青葉区の農・福・商連携を発信!TSUBAKI食堂「青葉区丼」 後半は「横浜あおば小麦つながり丼」
青葉区は横浜一の米どころですが、実は小麦の栽培も盛んです。2019年から、青葉区の福祉事業所と商店主・区民有志が一緒になって小麦の栽培・収穫・そして加工に取り組む「横浜あおば小麦プロジェクト」が始まり、区民が食べて、飲んで、応援するサイクルが回り始めています。そんな青葉区の強いつながりを受け取って、TSUBAKI食堂の椿直樹さんが「青葉区丼」として表現したメニューが10月16日〜31日に供されます。

毎月、二十四節気ごとのオリジナルメニューで横浜の旬を伝えるレストラン「TSUBAKI食堂」で、注目を集めている月替わりの企画が「横浜18区丼」です。15年以上前から、横浜のど真ん中で自給自足ができるテーマパークのような場をつくろうと思い描いていた椿さん。コロナ禍で飲食店にとって厳しい風が吹くなか、かつての夢をもう一度よみがえらせ、「18区丼が一周まわったら、各区とのつながりが今まで以上にできて、地産地消のテーマパーク=ヨコハマ村をつくれるかもしれない!」と、思い立ちました。

3月の旭区に始まり、瀬谷区、戸塚区、鶴見区など、オーナーシェフの椿さんが各区をまわって生産者から直接仕入れた食材を「丼」として1日20食を提供しています。横浜市役所2Fという市内の中心部で、各区の個性を毎月味わえる楽しさが話題となり、毎日完売という人気ぶりです。

10月16日~31日に供される「横浜あおば小麦つながり丼」は、社会福祉法人グリーンが生産した小麦を軸にしたメニューで、青葉区で始まっている多様な農福連携を感じられる。税込1,500円(写真提供:NDCグラフィックス)

 

「地元の人たちが生産に関わった小麦を、地域の飲食店でいろんな形で食べられて、さらにその小麦でビールをつくったら、きっと楽しいよね」。大きな目をキラキラ輝かせて夢を語る奥山誠さん。青葉台の中心部にあるパン屋「ベーカリーカフェCOPPET」(以下、コペ)のオーナーで、青葉台商店会のメンバーとして、飲み歩きや異業種交流など、地域活性化のイベントを数多く仕掛けて成功させてきました。

横浜あおば小麦プロジェクトは、奥山さんが2018年に社会福祉法人グリーンと出会い、フランスパンをつくったことがきっかけで始まりました。知的障害者が職員と一緒に田畑を耕して野菜を生産し、ドライ野菜の加工やアンテナショップ「とうり」で販売を手がけるグリーンでは、10数年前から小麦も作っていましたが、その「出口」が見えずに悩んでいたそうです。職員の長谷川雅一さんが「小麦消費のプロに助言をもらおう!」と、奥山さんに相談してアドバイスを受けたことから、話は急展開していきます。

 

青葉区鴨志田町にあるグリーンの小麦畑を案内する奥山さん(左)と椿さん

 

奥山さんがグリーンの小麦粉で、試しにフランスパンを焼いて持っていったところ、大喜びしたグリーンのメンバーの姿を見て、「地域の人を喜ばせたい」という気持ちに火がつきました。地域の約30店舗がグリーンの小麦を使ったメニューを出す。グリーンのメンバーが小麦を届けるなかで商店主と交流する。小麦の生産に地域の人が関わる。あおば小麦のビールで地域の人が楽しむ……。3年目の横浜あおば小麦プロジェクトは、農業・福祉・商業・地域で楽しい「輪」を大きく描きながら、広がっています。

グリーンのアンテナショップ「とうり」にて

 

10月後半の「横浜あおば小麦つながり丼」では、あおば小麦を主軸にメニューを構成しています。サラダに使う野菜やトッピングされるドライオニオンはグリーンの皆さんが大切に育てたもの。あおば小麦を使ったコペのバゲットはフレンチトーストにしました。野菜の滋味たっぷりスープニモワーズは、グリーン栽培の原麦入りでプチプチした食感を楽しめます。

あおばマルシェで椿さんから青葉区丼の説明を受ける中山さん

 

メインのおかずはシュタットシンケン・中山一郎さんの横浜野菜を使ったソーセージです。中山さんは、食肉加工の分野で横浜市の「横浜マイスター」、厚生労働省の「ものづくりマイスター」や、2019年度「卓越した技能者」として選ばれ、「現代の名工」の一人として知られます。2021年春の叙勲・褒章では黄綬褒章を受章し、コロナ禍でのおめでたい話題として青葉区を賑わせました。中山さんは森ノオトのあおばを食べる収穫祭や、いいかも市、ウェブいいかも市も含め、地元のイベントにこまめに出店し、消費者と直接交流をしながら販売するスタイルを続けています。

椿さんが「青葉区丼」への協力を依頼した時は、青葉区役所で毎月開催している「あおばマルシェ」に出店中で、「いいよ~、ありがたいなあ」と中山さんは二つ返事でOK。あおば小麦と相性抜群のドイツソーセージが横浜中心部で新たなファンをつかむはずです。

あおばマルシェを主催する青葉区区政推進課の皆さん。左から係長の久保謙二さん、課長の中川譲さん、椿さん、林山るなさん

 

サラダに使われるトマトは、農業経営者として次々と新たな形の農業に取り組む金子栄治さんから仕入れます。新たなハウスを立て、この秋初めて収穫する高濃度高付加価値のトマトで、水耕栽培されたものです。昨年秋に訪れた時には、AIによる自動灌水システムを導入したトマト畑で農福連携の事例として取材しましたが、約1年後には横浜市で2例目となるソーラーシェアリングにも取り組んでいます。

金子さんは「これからの農業は、家業だけでやっていくのは限界だと思います。いろんな人に支えてもらうために、自分の受け止める幅も広げていきたい」と、企業協働や農福連携、6次産業化などを率先して行い、そこで蓄えた知見をコンサルティングとして横展開していき、地域の農業を持続可能にしていく。金子さんの熱量に、椿さんも圧倒された様子で、「今後、飲食店として関われる農福連携について、教えを乞いたい」と伝えていました。

ソーラーシェアリングは圃場の上に太陽光発電パネルを設置し、売電による収益と営農による収益の相乗効果を見込む新たな農業の形で、エネルギーと食の自給自足につながっていく

 

コペのフレンチトーストに使われているハチミツ。こちらにも実は、これからの福祉のヒントが詰まっています。青葉区のすすき野団地で一般社団法人団地の暮らしの共創を立ち上げ、団地再生に取り組んでいる小柴健一さんが、団地の中のコミュニティを豊かにしたいという思いからスタートした「みつばちぶんぶんプロジェクト」でつくっているハチミツです。ミツバチは環境指標生物であり、まちなかで養蜂をする時には花いっぱいの地域ほど蜜が採れるという傾向があるようです。青葉区では、國學院大学たまプラーザキャンパスの「万葉エコBeeプロジェクト」が有名で、青葉区と森ノオトの協働事業「フラワーダイアログあおば~花と緑の風土づくり~」で開催した講座がきっかけとなり、小柴さんはすすき野団地での養蜂に向けて動き出します。

「ミツバチに興味をもった住民が声をかけてくれるなど、少しずつ小さな輪が広がってきているのを感じます。今年はあおば小麦ビールとの連携もあり、ミツバチを通じて多くの人とつながりました。ミツバチを飼育する楽しみ、蜜源(植物)を増やし、見つける楽しみ、そして最後にそこから得られるハチミツをみんなで味わう楽しみがあります」と小柴さんは言います。

団地で採れたハチミツだから「団蜜」。このユニークなネーミングで注目されたハチミツを、たっぷり使ったフレンチトーストは見逃せない(写真提供:小柴健一さん)

 

青葉区の人口統計をみると、団地のある町は高齢化率が高い傾向にあります。特に、エレベーターのない団地では階段の登り降りに苦労する高齢者や、家で倒れた時に階段で搬送するのが大変、お連れ合いに先立たれて独居になった時の見守りなど、高齢化社会の課題が山積しているのも特徴です。

小柴さんはすすき野団地に引っ越してきたのが2014年、2017年度から2019年度までは管理組合の理事長として、これらの課題に取り組んできました。この間、団地再生ワークショップなどに取り組み、介護の仕事をしてきた経験を生かして団地内の見守りや相談ができる保健室機能、スパイスアップ編集部が駅遠エリアを巡回する新しいマルシェ「萬駄屋」を招くなど、高齢化著しい郊外団地での助け合い・見守り合いのコミュニティづくりを積極的に仕掛けています。

植木さん(左)と椿さん。20年来、横浜の地産地消を盛り上げてきた同志だ

 

今回、青葉区丼の企画コアメンバーの一人、ナチュラーレ・ボーノの植木真さんは、青葉区で20年来地産地消に取り組みながら、NPO法人パノラマと連携して困難を抱える若者たちの就労体験受け入れや、お弁当を届ける活動「助け合いシェアごはん」などにも精力的に仕掛けています。

「コロナ禍で、目に見えない貧困やDVが増えていると感じます。緊急事態宣言下では、支援に訪れることすら難しいなかで、どんどん孤立化は進んでいきます。助け合いシェアごはんで食事提供をして感じるのは、支援を受けられる人の喜びのうち、食事の提供が2割で、支援者と話ができることが8割。人のふれあいがのエネルギーがどれだけ大きいかがわかります」と、植木さん。椿さんはそんな植木さんの活動に敬意を表し、ナチュラーレ・ボーノの看板メニューでもあるバーニャカウダをオマージュしたソースをサラダのドレッシングとして使います

横浜市庁舎2FにあるTSUBAKI食堂。二十四節気をモチーフにしたデザインと、生産者の顔が店内に飾られている(写真提供:TSUBAKI食堂)

 

「横浜あおば小麦のつながり丼」は、障害がある人も困難を抱える人も、元気な人もそうでない人も一緒になって、「食」を真ん中につながることを諦めない、そんな粘り強い人たちのエネルギーによって支えられています。

「青葉区のエネルギーは本当にすごいっすね。皆さんに会って、話してみて、その背景を知って、やさしいけれども熱いっすね」――。

椿さんが受け取った青葉区の「つながり」。それが形になった「あおば小麦のつながり丼」から、食べた人はどんなメッセージを受け取るのでしょうか。

森ノオトは今回、椿さんと青葉区の主要プレイヤーをつなげて、皆さんの活動の背景をしっかり伝えたいと、メディアを通して青葉区丼の取り組みを応援することにしました。「読む青葉区丼」として、青葉区丼を召し上がった方全てに森ノオトの記事をお届けできるよう、ミニチラシを用意して地域の人の思いを伝えていきます。

青葉区丼から、横浜中心部と青葉区の人たちがつながりますように。そこからまた、農福連携や、地域スポーツの応援の輪が広がっていきますように。それを願って、青葉区丼から起こる新たなムーブメントをまた追いかけていきたいと思います。

「読む青葉区丼」はTSUBAKI食堂で青葉区丼を食べた方に配られる

 

Information
横浜の中心部と青葉区をつなぐ、TSUBAKI食堂「青葉区丼」 日体大FIELDS横浜応援企画!アスリート丼
青葉区丼に関わる青葉区メンバーの詳細記事は、森ノオトの特集「読む青葉区丼」でご覧いただけます。

TSUBAKI食堂presents「青葉区丼 後半」

日時:20211016日(土)~1031日(日)

1日限定20食(予約がおすすめです)

TSUBAKI食堂

住所:神奈川県横浜市中区本町6-50-10 横浜市庁舎2 LUXIS FRONT

営業時間:11:0023:00(感染症対策のため時間変動あり)

電話番号:045-211-4300

詳細はTSUBAKI食堂HPhttps://tsubakisyokudo.owst.jp/)またはFacebookページ(https://www.facebook.com/tsubaki.ygc)でご確認ください。

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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