これからは、自宅だけじゃなく住宅地全体で省エネを考えよう!
横浜市は2019年をピークに人口減少時代に突入します。郊外住宅地で空き家問題が懸念されるなか、いかに魅力のある住まい・そして住宅地を維持し、さらに価値を高めていくかに注目が集まっています。エネルギーの視点でまちづくりを考える「第2回あおばエネルギーまちづくり研究会」が10月31日(火)の夜に、たまプラーザの3丁目カフェで開催されます。

森ノオトの活動エリアである横浜市青葉区は、人口が30万8388人、世帯数は13万2820戸です。そして、まさに事務所所在地の鴨志田町をクローズアップすると、人口8495人、世帯数にして3,694。決して大きなエリアではありませんが、地方の町村に比べると、なかなかどうして大きな人口です(平成29年9月30日現在、横浜市統計ポータルサイトより)。
 
2017年8月8日、青葉区鴨志田町にある足場工事事業者「大久保恒産」の関連会社「大樹恒産」をお借りして、「第1回あおばエネルギーまちづくり研究会」を開催しました。森ノオト事務局長の梅原昭子さんが呼びかけ人になり、まちづくり・エネルギーに関心のある地元の方を中心に20名が集まりました。

森ノオト事務局の梅原昭子さんは「エコロジーと市民参加でまちの魅力を再編集したい」と挨拶した

「森ノオトは鴨志田町に事務所がありますが、私は“カモジケ”と呼ばれるこのエリアが好きだなあと感じるようになりました。100年先を見据えて、鴨志田町・寺家町のブランド力を高めるには、小さなまちでコンパクトなエネルギー社会をデザインすることではないかな、と思っています」と、挨拶をした梅原さん。
中長期的には、カモジケエリアで次のような事業を立ち上げ、エネルギーまちづくりをおこなっていきたい、と問題提起をしました。
 
地域資源の研究・資源回収のステーションの設計と運営
住まいの省エネ改修のすすめ
経営者会議的な、エネルギーによる地域づくり協議会の実施

会場を提供してくださった大久保恒産の松岡二郎さん。建築現場の足場や足場部材の販売をおこなっている。「会社としても地域貢献をしていきたい」と話した

梅原さんの話を受け、メイン講師の佐々木龍郎さんの話がスタートしました。佐々木さんは東海大学や東京都市大学、神奈川大学、京都造形大学で教鞭をとり、景観アドバイザーとして活躍している建築家です。森ノオトで2015年の「エコDIYまちづくり」でお呼びした建築家・みかんぐみ共同主宰で東北芸術工科大学教授の竹内昌義さんとともに今年4月に「エネルギーまちづくり社」を設立し、「発電しないエネルギー会社」として、住まいの省エネリノベーションを提案しています。
 
佐々木さんは、現在、横浜市建築局住宅政策課による「住まいのエコリノベーション(省エネ改修)補助制度」の普及に取り組み、「よこはまエコリノベーションアカデミー」の講師として市内各地を巡っています。「2020年には住宅の省エネ基準が義務化され、断熱が不十分な住まいは基準不適格としなる可能性があります。国際的にも地球温暖化の原因物質とされるCO2(二酸化炭素)を削減するために、住宅を省エネ改修していくことはとても大切ですし。そして、エコリノベーションは、エネルギーの問題以上に、健康や快適性の面からも優れています」と、佐々木さんは話します。
 
ここで、佐々木さんから衝撃的なデータが示されました。
 
「日本は(為替によって多少の変動はあれども)毎年約20兆円もの化石燃料(石油は天然ガスなどのエネルギー資源)を輸入しています。20兆円を日本の人口約1億2700万人で割ると、1人あたり年間に約16万円もの化石燃料を輸入している計算になります」
 
規模を小さくして身の丈に合わせて考えると、青葉区の人口約30万人で毎年500億円分、鴨志田町の人口約8500人で毎年14億円くらいの化石燃料を海外から購入していることになります。海外に流れている14億円が鴨志田町にあったら、どれだけの豊かな地域づくりができることでしょう! なんてもったいない! と、参加者からため息が漏れ聞こえました。

明るくやわらかくわかりやすく、住宅のエネルギーについて語る佐々木龍郎さん。佐々木さんが監修した『よこはまエコリノベーションアカデミー 柔らかな教科書』は、10月31日の次回勉強会でも参加者に配布される予定

化石燃料の輸入によって海外に流出しているお金を、地域主導型の再生可能エネルギー(太陽光発電や風力発電の電気や、木質バイオマス・廃棄物の発酵ガスの熱など)に回して、国内経済を活性化させる方が、経済も雇用も活気付いて、いい循環になるのではないか、と佐々木さん。
 
その解決策の一つが、エコリノベーション(住宅の省エネ改修)です。省エネ住宅とは、使うエネルギーを減らして、つくるエネルギーを増やした住宅のことで、最近では発電と省エネの組み合わせで消費エネルギーがプラスマイナスゼロの「ZEH(ゼロエネルギーハウス)」も誕生しています。
 
「今までは個人の敷地の中、自分の家の性能がよければそれでいい、という風潮がありましたが、今後は地域としてどういう住宅地であるべきかということに目を向ける必要が出てきます」と、佐々木さん。横浜市もあと2、3年で人口が減少に転じ、みるみるうちに社会構造が変わってくることが予想されます。人口が圧倒的に減るのに、日本ではいまだに年間90万戸もの新築住宅を建てており、各地で空き家が増えてくる、それにともなう治安の悪化など、問題は山積みです。「この地域は比較的暖かい家が多い、地震に強い家が多い、だから空き家が少なくて治安もいい、という空気感をつくることが、住宅地の魅力を維持するうえで欠かせません」と、佐々木さんは力を込めます。

大樹恒産の窓から広がる鴨志田町の夕景。里山と住宅地のやわらかな境界線が、なんとも魅力的な風景として映る

こうした基本的な問題意識を共有しながら、『柔らかな教科書 〜エコで快適な住まいのリノベーションの実践と未来を学ぶ〜』から、住宅の省エネについての具体策を詳しく学んでいくのが10月31日の「第2回あおばエネルギーまちづくり研究会」です。佐々木さんのお話は、断熱と健康の因果関係、建物の燃費の話、建物診断と不動産価値、窓断熱の費用対効果、断熱材の施工の話、エコリノベーションの住宅ローンなど……理論的に納得! 計算してさらに納得! な内容が盛りだくさんです。
さらに、よこはまエコリノベーションアカデミーの事務局を務める横浜市住宅供給公社の担当者から、今年度の横浜市の事業「エコリノベーション補助制度」についての説明も受けられ、今すぐさむ〜い家をなんとかしたい、今年こそ断熱改修をしたい人には本当にオススメの講座です。
 
「一戸一戸のエコロジーから、地域全体でのエネルギーの話になっていくのが、これからの時代を生き抜く大切なセンスではないでしょうか」と、佐々木さん。エネルギーの視点で住宅地を再編集していく新しいまちづくりについて、森ノオトではこれからも様々な学びの場を提供していきたいと考えています。
 
10月31日(火)に開催する「第2回あおばエネルギーまちづくり研究会」の会場は、青葉区を代表するコミュニティカフェ「3丁目カフェ」。もちろん、佐々木龍郎さんも講師でお招きしていますので、自宅の省エネ改修をしたい方、住まいの資産価値を高めたい方、まちづくりに興味のある方、佐々木さんのお話を聞いてみたい方……お待ちしています!

Information

第2回あおばエネルギーまちづくり研究会

日時:20171031日(火)18:00-20:30

参加費 :2000円(1drink&軽食代)

会場:3丁目カフェ

http://3choome-cafe.com

(横浜市青葉区美しが丘1-10-1 TEL 045-516-8037

主催:特定非営利活動法人森ノオト

共催:合同会社たまプラ・コネクト

お申し込みは氏名、生年月日、住所、電話番号、E-mailアドレス、参加の動機を記入の上、event@morinooto.jpまでお申し込みください。

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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