5月のある雨の日の昼下がり。外はむわっとした湿気なのに、ウテロの店内はさわやかな空気で満ちています。
ウテロ(Utero)とは、スペイン語で「子宮」という意味。自然素材の心地よい空間に包まれ、赤ちゃんを抱えたお母さんたちが、おいしそうにおむすびを頬張っています。
ウテロは今年2月にたまプラーザにオープンしたママカフェです。働いているスタッフはもちろんみんなお母さん。しかも子ども同伴! お客さんに給仕をしながら、「ママー」と声をかけられれば我が子を抱き寄せて。赤ちゃんをおんぶしながらキッチンに立つ強者もいます。
ウテロの店長の伊東志生美さん(通称:いっつん)は、「この場所ができていちばん喜んでいるのは、もしかしたらスタッフかもしれません。子育てをしながら、少しでも社会の役に立ちたい、自分の力を発揮したいと思っている女性たちが、ウテロのサポーターとしてここに集っています」と話します。
ウテロで出すメニューは、基本的には酵素玄米のおむすび(ドリンク又はスープ付きで1000円、単品700円)、ナチュラルスイーツ(ドリンクつきで800円、単品500円)のみ。「このメニューに壮大なコンセプトがあるんです」と伊東さんは言います。
確かに、ランチを頼んでおにぎり2つと漬け物、スープで1000円という価格は、驚くほど高く感じます。
しかし、食べてみてその味に納得。さらにレシピや材料の物語を聞けば、「ああ、この価格が真っ当なんだ」と思えるから不思議です。
お米は伊東さんの実家でつくっている無農薬無肥料の自然栽培のお米、野菜は徳島の自然農法家・小林忠さんのもの、そして醤油などの調味料はたまプラーザのエコロジーショップ礎波(そわ)で取り寄せたものです。
酵素玄米は小豆と玄米を高温で炊き、3日間発酵させることで酵素が発生して玄米の固い殻を破り、もちもちでやわらかく消化がよくなります。デトックス効果もあるそうです。
伊東さんは「むしろ、食材の値段が安すぎることにこそ意味があるんです」と種明かしをします。
伊東さんは月2回ほど金曜日に「いっつんのキッチンラボ」という教室を開催し、そこでマクロビオティック(玄米菜食の一種)をベースにした独自の食理論を伝えています。
味噌や醤油などの基本調味料の成り立ちを考えると、1リットル1000円という値段は妥当で、それがスーパーなどではたったの200円で売れるようにするには、何がなされているのか。その裏側に関心を持つことが大切で、「安さと引き替えに削られているものは何なのか、考えてほしい」と伊東さんは話します。
「ウテロのおにぎりが、本物の野菜、調味料のあまみやうまみ、美味しさに気づくきっかけになれば」。
だから、ウテロは単に食べ物とママの居場所を提供する場所にとどまらない、新しい価値観や情報を発信するコンセプトカフェと言えるのです。
##写真
今後の構想は、ウテロを「ママの夢がかなう場所」にする、ということ。ウテロの運営は、誰でも参加できて、誰でもやりたいことを提案できる。ここはみんなでつくっていく場所なのです。
「子どもたちは地球の未来であり、希望そのもの。お母さんの笑顔は子どもの幸せのもと。子育てが楽しく、ハッピーになれば、世界は変わる」
キタハラ’s eye
いっつんの話の一つひとつに共感しながらの取材でした。スタッフとしてウテロを運営するママさんたちは皆同世代、それぞれがプロフェッショナルで、自分たちの力を見事に輝かせている様はまぶしく、とても美しかったです。いっつんに「せっかく子どもと一緒に来られるカフェだし、酵素玄米も子どもが食べられるものだから、キッズメニューをつくってほしい」と提案したら、「それ、やりましょう」と即決。このフットワークの軽さと柔軟さは、女性ならではですね。
【2017年4月現在、閉店しています】
Utero(ウテロ)
住所:神奈川県横浜市青葉区美しが丘2-19-6 ULUOS1階
TEL:045-905-1120
OPEN:10:00〜16:00(15:30LO)
営業日:カフェは月、火、木、ヒーリングスペースは月、火、木、金
席数:テーブル10席、カウンター3席
駐車場:あり
アクセス:東京田園都市線「たまプラーザ」駅より徒歩5分 →Google Mapで見る
http://02utero.jimdo.com/
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