たまプラーザの駅から歩くこと数分。飲食店や八百屋さんなどが立ち並ぶ商店街の一角に、2013年10月、眼鏡店「Local(ローカル)」はオープンしました。
辞書を引いてみました。
「Local」:その地方に限定される特有なこと。
風俗・自然・情緒などにいう。
店主である矢田大輔さんは、その屋号が示す通り、開店への経緯について次のように話します。「私自身、眼鏡がとても好きですが、わざわざ都心に出かけなくとも地元で眼鏡を購入でき、アフターケアもすべてお願いできる店がほしかった。私生活で子どもが生まれたりして、時間的にも難しくなったこともありますが、もう一つは、この店を身近に見て育った地域の子どもたちが大きくなり、やがて自分で眼鏡を買うようになった時、“この眼鏡店で買えるようになったら一人前だ“と思えるような店をつくりたかったのです」
矢田さんのこの思いは、置いてある商品(眼鏡や小物など)や、技術面・アフターサービスに対する信頼はもちろんのこと、店の内装や家具、一つひとつの小物に対しても現れています。
いくつかの眼鏡店で働いてきた矢田さんですが、その中で、現在の店の核ともなる出来事に遭遇したといいます。
「まだ眼鏡に関する経験が浅く、大手の眼鏡店で働いていた時のことですが、障がいのある年配のご夫婦が来店され、私が担当しました。2時間もの間、いろいろと検査をしたのですが、結局、眼鏡で度数を出すことができなかった。しかし、それに対し、嫌な顔ひとつせずにニコニコしながら“こんなにも時間をかけて丁寧に対応してくれたのは初めてですよ。ありがとう”と言って帰って行かれました。その時、自分の技術の限界を感じ、本当に悔しくてたまらなかった」
この出来事がきっかけで、矢田さんは技術を習得できる店で働き始め、その後、合格率3割といわれるJOA(公益社団法人日本眼鏡技術者協会)認定眼鏡士の資格を取得します。現在、この資格は眼鏡店を営むにあたり必須のものではありませんが、矢田さんが思い描く店には必要不可欠の要素でした。「単に視力を測るだけでなく、その人の使用目的やライフスタイルなどを会話の中で伺い、疑問に思われたことに対してはしっかりとした知識と技術で応えていきたいのです」とのこと。この言葉通り、店では検査に十分な時間をかけ、顧客の要望に応えています。
最後に、矢田さんにこれから眼鏡を購入する方へのメッセージをいただきました。
「“自分に似合う眼鏡”を意識して選ぶ方が多いと思いますが、できたら“眼鏡を通して、自分はどうなりたいのか?”をポイントに選んでいただけたらと思っています。人は誰でもまず顔を見ます。眼鏡をかけることで、なりたい印象に近づけます。話の中で、その要素を伺い、そのためのアドバイスもします。ただ、はっきりと言ってしまうのでその辺を了解いただければ(笑)。そして、高価な買い物でもあるので、一度購入したらしばらくは使い続けてほしいと思います。その為の、アフターケアもしっかりとサポートします」
眼鏡を愛する矢田さんの店には、すでに固定客もできているようです。ふらりと店に立ち寄り、眼鏡の調整をお願いする人もいれば、また、お金を貯めて購入した学生さんは頻繁にメンテナンスに来てくれるそうです。大切に使ってくれているのが何よりも嬉しいと、矢田さんは言います。
単によく見えるから、オシャレだからというだけでなく、使用し続けても疲れず快適に過ごせることが眼鏡のある生活には不可欠です。私自身、眼鏡を使用する者としても、身近にしっかりとサポートをしてくれ、相談できる眼鏡店があるととても安心します。たまプラーザという街がこれから更に年月を重ね、成熟していく中で、「Local」という一つの眼鏡店が誕生し、代々引き継がれていくような歴史ある店となる姿を思い描きました。
もちろん、珈琲の香りも長く記憶に残り、受け継がれていくことでしょう!
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