「根拠はありますか?」
「言葉に敏感に」
「対立よりも対話を」
一枚に一つのメッセージを込めたカードには、裏をめくると、メディア経験者から集めた現場での失敗談などのエピソードが書かれています。
2019年1月。私たちは海のそばの倉庫を改装したデザイン事務所で喜びの声をあげていました。1年かけて集めてきたメディア経験者のエピソードを使ったワークショップカードの試作品が完成していました。デザインに力を貸してくださったのは、横浜を代表するデザイン事務所NDCグラフィックスです。言葉の力を存分に活かしたデザインに驚かされました。
私、船本由佳は、森ノオトのローカルメディア事業の中で、メディア関係者が相互に学び交流できる場「ローカルメディアミーティング」を開催してきました。
2018年度は4人のゲストに話をしていただきました。パラスポーツを写真ニュースで配信しているNPOパラフォトから佐々木延江さんの平昌取材報告、情報の真偽を調査するファクトチェックについて立岩陽一郎さんの話、減災ラボの鈴木光さんによる防災ワークショップ体験、性暴力被害者の写真プロジェクトを実施しているフォトジャーナリストの大藪順子さんから被写体の権利について、情報提供してもらいました。その後、参加者同士でそれぞれのテーマについて対話を行いました。
ローカルメディアの行動指針「かながわローカルメディアコンパス」は、そんな講師からのメッセージや交流会参加者からの実直な声などを元に、地域でメディアに関わる人が、情報発信をしていく上で拠り所にできるものを作りたいと、ミーティングの開催と並行して作成を進めてきたものです。
2018年の8月と10月にメディア経験者に集まっていただき、これからメディアをやりたい人に伝えたいことや現場での困りごと、やりがいなどのエピソードを集めるワークショップを開催しました。正確さ、公平性などのメディアとしての基本要素、地域とつながる大切さやライター自身の人生が豊かになることなどローカル活動の要素、SNS発信や子どもとメディアなど時代的な要素など、次世代に伝えたいローカルメディアの大切なテーマが収集され、結果、100を超える現場からの声が集まりました。
私たちはこれらの声を「メディアとはかくあるべし」と教科書のようにまとめるつもりはありません。なぜなら、取材や編集の現場で起こることの答えは一つではないからです。大切なのは情報発信に関わる各人が自分で考えて判断することです。向き合う人それぞれが、ともに発信する仲間と話しあい、答えを見つけて欲しい。
私たちは、カード型のエピソードシートを作ることで「自分がこの状況だったらどう考えるか」を語り合う対話のきっかけを作りたいと考えました。
この活動は神奈川県の「かながわボランタリー活動推進基金21」の補助金を受けて行っているもので、ありがたいことに2019年度も継続が決まりました。この補助金は3年の年限がありますので、2019年度が最後の年になります。
今年は3年間の集大成として、「かながわローカルメディアコンパス」のワークショップカードの完成を目指します。
現時点でワークショップカードはまだ試作段階です。引き続き、カードに記載するエピソードやテーマの収集・整理、そして実際の活用を目指し、ワークショップの開発やファシリテーターの養成を行っていきたいと考えています。
今年、カードの準備が出来次第、ワークショップのテスト開催やお披露目なども行っていきたいと思います。「かながわローカルメディアコンパス」が誕生したら、メディアの力で地域や市民活動を良くしたいと考えるみなさんの元で役立てられるように活用していきます。かながわローカルメディアコンパスの誕生をみなさんぜひ応援してください。
情報の海を泳ぐためのツールを作りたい。私たちは2018年1月に宣言して活動を行ってきました。
ローカルメディアミーティングだけではなく、発信力UP講座やローカルライター講座など発信をテーマにした学びの場を作り続ける中で、一つの大切な前提となる言葉が降りて来ました。
「情報発信は社会を良くするために行う」ということです。
フェイクニュースや誇張表現など、情報の海にはさまざまな情報がありますが、情報発信者の矜持として「社会を良くする情報発信」ということからは外れたくない。きっと、地域を良くすることが、地域で仲間と出会えたり、ほっとできる場所が増えるなどして、自分にも還って来るはずです。
今年作るのは「カード」と「場」。これも新しいスタイルの発信になっていくはずです。小さな発信でも社会の誰かに届くことを思って、完成を目指していきたいと思います。
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