いつも車窓から眺めていた美しが丘西の通りに、2013年6月、花屋さんがオープンしました。あまり見たことがないような花の苗、アンティークの家具たち……。花屋? 雑貨屋? 一歩、店内に入ると、生き生きとした色鮮やかな花の姿が目に飛び込んできます。美しが丘西の「空の箱」は、まるで森のような、地域の憩いの場でした。
たまプラーザ駅からバスで5分ほどの保木公園近く、ドラッグストアやスーパーが並ぶ一角に、花屋「空の箱」はあります。店先には苗や植木が所狭しと並び、店内はブルーグレイの壁にアンティークの家具が並べられ、まるで雑貨屋さんのような賑やかな佇まいです。買い物帰りの主婦や犬を散歩中の人などが気軽に声をかけ、おしゃべりしていく姿が見受けられます。
オーナーである大谷明子さんが空の箱をオープンしたのは、2013年6月。それまでは同じ青葉区にある花屋さんのスタッフとして働いていました。
大谷さんが花の世界へ入るきっかけは、6年ほど前。上京して間もない頃、緑や花のない自分の部屋を見て、まるで空き箱みたいだ……と思ったといいます。
「その時に、思い出したのはおじいちゃんの庭で遊んだ記憶でした。庭には梅や桜、サルスベリなどたくさんの樹木があり、おじいちゃんは雑草の名前もとてもよく知っていました。四季折々、実を食べたり、花を摘んだり、泥水で遊んだりしていました」
大谷さんは、その時、「もう一度おじいちゃんの庭のような場を作りたい」と強く思い、花の世界に入ったといいます。
店名である「空の箱」の由来も、「物事はすべて、最初は空っぽで、空き箱のような状態。そこから自分の好きなもの、大切なものをその箱に詰めていってほしい」との願いが込められています。そんな店内には、大谷さんの大切なものであふれています。
お店には通学途中の小学生や、幼い子どもを連れたお母さんたちもよく立ち寄ります。大谷さんとおしゃべりをしたり、お母さんたちが花を選んだりしている間、子どもたちは花を目で見て、時にはさわり、花が持つ色や手触りを感じているようです。
「本来ならば売り物の花なので、子どもがさわったら注意しなければいけないのかもしれませんが、本音では、手でやさしく花に触れてさまざまなことを感じてほしいのです」と、大谷さん。
そして、今後は
「花屋という枠の中だけではなく、本当は森へ子どもたちを連れて行きたい。そして、葉っぱを拾ったり、植物の芽吹きを眺めたり、土を踏みしめ一緒に自然の不思議さを感じたいと思っています」
その言葉から、大谷さんが昔、おじいちゃんの庭で感じた喜びを、地域の子どもたちにも味わってほしいという思いが伝わってきます。
店内では、時々、リース作りなどのワークショップも開かれています。あえてレッスンという言葉は使いません。大谷さんは簡単な作り方を教えるのみで、あとは好きなものを選んで、好きなように作っていってほしいといいます。子育て中のお母さんたちが気軽に立ち寄れるように、事前の予約なしでも受け付けているとのことです。
「子どもだけに限らず、訪れる人すべての森のような存在の店になりたい」
オープンしてまだ1年も経たない「空の箱」ですが、その思いは着実に育まれているように感じます。これまでは、店内の雰囲気や店先に並ぶ珍しい苗たちに目を奪われていましたが、大谷さんの思いを知ることで、私にとってはさらに愛着のある店へと変わっていきました。まだまだ個人の店が少ないこの地域の中で、一人の女性がしっかりとした志をもち営むこのお店を、地元の住民としてこれからも応援していきたいと思います。
空の箱
住所:神奈川県横浜市青葉区美しが丘西3-65-8
Blog:soranohako.blogspot.com/
Facebook:https://ja-jp.facebook.com/soranohako
営業日:月-日曜日
定休日:なし(お盆、お正月休みは除く)
営業時間:10:00-18:00
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