子どもが生まれて以来、我が家では生協の宅配を利用しているのですが、毎回必ず注文するものの一つに「納豆」があります。経木のパッケージに包まれた納豆は、大豆の味がとても濃く感じられ、我が家の定番です。その納豆を製造しているのが株式会社カジノヤ(以下、カジノヤ)であり、住まいからも車で30分ほどの距離にあることに大変驚きました。
日頃、私たちが食べている納豆は、“納豆菌”という藁に生息する微生物の働きにより、大豆の旨味が増し、さらに保存性が高まりできあがった発酵食品です。
私は元々チーズやワインなど「発酵」に興味があり、美味しい納豆=美味しい納豆をつくりだす納豆菌(微生物)の働きについても何か伺えるかもしれないとの思いから、カジノヤの製造工場を見学してきました。
カジノヤの歴史は今から70年ほど前に遡ります。田んぼと畑が広がる中、当時は創業者が藁で包んだ納豆をリヤカーで引き売りしていたといいます。その後、時代とともに機械化・大量生産へと進みますが、生協との取引がきっかけでより自然で安全な原材料へこだわり、また環境への配慮をするようになったそうです。
現在、カジノヤで使用する大豆は、非遺伝子組み換えのもの、そして、できる限り化学肥料や農薬に頼らず、自然農法に近い栽培をしているものを使用しています。カジノヤでは、定期的に農薬検査、放射能検査、遺伝子組み換え検査を実施しています。また、納豆に添付するタレについても化学調味料不使用、カラシは無着色のものを使うなど安全な食品を提供することにこだわりをもっています。
では、そのこだわりの納豆がどのように作られているのか工場内を見学してきました。
工場見学を経て、大豆が丸3日もの時間をかけて納豆へと変化していくこと、そして、納豆づくりに必要不可欠なものである納豆菌は生き物であり、それ故に温度や湿度などの環境により、良くも悪くもなることがとてもよく理解できました。また、納豆菌には「三浦菌」「成瀬菌」「高橋菌」の3種類(*)があり、試行錯誤の結果、カジノヤでは古くからある「三浦菌」を使用し納豆づくりをしているとのことでした。カジノヤの味は、“三浦菌”にあり!
*大手納豆メーカーでは、自社オリジナルの納豆菌をつくっているところもあります
残念ながらこうした工場見学は一般の方向けにはおこなっておらず、今回は取材のために特別に対応いただいたのですが、カジノヤでは様々な社会貢献の取り組みをしています。食育の点では、地元の小学校と一緒に付近の畑を借りて大豆を栽培し、納豆を作ったり、また大学のインターンシップの一環として、学生と一緒に商品の共同開発などをしています。
「納豆はもちろんのこと、タレの味も含めたカジノヤであることを広め、安心・安全の精神をベースに、これからも時代にあった納豆をつくっていきたい」と森本さんは語っていました。
ところで、臭いがきついウォッシュタイプのチーズ、実は納豆菌と親戚と言われているリネンス菌という菌がつくりだしていることをご存じでしょうか? “納豆”と“チーズ”、同じ種類の菌であってもだいぶイメージが違うことがなんだか不思議です。同じように、私たちの身近には、麹菌(日本酒・味噌・醤油など)、乳酸菌(チーズ、ヨーグルトなど)、酵母(ワイン・パンなど)といった様々な菌による働きで、たくさんの美味しい食べ物がつくられています。いずれもある決まった微生物が関わっており、発酵を経て、独特の風味を得たものへと変化させていったものです。
今回、その代表的なものである納豆の製造現場を見たことで、ますます、微生物の働きや発酵についての仕組みに興味が湧いてきました。古くからある日本の味噌、醤油などと同じように、微生物が働き醸し出したその味をダイレクトに味わってみたいと思うのはきっと私だけではないと思います。巷では、“納豆づくりキット”もあるようなので、“手前味噌”と同じように、家庭での納豆づくりを楽しみ、カジノヤさんの納豆と味比べをしてみるのも面白いかもしれません。
肩の力を抜いて、これからも身近な“菌(微生物)”と仲良く暮らしていけたらいいな、と感じた1日でした。
株式会社カジノヤ
〒215-0027 神奈川県川崎市麻生区岡上488-1
TEL.044-988-4577 FAX.044-988-4923
http://www.kajinoya.co.jp/index.html
※現在、一般向けには工場見学は受け付けていません。
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