食の安全・安心を考え、日々の食卓を整える生活者たちが心配していることの一つに、食材の放射能汚染があります。でも、放射能はどのくらい危険なのか、食べる人の年齢や量など、基準はあっても価値観によってとらえ方は異なり、結果、「よくわからない」ということになりがちです。
原発事故によってもたらされた放射能汚染は、人間の手で止めることは不可能で、もはや後戻りができないほど世界中に広がっています。
目に見えないしにおいもない、景色も変わらないのに、何かが変わってしまった私たちの世界。カラダにどれくらい蓄積されているのか、そしてどれくらいの影響があって、いつそれが現れるのかよくわからないまま、不安になったり、気にせずにいたり、反応も両極端に分かれているように思います。
もう一つ、私たちの食卓に上る頻度が上がっている、よくわからない食べ物に、遺伝子組み換え食品があります。日本では遺伝子組み換え作物は栽培されていないから、安全でしょう? ……いえいえ、輸入された食物や飼料のうち、大豆やトウモロコシは多くが遺伝子組み換えされたものが大半で、お肉や卵などの畜産物を通じて日々口にしています。また、食品添加物の原料に遺伝子組み換え作物が使われていることもあり、菜種油に関しては輸入されているものの多くは遺伝子組み換えです。
日本で遺伝子組み換えの表示義務があるのは、主原料の重量のうち5%以上のものだけ。5%以下の副原料には表示義務がないので、ジャンクフードに含まれる食品添加物、揚げ物やお惣菜などの加工品、そして畜産物から、間接的に遺伝子組み換え食品を摂取していると言われています。食料自給率が低く飼料や食料の多くを輸入に頼る日本。遺伝子組み換え作物を最も口にしているのは日本人だ、という指摘もあります。
でも、すでに食べ物として流通している食べ物だから、安全なはずでしょう?
種子会社も「動物実験で異常が見られなかったから安全だ」として、世界中で遺伝子組み換え作物の栽培が進んでいますが……。
殺虫剤の成分が組み込まれている食べ物なんて、食べたくないよ! と、消費者の抵抗が根強いヨーロッパや、日本でも食の安全・安心を求める生協などでは、消費者運動や独自の調査が進んでいます。フランスで立ち上がったのが、分子生物学者のジル=エリック・セラリーニ教授(カーン大学)や、教授に賛同した学者・研究者・政治家・市民活動家たちです。
2年がかりでラットのエサに遺伝子組み換え作物、農薬を、幾つかの組み合わせで混ぜて投与し続ける長期動物実験が、2009年にスタートしました。現在流通している遺伝子組み換え食品の安全基準は、ラットに遺伝子組み換え食品を3カ月与えて問題ないという実験結果を元にしています。でも、ラットの寿命は2年。長期の動物実験の成果は、これまで明らかにされてきませんでした。
2年間、寿命が尽きるまで、遺伝子組み換え食品を食べ続けたラットに、どんな異変が、どのくらいの割合で起こったのか……。
『未来の食卓』や『セヴァンの地球のなおし方』で食の重要性を訴え続けているフランス人監督ジャン=ポール・ジョー氏は、この映画で、日本とフランスの原子力発電所にもカメラを向けています。
原子力と遺伝子組み換え。20世紀が生んだ新しいテクノロジーは、私たちの生活にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。映画が映し出す「3つの共通点」とは……?
公開されるやいなや、ヨーロッパ中に衝撃と話題を巻き起こしたこの映画、6月8日(土)より、渋谷のアップリンクで公開されます!
森ノオトエリア在住で、インタビューもした遺伝子組み換え作物の専門家・安田節子さんのトークは6月9日(日)!
私たちが日々しつらえる食卓は、未来につながっています。どんな未来を選ぶのかは、私たち次第―。
『世界が食べられなくなる日』
監督:ジャン=ポール・ジョー
製作:ベアトリス・カミュラ・ジョー
ナレーション:フィリップ・トレトン
パーカッション:ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ
2012年/フランス/118分/カラー
上映時間等は、公式サイトをご覧ください
http://www.uplink.co.jp/sekatabe/
また、映画の公開に合わせて、食にまつわるドキュメンタリー映画を一挙上映します。
【食べもの映画祭特集ページ】
http://www.uplink.co.jp/movie/
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