わたくし・キタハラマドカは、大学卒業後、新入社員として地域密着型のタウン新聞の記者職を務め、青葉区を駆け回っていました。その後、環境系の住宅雑誌の編集者を経てフリーランスとして独立し、雑誌や生協の広報誌、環境ウェブマガジンの取材班など多数のメディアに関わってきています。
わたしが在籍していたメディアの多くは、独立した編集権のもとで運営をしており、取材相手に対する記事の事前確認はおこなわないことが通例でした。ジャーナリズム精神のもとで自主的な倫理基準に基づき、取材先との信頼関係を育み、あるいは権力の監視という機能を果たすべく、多方面への取材を重ね、独自の視点で問題提起をするため、記事の事前確認をおこなわないという方針をつらぬいていたと言えます。
もちろん、グルメ雑誌やライフスタイル雑誌など、いわゆる「商業誌」では、取材相手への記事の事前確認をするところもありました。請け仕事のフリーライター業としては、媒体の方針に合わせて対応を変えていました。それでも、新入社員時代や、転職して入った出版社での「ジャーナリズム精神」は、わたしの中の基本姿勢として、ずっと残っていました。
森ノオトの場合は、報道や検証を目的としているメディアではありませんが、独立した編集権のもとメディア運営をしています。記事を売る広告的な手法は取り入れておらず、NPOの趣旨に賛同してくださっている個人や団体からの会費収入で取材メンバーの交通費等の運営費用をまかなっています。
「青葉区を起点に、暮らしに取り入れやすいエコロジーを生活者の目線で発信することで、じわじわと循環型でやさしいまちづくりにつなげていきたい」
その思いをもとに、自ら資金を集め、運営をしている団体です。
森ノオトはNPOとして、地域の環境保全や環境問題の改善、食と農や子育てを切り口に地域の人々のつながりを活性化することを目的としており、その手段として地域の食や子育て環境の向上に取り組んでいる個人や団体の活動をメディアで紹介しています。
一方で地域に暮らす子育て世代の主婦を対象に取材術や執筆法・写真撮影術・メディアリテラシーを網羅した講座を開催しており、そこに参加する取材者を増やすことで地域社会との接点を持ち、社会参加への道を開こうという役割も果たそうとしています。
取材内容に関しては、リポーター自身の問題意識や関心、テーマ性を最大限に尊重し、編集会議で決定しています。取材を通じて地域の多彩な先輩方やお店に学び、かつ信頼関係を結びながらていねいに取材をおこない、継続的な関係性を育めるよう努めています。
現在、多くのメディアは編集の権利と同時に責任を手放し、取材相手にそれを委ねる姿勢が目立つようになってきていると感じています。森ノオトが注目を集めるにつれ、わたし自身も取材を受ける機会が増えてきましたが、新聞やテレビなどは、事前にどのような内容で掲載されるかについての確認はありません。そのかわり、記者の方は時に執拗なくらいに(笑)、電話などで事実確認を繰り返します。特に5W1Hの部分、名前、日時、場所、その時の思いなど……しっかり聞き込んできます。結果的に、自分が思うような報道ではないこともありますが、そのメディア自体のトータルの姿勢で伝えたいことの一助に、森ノオトが何らかの価値を与えているのだ、その役割にのっていると感じています。
森ノオトのような小さなメディア、かつ市民ライターの社会参加活動でありながら、ジャーナリズムに基づく姿勢をつらぬくのは、甚だ非効率でガンコである、もしかしたらバカバカしいかもしれません。編集長がリポーターに求めるハードルが高いぶん、リポーター自身も緊張感と責任感をもって、ていねいに取材にあたりますし、クオリティの高い記事に仕上げようと努力と研鑽を積んでいます。
わたし自身もこれまで、すべての記事に目を通し、事実確認をしながら、校正・編集をおこなってきました。それでも、不十分な面があり、時に誤字脱字も残ることもあることも事実です。今後も、よりいっそうの努力と緊張感をもって、記事の編集に取り組んでいかなければならない、と感じています。
この姿勢は、効率が悪いかもしれませんが、活動当初よりそこは曲げずにおこなってきました。そして、ほとんどの場合で、取材にご協力いただいた方々からたいへん喜ばれ、その後も良好な関係を築き今に至っているのも事実です。
森ノオトとしては、今後、より以上に取材のあり方を見直し、向上させ、取材にご協力くださる方々の地道な努力をすくい上げていけるよう、努力していくつもりです。どうか、読者の方々にも、今後も温かい目で見守っていただければ幸甚です。
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