青葉区にお住まいで、vivo stainedglass(ビーボ ステンドグラス)の名で活動しているステンドグラス作家の羽田桜さん(35歳)。5歳と2歳のお子さんを育てながら、葉っぱや鳥をモチーフにしたオーナメントや、フォトフレーム、ミラーなど気軽に暮らしに取り入れられる作品をつくっています。そして、ドアなどにはめこむパネルによる空間デザインも手がけています。
幼少時代を埼玉県狭山市入間基地周辺の米軍ハウスで過ごし、イギリスの大学でファインアートを学んだ羽田さん。帰国後パソコンでデザインの仕事をしていましたが、自分の手を動かしてモノ作りをしたいという想いから、ステンドグラスを独学で始めて今に至ります。モノ作りの原点は、ご自身の家族や、米軍ハウスで過ごした日々にあったようです。
「母はイラストレーター、父も大工仕事が好きで、今も家を勝手に増築しているような人。家の中は手作りのものが多かったですね。母は“ブリキッカ”という雑貨のお店をしていました。私から見れば家のゴミのようなものが(笑)、こう、うまくまわっていくような感じはしましたね。アメリカ村という米軍から撤退した人たちが住んでいる地域にいたので、ブリキやガラスの骨董ものとか、ジャンクなもの、ごちゃごちゃしていたものが多かったんです。それも、もしかしたら作ることに影響していたかもしれないですね」
米軍ハウスを気に入って移り住んだ近所の人たちは、音楽やデザインに携わっていたり、みなどこか似た雰囲気があったそう。モノ作りを生活の一部とする人びとが多いコミュニティの中で、羽田さんの感性や創造力が自然と培われていったのかもしれません。
作品が生みだされるアトリエはご自宅の一室。まずはどのような工程を経て作品が生まれているのか教えていただきました。
「最初に、ガラスカッター(先端がダイヤモンドのカッター)の先をクルクルと回しながら、ガラスにキズをつけていきます。キズに沿ってガラスを割っていくのですが、基本的にガラスは直線にしか割れないので、うまくカーブをつけていきながら……。ハンマーみたいな道具で、キズをつけたところにヒビを入れていく方法もあります。こうして形作ったガラスのふちに、コッパーテープという銅のテープを巻いて、その上からハンダを使って溶接していきます。ハンダの色がシルバーなので、このシルバーを活かすか、それともアンティークゴールドに染めるのか、赤や黒にするのかは作品によって決めていきます」
ガラスとガラスの間にハンダ(鉛)が入ることにより、驚くほど強度が増すことも教えてくれました。
「たとえ石が当たったとしても、ガラスにヒビは入ってもバリンとは割れないんです。ステンドグラスは割れたら怖いという人もいるんですけど、倒れてもヒビがはいるくらいで。ガラスといえどもすごく強い。ただ、落としてしまうとさすがに割れてしまいますけどね」
実際に羽田さんがハンダづけしたステンドグラスを握りこぶしでゴンゴンと叩いてくれましたが、その強度を目の当たりにして、私が勝手に抱いていた「もろいステンドグラス」というイメージが覆されました。
ステンドグラスの魅力は、時間が経ち色あせてもきれいなところ。そして羽田さんが何より魅了されているのが影の世界。使用するガラスの種類によって、光の反射の仕方、透過の具合が違うことから、雰囲気がガラッと変わるそう。作品を作る際は影の出方を確かめながら、ガラスの組み合わせを考えていくそうです。
「ステンドグラスが陽を受けてできる影の世界を、ぜひ楽しんでもらいたい。私は、影あそびができる家を作りたい、提供したいと思っていて。家という場所は、私にとっては作業をして、子どももいて、くつろぐ場所。それぞれの暮らしの中で、自分がゆったりできる空間に何を求めるのかを考えると……、その時々の季節とか、陽の感じで楽しめるものがあるといいなと」
「夜もキャンドルを置いて影を作ったり、影とほかの絵画や植物をからめていくと、ひとつのアートワークにもなったりします。夏にすごくいいのが、窓を開けているとカーテンがゆらゆらと揺れるんですよ。そうすると、カーテン越しの影もゆらゆらと揺れるのがとても面白くて、(家のなかに)そういう場所をいっぱい作って遊べたら楽しいなって思いますね」
羽田さんの頭の中には、まだまだ無限に広がるイメージが詰まっているようです。影によって時間や季節の移ろいを感じる日々が過ごせたなら、どんなに素敵だろう……と想像せずにはいられませんでした。
「私、ずっと作りたいものがあって、すごくあやしいと言われたんですけど(笑)、瞑想ルームを作りたくて。コンクリートの四角い建物で、上から30センチくらいをステンドグラスにして。そうすると、どの時間帯から光が入っても四角い影が面白いんですよ。いつか作りたいな……」
お話を聞きながら、それはぜひとも実現してほしい、きっと集中できる素敵な空間になるはず!と強く願ってしまいました。
vivo stainedglassの「vivo」は音楽用語(イタリア語)で「いきいきと」「活力のある」という意味で、作るときにはそういう気持ちでいたいと話す羽田さん。彼女が教えてくれたステンドグラスの美しさと影の世界を、ぜひ、日々の生活に取り入れてみませんか?
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