いのちの糧となるパン、いただきます。……鶴川・CAFE UTOKU(カフェ・ウトク)
酵母は生き物、いのちそのもの。「日々の糧になるパンをつくりたい」。そんな想いが込められたパンは、決して派手ではないけれど、かみしめるほどにふわっとうまみが口のなかに広がります。鶴川街道沿いにあるCAFE UTOKUにおじゃましてきました。

UTOKUの店内。コンクリートブロックの内装に、有機的なアンティークの家具が絶妙にマッチしている

 

 

粉と水とイーストを機械に入れて「スイッチ・ポン!」。家庭用炊飯器のように普及が進むホームベーカリーで、誰でも美味しいパンが焼けてしまう昨今。でも、時々無性に食べたくなる、固くて味わいのある天然酵母パンは、「どうしたってあの店の味じゃなきゃ!」という固定ファンがいる独特の分野です。

 

鶴川街道沿いにあるCAFE UTOKUは、天然酵母パンとコーヒー、そして雑貨のお店。UTOKUの看板メニューである天然酵母のカンパーニュは、どっしりと重みがあって、食べるほどに口のなかでやさしいうまみが広がってきます。毎日食べたくなる、ごはんのようなパンとでも言えばいいのでしょうか。

 

パンとスープのセット(1150円)。カンパーニュのトーストと、フムス(ひよこ豆のペースト)、スープ(この日はキャベツともちあわのスープ)、そしてドリンクがつく

 

オーナーの熊谷典子さんは、「天然酵母、しかもストレート法でつくるパンは、温度や湿度によって発酵が左右されるので、酵母や生地と対話しながらつくる日々です。だから飽きないし、楽しいのかな」と、ていねいな口調で語ります。

カンパーニュは焼きたてが美味しいのはもちろんですが、日をおいて熟成するとまた味わいが深まってくるのもうれしいところ。お家で食べ続ける楽しみがあるパンです。

 

カフェメニューはカンパーニュのトーストと豆のペースト、季節の野菜のスープ、そしてドリンクととてもシンプルなのですが、シンプルなパンをいただくのだからそれで十分。とても香りがよいパレスチナのオリーブオイルを塗ったトーストは、かむほどにうまみがじんわりとあまみに変わり、「食べ物とはいのちの糧である」ということを実感できます。

 

だって、口の中で咀嚼するほどに、消化酵素が食べ物を栄養素に分解し、胃や腸で消化・吸収して、わたしたちが生きるエネルギー源になるのですから。食べ物がわたしたちを生かしてくれているんだなあ、ということを、じっくり味わえる至福の時間です。

 

リネンやコットンなど自然な素材の衣類も販売。オーナーのご友人の作家さんのオリジナル

 

雑貨は、掌におさまるほどの小さなプチプライスのものから、古いカトラリーやガラスのうつわ、一点もののリネンのワンピースまで、熊谷さんと縁あってUTOKUにやってきたものたち。

店舗のインテリアをみてもわかるのですが、ともかく、とてもセンスのよい、居心地のよい空間です。アンティークの家具やうつわ、それにコンクリート打ちっぱなしのジャンクな雰囲気に、ナチュラルで素朴なパンが、とても落ち着くハーモニーを醸し出しています。

ショーケースには熊谷さん一押しのカンパーニュを中心に、季節の食材を使った小さなパンが並ぶ。テイクアウトのみの利用も可

 

UTOKUのメニューには、動物性の食材や白砂糖は使われていません。パンや焼き菓子のうまみやコクを引き出すには、実は生クリームやバターなど、乳製品やたっぷりの油に頼らなくても、野生の酵母の働きをきっちりと見極め、助けてあげるだけで、十分なのです。

ただ、「発酵」と付き合うということは、お天気や季節などによって変動するさまざまな要素を肌で、舌で察知し、それに合わせて手加減さじ加減を調整しなければならないので、マニュアル通りではいきません。食とは、本質的には「生き物」を扱う仕事たる由縁です。

 

それを大上段に論じずに、さりげなく、日々の糧として供する。熊谷さんの控えめながら凛とした姿勢は、UTOKUという空間に流れる心地よい緊張感に通じます。

 

お客さんは、何も考えずに、ただその心地よさに身を任せればいいだけ。UTOKUでの時間は、きっと、おなかも、心も、満たしてくれるでしょう。

 

UTOKUに行くならクルマがおすすめ。バスなら鶴川駅から「町50/52/54」系統町田行きに乗って「笹子」バス停下車。ちょっと遠いけど行く価値あり

 

 

* キタハラ’s eye*

UTOKUのホームページをクリックすると、「coffe + bread + zakka」と書かれています。「森ノオト女子が好きそうなお店だなあ」と思って訪れたのですが、真っ先に自分がノックアウト……。味わい深いカンパーニュ。ゆるやかな雰囲気なのにちょっと緊張感あるオシャレな空間。酸味と苦味のバランスが絶妙なコーヒー。ちょっとジャンクでスパイシーな雑貨たち。パンとコーヒーと雑貨がナチュラルに調和した空間があまりにも居心地よく、「もう少し家から近ければ、毎週通っていただろう」、と思いました。オーナーの熊谷さんの人柄も、熊谷さんが焼くパンのように、素朴だけど誠実で、温かかったなあ。

Information

UTOKU(現在、カフェ部門は閉店。自然素材の服や服飾小物の貨のお店として営業中)

東京都町田市金井町2070-1

tel/fax 042-708-4235open: 12:00~18:00

closed: sun・mon(臨時休業はFacebookやblogでお知らせいたします)店内撮影禁止/禁煙/Pなし/クレジットカード一部利用可

http://cafe-utoku.com/

オンラインショップ

http://cafe-utoku.shop-pro.jp/

 

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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