森ノオトを奏でる人たち(4):清水朋子さん 「森ノオトで育てたタネを自分のエリアで蒔き、耕したい」
この11月で『森ノオト』は創刊10周年を迎えます。森ノオトにかかわるさまざまな人たちを通して、森ノオトの歩みを振り返るインタビュー集。第4回は、まちの小さな集会所「Glänta(グレンタ)」を主宰する森ノオトライターの清水朋子さんです。食べることやつくること、ワインに焼酎、チーズと、森ノオト一の食いしん坊ライター、朋子さん。故に、これまで手がけてきたおいしい記事は、食のプロとしての目線や深みがあり、ファンがとても多いのです。森ノオトでは料理アシスタントとして、また自宅を撮影スタジオとして提供したり、森ノオトになくてはならない存在です。

「暮らしにスタイルがある人」というと、森ノオトメンバーの中、いや私の周囲を見渡しても、朋子さんほどその言葉がしっくりくる人はいません。

随所にこだわって建てた住まい、その一角には人が集う集会所であり、店主となって時々喫茶を提供する「Glänta(グレンタ)」があります。

Gläntaは、朋子さんのお眼鏡に叶い集まってきたこだわりのアンティーク家具が並び、さりげなく飾られた小物や本など細部に至るまで、全てが朋子さんの愛するものばかり。

光の差し込み具合まで計算されたかようなこの土間作りのアトリエ「Glänta」に来ると、あまりの美しいしつらえに、ため息が出る(写真提供:Glänta)

 

朋子さんが2014年に森ノオトにライターとして参加し始めた時は、まだ家も完成しておらず、Gläntaは構想段階で名前もありませんでした。

でも、「おうちカフェではなく、森の中の小さな集会所みたいなものがいい」と雑談のように語っていたイメージが、みるみる形になっていく姿を目の当たりにして、今私が見ているものは、彼女の頭の中でずっと温めていた場なんだなと、その思いを体現する行動力に感心しました。

 

このGläntaのこと、子どもとの暮らし、日々思うことを丁寧に発信するブログやSNSから、気づきや刺激を受けることもしばしば。朋子スタイルを確立しつつも、こだわりすぎない柔らかさ、フットワークの軽さがあり、その肩肘張らないライフスタイルは、今や森ノオトみんなの憧れの存在です。

 

朋子さんと私は、森ノオトではいわゆる「同期」です。

2014年のライター講座で知り合いました。

清水朋子さん。森ノオトには2014年からライターとして関わる。今は、自宅の一角でまちの小さな集会所「Glänta」を主宰しながら、時々手料理を振る舞う

 

―― ライター講座を受けようって思ったきっかけはなんだった?

 

朋子: 森ノオトは、長女(小学6年生)が赤ちゃんの時から見ていて、近くにこんなことを考えている人がいるんだ!とびっくりした。「オーガニック」とか「エコ」とか「サスティナブル(持続可能)」とか。地域を大事にしていて、エネルギー問題とかそういうところもしっかり謳っている。しかもお母さんたちが中心になって発信しているものを、それまでのメディアで目にしたことがなかったし、自分の普段の生活には入ってこない情報だったから、隅々まで見て、面白いなあ、知りたい情報がいっぱいあるなあと思ったのを覚えてる。HPに書かれている森ノオトの理念まで読み込んで、同じ年代の人たちでこんな思いを持ってやっているってすごいなあ、って。

 

森ノオトの記事の中に「ライター養成講座を開催しました」というのがあり、「あおばを食べる収穫祭」に行ってまどかさん(森ノオト理事長の北原まどか)に唐突に声をかけ、そのあと直接フェイスブックを使って問い合わせをしたの。今行かなきゃ!って思って。

その時は、興味本位で。文章を書くことに興味があったから、森ノオトに入る入らないは別として、とにかくライター養成講座に興味があったの。

 

近所にできたお花屋さん”空の箱”さんがとても気になっていたからとにかく書きたくて。これを機会に色々聞けるな、と思った。最初の卒業レポートで空の箱さんに取材をして記事を書いたら、面白い!それで、ぼーっと火がついたんだよね。

 

――『たまプラーザの100人』の取材担当もしていたよね?

 

朋子: あれは、まどかさんから声をかけられて、興味があったし食べ物だったからやりたい!と思って編集サポートや、料理研究家のサカイ優佳子さんの取材を担当したんだけど、気軽に引き受けてしまい、本当に大変だった!まどかさん、サカイ優佳子さんのプロ二人との仕事をして、よく行ったなあと今になって思う。超緊張して、その緊張は終わりまでくだけもせず終わった。ハードだったなあ。

『たまプラーザの100人』は、次世代郊外まちづくり住民創発プロジェクトで「本づくりをまちづくりにつなげたい」とクラウドファンディングで資金調達をして2014年に森ノオトが出版。この時に編集初体験レポートも手がけた

 

朋子: そのあとは、自分の興味のあるところに絞って取材していたんだよね。

 

でも、自分が書いた文章がそのままではなく、ちゃんと時間をかけて校正をしてもらえるのが嬉しかった。「なんていい文章になったんでしょう!」「自分の言いたかったのはそう、これ!」って(笑)

 

――朋子さんが取材した記事は、パン屋さんの「ベッカライ徳多朗」「パナデリアシエスタ」「丘の上のパン屋さん」のほか、ソーセージの「シュタットシンケン」納豆の「株式会社カジノヤ」などおいしいそうなお店が多い。

そのほか、ワイン好きが高じて「エスポアしんかわ」や、カフェの「etana」「book&cafe Nishi-Tei」、こだわりの「うつわ ももふく」眼鏡屋さんの「Local」

子どもとの暮らしから興味を持って取材した自然を体験するソダチの森の「子どものワークショップ」「子どもの1日お仕事体験」なども。

 

こうやってあげてみると、朋子さんの書いた記事で知り、今や私の生活になくてはならないお店がなんと多いことかと驚きました。

 

――私も、文章を勉強してみたいなと気楽な気持ちでライター養成講座に申し込んだけど、当初は自分の暮らしが、果たしてエコであるかどうか、ペットボトルを持って講座にいった時には机に出していいのかと不安になったり、ちょっと身構えちゃったところがあったなあ(笑)

 

朋子: そうそう!でも、入って見たら、エコ意識が高い人もいれば、そうでもなくフラットな人もいる。自分みたいな人もいるし。ちょっと安心したよね。

 

今は、気をつけてはいるけど自分ができることをやればいいかなって感じ。これをしなきゃいけない、洗剤はこれじゃなきゃいけないっていうのは嫌、自分が使っていて気持ち良いかどうかを基準に、必要最低限の変なものが入っていなければいい。

母親がそういうことにとても熱心で、私は毎日発芽玄米食べて、市販のお菓子を食べたことがなかった。おやつといえば煮干しと氷砂糖。残った白いごはんに砂糖ときな粉をかけて食べるのが定番のおやつだった。

ポテトチップスやパンも全て手作り。友達の家で食べるスナック菓子がおいしい!と思いながら、家にはなくて。今思うと、全て手作りで、それがおいしかった。その体験が自分の中に植え付けられている。

 

「Glänta」は、スウェーデン語で”木々が生い茂る森のなか、そこだけ陽の光がさしている陽だまりのような場”という意味(写真提供:Glänta)

 

――Gläntaができてから森ノオトとの関わり方もまた変わったよね。

 

朋子: 2015年の終わりにGläntaを始めて、そっちを軌道に乗せたいと、Gläntaのことを考えている時間が多くなったんだよね。

自分の行きたいところだけ行って、書きたいものだけを書く、これはやりやすかったけど、だんだんとあまり書いていないのにライターとしていていいのかなって思い始めて。ライター意向調査アンケート(年に一度森ノオトライターに今後続けたいかどうか、どういう方向性でやっていきたいかを問われるもの)ができたことはすごくよかった。それで一度立ち止まって考えられる。

「今は記事を書きたいかというとそうでもない、でも書けるときには書きたい、そんなのでもいいのかな?」とまどかさんに相談した時に、「嫌なことはやらなくていい、いいとこ取りでいいんだよ」と言われ、すごく安心して。いていいんだなって思えた。

 

ガンガン書いていた時期を経て、今一番いい距離感だなあと思う。どっぷりは行かない、でも、情報としては見ている。

 

Gläntaを森ノオトの撮影で使わせていただくこともしばしば。最近では、青葉区が発行した『あおば野菜のレシピ帖』の編集を森ノオトで手がけるにあたり、レシピの撮影スタジオとしてお借りし、料理サポートスタッフとしても活躍

 

朋子: 森ノオトでは、自分で企画するというよりは、サポート系に入るのが楽しい。

頭を使うのであればプライベートに使わなきゃっていうのが今はあって。あまり手を出しすぎると頭の中がまとまらなくなってしまう。

 

―― Gläntaって、稼ごうと思ったら、そうできる。もっと毎日開いて、カフェとして切り盛りしたらもっと稼げる。でも、朋ちゃんはそうはしないよね。不定期でしかお店を開けていないし、子どもの予定や自分の生活がメインで、そっちの予定が入っていたら断っちゃう。そのGläntaの在り方ってすごく憧れる。

 

朋子: 飲食の営業許可もあるし、バザーとかやると楽しいんだけど、ここ数年続けてみてわかったのは、単純にみんなと何か作っているのが楽しいんだということ。儲けを出さないといけないとか考えず、趣味の延長線でこういう場を作るというのが楽しいんだな、と。教室や講座となると最低限これをしなくちゃいけないとか責任が出てくる。

ここは自分が楽しく暮らすためにあるものだから、赤字になってはいけないけど、ちょっとお小遣いが入る程度で、だから開けるペースについてもやれる時にやるというのが一番あっていると思っている。

 

「ゆとりを持ちつつ、Gläntaをやりつつ、あくまでここは私ペースでいいんだと思えた。だから、Gläntaは仕事ではなく、楽しいことしかしない場所」と言い切る朋子さん

 

―― いま暮らしの中で一番大事にしていることって何?

 

朋子: 「人の話を聞く」ということかな。

昨年、PTAの役員をやって、それまで全く知らなかった人たちと出会って、話せば地元にもこんなふうに共感できる人はたくさんいるんだなあということを知り、それがとても嬉しかったの。

今まで森ノオトに行けばエコが好きとか興味がある分野が一緒という人がいたけど、身近にはいないと思っていたんだよね。でも、実際蓋を開けてみたら、森ノオトが好きな人が、森ノオトには入っていないけどここにいた!っていう感じ。向かっている方向が一緒とか、考えていること、大切にしていることが一緒とか。

 

―― 朋ちゃんが、PTAの役員になって活動していることをSNSで発信していたのをよく見かけて。PTAのことって、大変とか、どうやったら逃れられるかとかネガティブな話はよく聞くけど、朋ちゃんはとても楽しそうで。向き合い方が前向きで素敵だなって思ったよ

 

朋子: 子どもたちが幼稚園の時は何もしなかったんだよね。長女が小学校に入った時も。だから、下の子が小学校に入ったらやる!と決めていて。

最初は大丈夫かな?と心配だったけど、一緒に作業しているうちに、同じことをやればやるほど仲間と感覚が似てるなっていうのをすごく感じたんだよね。趣味が違う、好きなこともそれぞれ勝手なことをやっているし、仕事もしていたりいなかったり。でも「いいね」って思えるポイントが一緒だった。それがすごく大事で。

そのうち、講演会とかイベントとか一緒に行くようになったり、自分が自分らしくいられる場所が一気に広がった。

 

これは一歩自分から踏み出して話しかけてみないとわからないことだったんだよね。先入観もあるし心がけていることはあるけれど、それはそれ。他人はどうなんだろうって聞くのが今は面白い。同じ意見ならいいんだけど、でも違ったら違ったでそういう人もいるんだなあって思う。今は、自分の中に風を通すというか……風通しを良くしておきたいと思っているの。

 

―― 近所でそういう自分の居場所を見つけられたっていいね。

 

朋子: 小学6年の長女が学校でSDGs(国連が2015年に定めた「持続可能な開発目標」。Sustainable Development Goalsといい、国や地方自治体、企業や市民団体、学校教育に至るまで、世界をつなげるキーワードとして広がっている)を習ってきたの。「この中からいくつかやる、これとあれをやる」って。SDGsって言葉では聞いたことがあったけど私はよくわかっていなかったから、一緒に見てみたら森ノオトがやっていることとSDGsが全て当てはまる。「森ノオトってSDGsそのものだ!それは今学校でも取り組むようになっているんだ!」って気づいてびっくりした。

 

―― 世界のこととローカルって、つながっているんだね。

 

朋子: 森ノオトってそもそも地域を大事にしているよね、でも青葉区といっても、拠点のある青葉台がどうしても濃い気がする。それはそれでいいんだけど、やはり自分の住んでいるエリアで耕していきたいっていう思いがあって。

事務所のある鴨志田町は車では近いんだけど、歩いていけない。学区も違う。森ノオトが生活の中心になっていた時期を経て、今やっぱり近所の歩ける範囲に森ノオト的なコミュニティがあって、子ども同士仲良くなったり、安心して預けられたり、話せる友達がいるというのがいいなって感じるんだよね。

今は、自分の住んでいるところにエネルギーを使いたいなって思っているの。

 

昔は「将来」や「未来」についていろいろ考えて計画して実行していくやり方が好きだったという朋子さん。その夢が実現してきている今は、将来よりも「今」が大事と気づき、それを日々大切にしていきたいと、考えている

 

―― 森ノオトと関わることで感じた居心地の良さ、それを自分の暮らすエリアでタネを蒔き、自分で耕してつくろうという、しなやかでありながらバイタリティのある朋子スタイルは、ある意味森ノオトの理想形のように感じます。

齋藤 由美子
この記事を書いた人
齋藤由美子ライター/スタッフ
森ノオトの事務局スタッフとして、主にAppliQuéのディレクションを担当。神々が集う島根県出雲市の田舎町で育ったせいか、土がないところは落ち着かない。家では「シンプルな暮らし」関連本が十数年にわたり増殖中。元アナウンサーで、ナレーターやMCとしての顔も持つ。小1女子の母。
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