着手することを決め、新卒採用をスタートさせたのが2022年でした。

会社に入ってきた若い世代の意見を生かせる場をつくりたいと考えていた時、地域との接点を作る事業を任せようと思ったんです」と新蔵さんは話します。

 

今えとラボ事業を主に引っ張っているのは、新卒採用の一期生である千葉樹里愛さんです。

 

「えとラボ事業ではマルシェの会場にもなっている『スタジオえとわ』の運営と、マルシェ開催を主に行なっています。スタジオえとわはオープンキッチンと18坪のフロアがあり、一般の方にも貸し出しをしています」

写真は約二年前から開かれているインド料理教室の様子。元々別の場所でインド料理教室を開いていた講師の方が利用するようになったそうです。これまで10回ほど開催され、今ではすぐに講座の予約は埋まってしまうのだとか(写真提供:TCC)

「スタジオえとわでは、このインド料理教室のようなイベントを年に約10回、マルシェを年に4回開いています。毎回試行錯誤ですが、来ていただいた方に親近感を持ってもらえるようなイベントを目指して、工夫を重ねています」

 

そう話す千葉さんが力を入れているのが広報です。

 

「この辺りは住宅街のエリアです。子どもクッキングなど、私たちのイベントは親子向けも多いので、子育て世代の方へ知っていただけるように、住宅へのポスティングや近隣にある習い事教室への配架など、足を使って地域をまわっています」

千葉樹里愛さん。「新しいことに飛び込むのが好き」と快活に話します

「TCCに入る前の学生時代、地域や地域活動に興味はありましたが、どうやって入っていったらいいのか、きっかけをつかめなかったんです。

入社してえとラボに携わることで、対面のコミュニケーションにある温度感を知ることができました。今はSNSでコミュニケーションがとれる時代ではありますが、『近くに住む方にここに来ていただく』ことがうれしいんです」

 

ここでやるのだから、ここに住む方々に自分たちを知ってもらいたい。この思いは、話を聞いたTCCのメンバーに共通の思いです。「リアルでつながる場があることが大切」と話すのは、千葉さんと事業を進める営業部部長の小松宏人さん。

 

「この事業は売り上げを見据えているものではありません。他の業務との兼ね合いも、続けていくうえでは重要ですから、広げすぎてもうまくいかない。身の丈に合ったサイズを、今は見極める段階にあるかもしれません。

 

そして、私はえとラボ事業を地域との接点づくりとは違う文脈でも捉えています。人前で話す経験は社員の成長につながりますし、イベントの段取りはほかの仕事にも生かせます。社長も言っていたかと思いますが、私たちは私たちの周りにいる方との関係の中で成長しているんです」

 

事業の今後について伺うと、「これから入ってくる社員にこの活動を引き継いでいけるように、土台を固めていきたい」と千葉さんは答えてくれました。

小松宏人さん(写真左)。通常業務を支えながら、若手社員の挑戦をサポートしています

私たちの生活に身近な生協。そこに食品を卸すTCC。普段目立たずとも、実は私たちの暮らしに大きく関わっている……そんな企業が地域にはありました。

マルシェで企業の中の人に出会うことで、地域の経済活動が暮らしにぐっと近づくような手応えを、私は得ることができました。えとラボはこれからも、暮らす人と働く人がつながる場として、活動を深めていくことでしょう。

 

地域企業のまなざしを知ることで、まちが育つ選択肢がこれまでになかった方向へも広がっていくかもしれない。

 

市民と企業が互いに助け高め合いながらまちを面白くしていく……そんな光景を思い浮かべながら、私はオフィスを後にしました。

Information

次回「楽チン♩マルシェinえとわ」

日時:2026年11月14日(土)10:00~13:00

場所:神奈川県横浜市青葉区あざみ野南1-17-1

㈱東京コールドチェーン本社横※目印に“マルシェののぼり”がございます

事前申込(くじ引き参加)(申込11月6日(金)18時まで):

https://forms.gle/U3BFW5Zw2h14pito8

※マルシェは事前申込なしでお越しいただけます

 

 

株式会社東京コールドチェーン

https://www.t-cc.co.jp/

 

珈琲&レストラン &you アンジュ 梶ヶ谷店

https://andyoukajigaya.owst.jp/

 

インスタグラム(新卒採用)

https://www.instagram.com/tcc___recruit/

 

インスタグラム(えとラボ)

https://www.instagram.com/tcc__etolab/

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この記事を書いた人
佐藤沙織スタッフ/ライター
横浜市泉区生まれ、西区在住。そこに住む人の等身大の言葉でつくられた森ノオトの記事に魅せられてライターへ。身近な人の気持ちや様子をそっと書き残していけたら。読書と犬が好き。趣味のゴルフは毎回大乱闘。
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