小学生が考える「理想の暮らしとまち」って? エコDIY「こども建築ワークショップ」レポート
水色の外壁にスカイブルーの三角屋根。さわやかな外観の住まいは、庭にベンチがあって、近所の人たちが集っておしゃべりをしています。こども建築家が考える「理想の暮らし」は、いったい、どんなものなのでしょう? 8月24日にウィズの森で開催された「エコDIY夏休みこども企画」に、小学校2年生の娘と参加してきました。

 

夏休みも終盤の8月24日、森ノオト主催「エコDIY住まいラボ 夏休みこども企画 理想の暮らしとまち」をウィズの森(横浜市青葉区さつきが丘)で開催しました。この日集まった小学生は、2年生から5年生まで8名。それぞれ、家を建てたり、リノベーションした経験がある、建築に興味がある、リフォームのテレビ番組が好きなど、それぞれ建築に興味のあるこどもたちでした。

 

 

「建築に関わる仕事にはどんなものがある?」と、山川紋さんのクイズからスタートした講座。工務店、現場監督、水道工事屋さん、左官屋さんがどんな仕事をしているのか考える

 

講師はショセット建築設計室を主宰し、森ノオトのリポーターでもある山川紋さん。ウィズの森の玉置哲也さん、森ノオトの梅原昭子さん、横浜国立大学理工学部の学生さんと一緒に、準備を進めてくれました。

 

 

山川さんのレクチャーに興味津々のこどもたち

 

「みんな、どんな道やお店ができたら楽しいと思う?」

 

山川さんの問いかけに、こどもたちは模型づくりで答えを出していきます。

 

2人1組でペアをつくり、本屋さん、魚屋さん、お花屋さん、パン屋さんをつくります。決められた敷地に、事前に準備されているベンチや樹木を並べていき、ないパーツは学生さんオーダーしてつくってもらって(!)、理想の街並みをつくっていきます。

 

はじめに、2人1組でお店をつくった。こどもが「歩きたくなる街並み」はどんな風にできている?

 

パン屋さんでは、外のベンチでパンを食べられる。お花屋さんには食べられる実の木が植えてあって、実をたべながら花を選べる。お魚屋さんには池があって、池では魚が泳いで、その隣にブランコがある。本屋さんには外にオープンラックがあって、その前にあるベンチに座って本を読める。

 

お店の中に入らなくても、外に開かれた場にベンチがあって、みんなが集い、おしゃべりすることのできるまち。開かれたお店の連なりが、まちに人の「たまり場」「秘密基地」をつくるのですね。歩いてみたくなる開かれた場があることで、クルマで目的地に往復するだけでない、自然と人の交流がうまれる「エコなまち」がうまれるのだなあ、と思いました。

 

続いて、住まいに光や風をどのように取り込むかについてのレクチャー。みんなで方位磁針を使い、東西南北を指差して確認した

 

次に、山川さんが出したお題は「みんな、東西南北って、知ってる?」

 

住まいの設計でとても重要な、太陽の動きと、家の配置、窓のとりかたについて、方位磁石を使って学んでいきます。

 

太陽は東からのぼって、西に沈む。真夏は太陽が高くあがり、真冬は太陽が低くのぼる。それによって、家に入ってくる太陽の光の向きが変わります。

 

「夏は暑くなるから、なるべく光をさえぎる方がいいし、冬は寒いから太陽の光をいっぱい入れて、家を温かくしたいね」

 

「南に大きく窓を開けてそこから風が入ってきても、風が通り抜ける窓がないと、風の行き場がないね」

 

そんな山川さんの問いかけに、こどもたちはどうやって窓を開けていこうか、自分なりに考えて、スケールを駆使しながら模型に窓を穿っていきます。

 

「お姉さん、窓開けて」「お兄さん、屋根をどうやって貼り付けたらいいの?」と、こどもたちの質問やお願いに快く対応してくれる大学生ボランティアたち、大活躍!

 

家の全体像ができたら、次は敷地のどの位置に家を配置するかを考えます。太陽の代わりに懐中電灯を使い、南側の家が影にならないよう、なるべく敷地の北側に寄せて建物を配置します。

 

 

懐中電灯をあてて、南側の窓にどれだけ日差しを入れるか、また冬場の太陽高度だと家にどれくらい影ができるのかを確認

 

「次は、外を歩く人に、楽しいなと思ってもらえるようなお庭をつくってください」と言われて、パーゴラをつくったり、家の外にベンチを設けたり、可愛いお花柄のオーニングをとりつけたりと、それぞれが工夫を凝らしていました。南から照りつける太陽の光をさえぎるために、木を植えたり、南側の窓にグリーンカーテンを育てることに挑戦する子も。

 

わたしの娘も、最年少の2年生ながら、大学生のサポートを受けて、楽しそうに家のパーツを選び、組み立てていました。窓のスケール、外壁、屋根、庭の芝生やベンチ、グリーンカーテン、樹木、オーニング、人のパーツまで、細やかなパーツをすべて準備してくれたスタッフの努力に、驚きです……!!

 

 

「あと1分で終わりですよー」と声をかけられながらも「もっと時間がほしい!」「もっとつくりたい!」とこどもたちの集中力が途切れることはなかった。発表時間には、住まいへの思いを自分の言葉で伝える

最後に、「建築家になるには、デザインについて発表をしなければなりません」と、山川さん。

 

(1) 窓の開け方の工夫

(2) デザインの工夫

(3) お庭の工夫

 

この3点について、こども建築家たちが発表しました。

 

最年長参加者、小学校5年生の女の子は、「暑さをさえぎりながら光が入るように、窓を下向きに開けた。南は大きい窓が一つだとそこだけ暑くなるから、小さい窓も2つ開けました。お庭は、入り口までの道をきれいな折り紙で飾り付けして、家を(敷地の)端っこまで寄せていっぱい庭をとれるようにした」と発表。こっそり、「私の家はエコだからクルマは使わないんだよ」と、クルマのパーツを置かなかった潔い決断を教えてくれました。

 

はにかんだり、照れたり……でも、一人ひとり、自分のつくった家の模型を手に取り、誇らしげに語ってくれました

 

3年生の女の子は「(大きな窓、ひし形の窓、丸い窓など)全種類の窓を開けた。壁の色は私の好きな色にして、楽しい庭をつくりました」。彼女は家に帰ってからも工作の熱が止まらず、幼稚園の妹のためにお城をつくってあげたそうです。

 

4年生の男の子は「東側の朝日が入るような窓を開け、開閉を調節できる窓にした。壁の色は光が当たるから水色にして、庭はクルマを停めるところを砂利道にした」と、具体的かつ実用的な工夫を発表。双子の兄弟は「庭は木を植えて、(近所の)みんなが楽しめるようにした」と、地域に開かれた住まいをつくっていました。

 

 

梅原さんから参加証を授与されました。ウィズの森の玉置さんが無垢の木の端材でつくってくれて、木のいい香りがする

 

最後に、梅原さんから「こども建築家」の参加証を受け取って、誇らしげなこどもたち。こどもたちにエコな住まいとまちづくりを楽しみながら学んでほしいという大人の本気が、3時間に及ぶ講座でも集中力を切らさないほどのこどもの熱中をつくり、親子ともども満足度の高い時間となりました。

 

次回のエコDIY住まいラボは、9月11日(日)にパーマカルチャー界のカリスマ・四井真治さんをお呼びして土と庭の循環について学ぶ講座、9月25日(日)には青葉台の名建築・桜台ビレジでの住まいのリノベーションを体感するワークショップを予定しています。

 

こどもたちがつくった「理想の暮らしとまち」。すごく素敵で、ワクワクする

 

Information

【講座4】

9月11日(日)ソイルデザイン・四井真治さんにきく土の世界」

時間:午前の部 10:00-12:00・午後の部13:30-15:30

定員・参加費:午前の部のみ30組(1組3500円 森のなかま会員4000円)

午前・午後の部両方参加10組(1組4500円 森のなかま会員4000円)

会場:午前の部「四季の家」研修室1・2(青葉区地家町414)

午後の部「森ノオウチ」(青葉区鴨志田町818−3)

持ち物:筆記用具 午後の部参加者はお弁当・飲み物・タオルか手ぬぐい。

※午前午後とも参加される方は会場の移動がありますので、お昼をご持参ください。近隣でお食事することもできます。会場間の移動は歩いて15分ほど。森ノオウチは駐車台数が限られるので当日スタッフの指示に従ってください。

また、午後の部のみの参加のご用意はしておりません。

【講座5】

9月25日(日)桜台ビレジの「住まいの温熱対策」

時間:10:00-13:00 参加費3000円

定員:6組

会場:桜台ビレジ(詳細はお申し込みされた方に個別にお知らせいたします。田園都市線青葉台駅から徒歩15分・バスは「桜台ビレジ前」下車)。

このあとの講座は……

【講座6】

10月9日(日)KUMIKIprojectと学ぶ「基本の道具の使い方」

場所:森ノオウチ

参加費:3500円 森のなかま会員は3000円

土の講座を経て、秋は木材を使ってDIYするための基本的な道具の使い方を、再生可能な日用品を作りながら学びます。電動工具やノコギリ、釘打ち、失敗しながら学びましょう。

【講座7】

11月6日(日)「冬の断熱効率アップの基本」

場所:森ノオウチ

参加費:3500円 森のなかま会員は3000円

昨年、森ノオウチの一階の掃き出し窓に、木枠の内窓をつくりました。今年はもう少し規模の小さな窓や、玄関他の隙間風を防ぐ対策など、規模を小さくしつつ、効果の高い冬の断熱DIYについて、富士ソーラーハウスの大澤正美さんに再び学びます。道具の使い方のおさらいにもなる、講座です。

【講座8】

12月10日(土)「まちづくりの過去現在未来」

場所:たまプラーザ共創スペース(予定)

参加費:2500円 森のなかま会員は2000円

不動産ディベロッパーとして、日本や世界の家や、まちの盛衰を見聞きしてきた、株式会社リストの相澤毅さんを講師に、現在進行形のまちづくりについてお聞きします。エコロジーは「生態学」、語源は、ギリシャ語で、オイコス(家、すみか)+ロギアー(論、語ること)といわれています。今年のラボの成果を振り返りながら、みんなでエコロジーする時間です。

※エコDIY住まいラボは地球環境基金の助成を受けて開催しています。

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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