遥光の家 namaotoプロデューサー・新谷竜輔さんの自宅兼事務所
namaotoのプロデューサーとして知られる新谷竜輔さんが「遥光の家」(ようこうのいえ)と名付けた自宅兼事務所。新谷さんが内装インテリア企画を担当し、ウィズハウスプランニングが建築を、ウッディハートが家具を、庭之持田園が外構を手がけ、地元在住カメラマンが撮影……と、青葉区で活躍するメンバーの力を結集した有機的な住宅が誕生しました。

モダンな印象ながら土と木の温かみがある住まいの背後に、恩田の森が控える。中国・万里の長城や奈良・法隆寺の塀の壁にも使われている技術「版築(はんちく)の壁」と呼ばれる土を突き固める技術を意匠的に取り入れた

あかね台から子どもの国駅方面に伸びる緑深い谷戸と新興住宅地にはさまれたメイン通り、コンビニエンスストアの裏手にモダンな外観の木造住宅が建っています。家のファサードは、濃いグレーに塗装され引き締まったモード感と、まるで地層を思わせる「版築の壁」、そして無限の広がりと奥行きを感じさせる植栽がひときわ目を引きます。きりりと引き締まったシャープな表情と、有機的なやさしさが同居するこの住まいの名は「遥光の家」(ようこうのいえ)。

 

「恩田駅徒歩3分、駅近生活を満喫していますよ!」

 

いつものように明るく迎え入れてくださった新谷竜輔さん。こどもの国線恩田駅からすぐ、一方で緑深い恩田の谷戸までも徒歩2分という、自然と都市が共存しているこのエリア。「青葉区でちょっと郊外」を条件に土地を探し始めたのは、昨年春過ぎてからのことでした。

 

「ウィズの森の玉置さんに出会ったのは、昨年青葉区内各所で開催された東日本大震災の復興支援イベントでライブを担当した時に、バックパネルをお願いしたのがきっかけで……」。その後、namaotoで交流を深め、春先には「よし! ウィズで家を建てよう」と即決したというスピード感がいかにも新谷さんらしい。

 

「家具一つでインテリアが決まる。だから家具も空間をつくる時からデザインに組み込もう」と、namaotoの熱心なファンでもあるウッディハートに家具を任せたいとも考えていました。

 

「青葉区にあって、青葉区を愛する会社の人たちの力を結集した空間をつくりたい!」

 

自宅兼事務所を建てたいと感じた瞬間、新谷さんのプロデューサー魂のもう一つのスイッチが点灯しました。新谷さんの多彩な経歴は以前森ノオトのインタビューでもお伝えした通り。namaotoの成功で音楽に注目が集まりがちな新谷さんですが、会社のメイン事業は「デザイン」で空間デザインも得意分野の一つなのです。

和の自然素材とメタリックな質感が調和した1階事務所。デスク回りの窓障子は人間国宝の手漉き越前和紙。外からの光をやわらかに透過し空間に奥行きを与える

和の重厚な趣を感じさせる石段を上り、玄関エントランスへ。1階は新谷さん夫妻が経営する会社セミ・チャームド・アソシエイツの事務所です。落ち着いたシルバーで描かれた竹の壁紙が壁面をぐるりと巡り、ソリッドな質感のアカシアの床材、引き締まった空間に華やぎを与えるシャンデリア……モードな空間は集中力が高まりそう。

 

「1階が事務所というのは最初から決まっていました。音響の機材やアーティストのCDが増えてきていて、また弊社のお客様との打ち合わせスペースでもあるので」

1階事務所から連なるように竹のモチーフが外に伸び、黒竹を背景に日本庭園の象徴ともいえるつくばいが水の音を奏でる。「持田さんには、“設計図はいらない。好きなようにやってください”とオーダーしたんです」。果たして、日本の伝統美とモダンが融合する庭ができあがった

庭からウッドデッキに出ると、室内から連続するような黒竹があしらわれ、茶室からの眺めを思わせるつくばいも。緑を揺らす風の音、水の音、そして人の声と心地よい音楽が一体となり、イマジネーションもふくらみそうです。庭を手がけたのは庭之持田園の持田智彦さんで、森ノオトリポーターの持田三貴子さんのご主人。出会いは、森ノオトが主催したnamaoto in ウィズの森Vol.2なので、これはうれしいコラボですね!

 

デスクの前は障子紙がピンと張られて、緊張感が高まります。新谷さんのご実家がある福井県は越前和紙の産地ですが、この窓障子は人間国宝の方に特別に漉いていただいたのだそうです。

「2階はウッディハートさんのショールームですね(笑)」と新谷さん

2階は新谷さんファミリーの居室です。広々としたリビング+ダイニング+キッチンと、寝室のシンプルな1LDKです。キッチンの食器棚、ダイニングテーブル、ソファ、テレビボード、子どもの椅子はすべてウッディハートの家具で揃えていて、ウィズハウスプランニングの手がける自然素材の内装と、無垢材の家具の黄金律で空間がナチュラルに統一されます。

 

2階のモチーフは「藤」で、1階と同じくシルバーで藤が描かれた壁紙が寝室に、リビングの無地の壁にも必ず淡い色が入っています。

 

奥様・佳江さんも一緒になって、新谷さんとともに膨大なサンプルを見ながら、色や柄を一つひとつ吟味し、決定していったと言います。

 

「僕の頭の中には、常に“こうしたい!”というビジョンがあって、まずはそれを妻に説明し、理解してもらって動き出す感じですかね(笑)」

 

新谷邸はエッジの効いたデザインながら、すべて自然素材、ウィズ仕様。静岡県天竜地方産の杉・檜を構造材に、壁は珪藻土、塗料もドイツの自然塗料を用いています。家の断熱性能を左右する開口部は複層のLow-Eガラス(特殊な遮熱ガラス)で、建具もすべて職人の手になるものです。

 

可変性の高い間取りにしてあるのもウィズのスタイルと言えます。1階の広々とした事務所空間も2階の寝室も間仕切りできるようになっていて、いざとなったら居室を増やすことも。新谷さんファミリーは3月に赤ちゃんが生まれたばかりで、子どもの成長に合わせて部屋を増やしたり、暮らし方を変えることができるのも、木造住宅の醍醐味と言えます。

 

「この家は、ウィズのモデルハウスとしては新しいタイプのデザインかもしれません。でもその分、ウィズの家の守備範囲も可能性も広がるというか……。何より私たちがウィズの自然素材の家に住んで実際に住み心地や魅力を語れるので、ぜひ気軽に遊びに来ていただきたいですね」

新谷竜輔さんと奥様の佳江さん、長女の遥花ちゃんと3月に産まれたばかりの優花ちゃん

いま新谷さんの目は「青葉区で、地域を元気にするコミュニティビジネス」をいかに盛り上げていくかに向けられています。

 

青葉区は、都心まで1時間以内で通える立地のよさと、里山や農地が豊かでまさに「都会と田舎のいいとこ取り」。新谷さんがプロデュースするアーティストたちも青葉区の魅力に引き寄せられるように、青葉区でのライブ、そして青葉区の人や自然とふれあうことを楽しみにしていると言います。

 

地元に暮らすさまざまな才能を、音楽や空間で結びつけ、「このまちで多様な仕事を創出していきたい」ーー。いまや青葉区ですっかり浸透したnamaoto。夢のステージ第二弾は、自宅兼事務所「遥光の家」からスタートします。

バスルームは間接照明でムーディーに。タイルの色は落ち着いたグレー

 

【madoka’s eye】

優秀なコンダクターの一振りで、名演奏家たちがそれぞれの個性を生かしながらも全体が美しく調和して、豊かなハーモニーが響いてくる。「遥光の家」はまさにそんな住まい。誰でも見学可能なのとアクセスもしやすいので、ぜひ自然素材の温もり、無垢材家具の質感、自然の造作美の庭、そして空間全体を統一するエッジの効いたデザインを感じに遊びに行きませんか。

 

「早く引っ越して、モデルハウスとしての機能を強化したいですね」と、竣工直後には次を見据えている新谷さんのスピード感には驚かされます。話を聞くたびに「そうそう、思いは同じ!」と固い握手を交わし、再会する時にはさらにどんどん進化しているので、次にはどんなワクワク・ビックリが青葉区で起こるのかな……と楽しみにしていますよ、新谷さん!

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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