かつての地域交流の場であった「井戸端会議」は、水汲み場としての井戸がなくなり、立ち話という形に姿を変えました。井戸端会議自体はなくなってはいないけれど、その寄る辺となる「場」は少なくなっています。地域でなんとなく人が交わり語り合う場を青葉区らしい形でよみがえらせたいと、地域の花壇を井戸端会議の場として人が集う場にする「花端会議」を広げるにはどうしたらいいのでしょうか。
この「花端会議」という言葉は、フラワーダイアログあおばキックオフイベントのパネルディスカッションで、あおば花と緑のサポーター代表・齋藤世二さんが提案し、会場から大いに賛同を受けたキーワードです。
森ノオトでは、子育て世代の声を集める「あおば子育て編集会議」を通して、若い世代がシニア層との交流を求めているのを感じ、一方でフラワーダイアログあおばでは公園愛護会活動等を含めた地域活動団体が世代継承に課題を抱えていることを知りました。多世代をつなぐ場として、地域の花壇や公園が活用される「花端会議」が青葉区らしいムーブメントになるのではないかと考え、その実現に向けて市民同士で機運を盛り上げるための対話の場を設けることにしました。
2月8日(金)に青葉区役所4階会議室で開催した「フラワーダイアログ(対話交流)〜青葉区らしい花と緑の風土づくりとは?」には19人が集まり、3時間にわたり同テーマで対話をしました。3グループにわかれての対話から生まれたアイデアは実に多様!
「どんぐりや松ぼっくりを植えて苗にして配布」
「自分の庭で育てた花を学校や公園、区役所に飾る」
「独居の高齢者のお庭の手入れをしたい」
「子どもの声で公園マップをつくりたい」
など、個別の企画から、
「毎月8日9日を“パークの日”として、公園に人が出てくる仕掛けをつくる」
「幼稚園、保育園、小学校、地域ケアプラザなど、地域の施設との関わりを持ち、花と緑にふれあう機会をつくる」
「樹木や花の検定コンテストを開催する」
といった、仕組みづくりに関わるものまで、多岐にわたるアイデアが集まりました。
この日のアドバイザーは、全国各地の様々な「場づくり」に関わってきたNPO法人れんげ舎の長田英史さん。3時間にわたる白熱した対話を俯瞰的に見ながら、次のようにアドバイスをしてくださいました。
「大きなイベントのような“ハレ”の場での密度の濃い体験を、いかに日常的な場や生活の場に落とし込んでいくかが大切です。例えば一年に一度、子どもたちを対象にしたイベントを運営し、それに向かってがんばっていい場ができたとしたら、“ここで終わらせたくない”という気持ちになるものです。それを、春夏秋冬に分けてやる、地域を分けるなど、少しずつ日常的な場に落とし込んでいくことで、新しい日常を生み出すことができるのではないでしょうか」とまとめ、参加者は日常の場を豊かにしていくための「花端会議」の意義をあらためて噛みしめました。
「あなたの力の1%を青葉区の未来に」という青葉区全体の合言葉をみんなで共有し、公園愛護会活動に精を出しているシニア層や、子育て世代、普段は忙しいサラリーマンや、学校や幼稚園・保育園の子どもたちまで、すべての世代で花と緑を楽しむ期間としての「花端会議ウィーク」への期待感が高まりました。
3月9日(土)には、フラワーダイアログあおばの2018年度のクロージングイベントとして、オーガニック・ガーデンを提唱している「ひきちガーデンサービス」の曳地義治さん・トシさん夫妻によるトークショー「いのちがめぐる楽しい庭づくり」を開催しました。
「ハルさん・トシさん」として親しまれている曳地さん夫妻は、個人庭を専門に、農薬や化学肥料に頼らず、自然の仕組みを利用して環境に配慮したメンテナンスを行っています。NPO法人日本オーガニック・ガーデン協会代表として、本物の自然素材を活用し、バリアフリーで循環する庭づくりが、まちづくりにも展開されることを提唱し、日本全国のみならず、海外にもファンが多くいます。
「私たちはオーガニック・ガーデンを提唱していますが、最初は無農薬で虫一匹すらいない庭にすることなのか、と思われる方もいます。でも、虫がいてもいいと思わないと、オーガニックにはならないのかな」と、話し始めたトシさん。「多様なものが有機的につながる多様性、土に還る循環、そして地域特性。環境に対して無理な負荷をかけずに、自然に楽しむのがオーガニック・ガーデンで、自分自身の環境や健康をよくし、次の世代に安心な環境を伝えていく持続可能な社会づくりにつながるのでは」と、オーガニック・ガーデンを定義しました。
続いてハルさんが、生態系の話をします。「自然界ではよく“弱肉強食”と言われますが、実は逆で、生態系ピラミッドの一番下にある微生物などの“生産者”が生態系を支えています。生産者は無機物から有機物を生産し、それを順繰り他の生物に受け渡していきます。ところが農薬を使うとそれが崩れてしまう。除菌剤で土を殺菌し、除草剤で葉を枯らし、殺虫剤で虫を殺していくと、この生態系ピラミッドは壊れます。結果的に絶滅するのが個体数の少ない猛禽類なのです」と説明し、会場前方に用意した紙コップの模型でその様子を再現しました。
参加者の女性が、生態系ピラミッドの一番下にあるダンゴムシを崩すと、なんと、その上の樹木、虫、テントウムシ、そして猛禽類までが一気に崩れ去り、生態系が小さくなってしまいます。それを見てハルさんは「人間が自然に手を加える際には、自然界に対する影響(アセスメント)を考えないといけない」と警鐘を鳴らしました。
『虫といっしょに庭づくり オーガニック・ガーデン・ハンドブック』(築地書館)が大ヒットし、虫の専門家(?)としても引っ張りだこのハルさん・トシさん。「私は誰でしょう? 虫編」クイズと答え合わせで、会場は大盛り上がりでした。
「ナミテントウはアブラムシを食べてくれる、たいへん貴重でありがたい虫です。実は共食いをするので、卵の殻まで食べてくれて、ゼロエミッション(ごみが出ない)なんです。シロホシテントウはウドンコ病の病原菌を食べてくれます。一見気持ち悪い外見のコクロヒメテントウは、アリやアブラムシを食べてくれます。共生関係と言えますね」
こんな風に、虫について語り出すと止まらないトシさんですが、意外にもハルさんに嫁ぐまでは虫が大嫌いだったそう。オーガニック・ガーデンに取り組むなかで、鳥や虫や微生物との共生関係を築き、彼らの生態を知るにつけ、そのおもしろさにのめり込んでいったそうです。
「庭のもう一つの嫌われ者、雑草も、付き合い方を考えれば全てを根っこから抜く必要はないんです。適度に草が生えていると、土壌の乾燥やひび割れを防いで土中の生態系を守ることができます。雑草はその土地に必要な草とも言えます。我が家では雑草を抜かずに5cmに刈り取るようにしています。葉があることで、他の植物の種が飛んできて交雑することもなく、庭が落ち着くんです」と、ハルさん。ほかにも、手入れしやすい庭づくりのアイデアとして、庭にいくつか水栓を設置すること、中間領域としてのデッキや、動線確保の仕方、スパイラル花壇など、お二人ならではの庭づくりのアイデアをたくさん披露してくださいました。
最後にトシさんは「自分のつくりたい庭に植物を無理やり合わせるんじゃなくて、自分の家の庭にどんな植物が合うのかを見つけることがガーデニングではないでしょうか。環境に合っていれば、虫も病気も発生しない、いい庭がつくれます」と参加者にエールを送り、会場は温かい拍手で包まれました。
究極のオーガニック・ガーデンは、地域全体が自然や生態系と調和し、その土地に合った植物が生き生きと花を咲かせ、虫や鳥などの多様な生物と人間がいい関係をつくっていくことではないでしょうか。青葉区全体にオーガニック・ガーデンが広がることをイメージしながら、花と緑を通じてエコロジーなまちづくりを進めていきたい、と感じたクロージングイベントとなりました。
次回の「フラワーダイアログあおば」
「オープンガーデンの始め方 わたしの庭を外にひらく」
日時:2019年4月26日(金)10:00-12:00
会場:荏子田太陽公園ローズハウス(青葉区荏子田3丁目21-5)
東急田園都市線たまプラーザ駅またはあざみ野駅から東急バスで「荏子田3丁目」または「荏子田2丁目」下車、徒歩1分
※駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。
参加費:無料
定員20名
お申し込み方法:氏名、住所、電話番号、メールアドレス、講座名または日にちを明記し、event@morinooto.jpまでメールでお申し込みください。
Eメールをお持ちでない方は、青葉区企画調整係へFAX(045-978-2410)でお申し込みください。
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