(本事業は子どもゆめ基金助成活動として実施します)
森ノオトではこれまで、情報の伝え方を考えるワークショップツール「ローカルメディアコンパス」を発表し、メディアリテラシーについての事業に取り組んできました。2021年度は子どもと考える場をつくっています。 8月にはジャーナリストの下村健一さんを講師に「情報の海の泳ぎ方」講演会をニュースパークで開催しました。下村さんから学んだ経験をもとに、私たちは、子ども向けの情報リテラシーワークショップを構成し、地域で巡回開催する計画を立てました。
▼ひとりひとりが指針(コンパス)を持とう!ローカルメディアコンパスが完成しました
https://morinooto.jp/2020/03/30/mediacompasskansei/
▼「そ う か な」で情報の海を上手に泳ごう!下村健一さん講演会レポート
https://morinooto.jp/2021/08/20/shimomurarp/
情報リテラシーとはインターネットやテレビやラジオ、雑誌などで得られる情報をきちんと受け取り活用する力のことです。
誰もがインターネットを通じて発信できる世の中になり、真偽の不確かな情報も目にするようになってきました。IT時代を迎え、受け取るためのメディアや端末も多様化しました。便利な世の中になった反面、大量の情報の中から、自分が必要な情報を収集し、判断し、活用していく必要があります。
2021年度から「1人1台端末環境を令和の学校のスタンダードにしていく」ことを目指す、GIGAスクール構想が本格化しました。横浜市の公立小中学校では児童・生徒への1人1台のパソコンやタブレット端末の貸与が始まり、9月には緊急事態宣言延長を受けて端末を使った遠隔授業に踏み切った学校もあります。
小学1年生の私の娘も学校から持ち帰ったタブレットで自宅と教室をつなぎ、先生や友だちとコミュニケーションをとる日々を過ごしました。自宅で課題プリントを写真に撮ってクラスの提出箱に投稿している娘を見ながら、親である自分が娘をどうフォローしていけばいいのか、わからないままただ付き添っている状況でした。
1人1台端末を持つことが当たり前になっていく中で、子どもたちに情報の扱い方をどう伝えていくのか。
これは子どもたちに情報リテラシーについて教える機会であると同時に、私たち大人が自分の価値観をアップデートしながら、子どもたちの思考を知るための旅でもあります。
私たちは2021年12月、寄付月間のイベントの中で子ども向けの情報リテラシーワークショップ「子どもが学ぶ情報リテラシー ニュースをいろいろ読んでみよう」を神奈川県住宅供給公社1階のKosha33スタジオでテスト開催しました。
ワークショップは、全体で約1時間半。最初に情報リテラシーについてのミニレクチャーを、そのあとは「まわしよみ新聞ワークショップ」を行います。
ミニレクチャーでは、8月に下村健一さんに教えていただいた「そ」「う」「か」「な」のキーワードを用い、情報の受け取り方の注意点を伝えました。
資料は下村さんがウェブサイト「スマートニュース研究所」の中で主に学校関係者に向けて公開しているものを活用しています。
そして後半は、ジャーナリストの鈴木賀津彦さんに案内役をしていただいて、まわしよみ新聞のワークショップを開催しました。
まわしよみ新聞とは、2012年にむつさとしさん(観光家/コモンズ・デザイナー/社会実験家)が考案した「メディア遊び」です。遊び方が公開されオープンソースになっており、まちづくりや教育などの分野でさまざまな人たちによって活用されています。2017年には読売教育賞最優秀賞を受賞しています。
「まわしよみ新聞ワークショップ」は4〜5人1組のチームに分かれて、こんな流れで進めます。
(1)新聞を読んで気になる記事をハサミで切る
(2)どうしてその記事が気になったのかをみんなに伝える
(3)みんなが気になった記事をスクラップしてみんなの「まわしよみ新聞」を作る
12月のテスト開催では、神奈川新聞や朝日新聞などの一般紙に加えて、神奈川県を中心にタウン紙を発行する「タウンニュース社」が子ども向けに年に4回発行している「子どもタウンニュース」や、各社が発行している子ども新聞や中高生向けの新聞などを持ち寄りました。
参加したのは小学1年生から中学3年生までの7人の子どもたちと4人の大人です。
なるべく年代が幅広くなるように、また家族が分かれるようにチームわけをして、2つのテーブルでワークを始めました。
まずは好きな新聞を手に取り、記事を読みます。そして気になる記事を切り抜いていきます。子どもたちは、恐竜の化石発掘に関する記事、女性の活躍に関する記事など、さまざまな分野の記事から選んでいました。また占いコーナーや4コマ漫画を選ぶ子どももいました。1人3枚以上を目安にどんどん読んで、切り抜いていきました。
そのあとは、なぜその記事が気になったのかをグループのメンバーに伝えます。
興味がある記事だけを見ていくネットサーフィンと違い、紙の新聞は読む人が知らなかったり、関心のなかった分野のニュースも目に入ってくるのが特徴です。
また、記事の配置の仕方などを見て、情報のプロである新聞記者たちの考えに気づくこともできます。
何より読者である自分たちが、同じ紙面を見ていても人によって注目する記事が違うということや情報の受け取り方が違うという、「違い」に気づくことがポイントです。
鈴木さん曰く、このワークショップは世代を超えて会話ができることが醍醐味なので、子どもだけ、大人だけではなくて、大人と子どもが一緒に参加するほうがよいそうです。
大人はこう考えるんだ、と子どもが気づく機会となり、新聞はみんなで読むことができると知ることで、いろんな意見を聞けるようになっていきます。
家族ではない人、同学年ではない人の考えを聞き、同じ情報を見ても受け取り方がさまざまであるということを実感していくことが他者理解につながっていきます。
他者との違いを感じることが、自分を理解することにもなります。
2〜3月にワークショップを巡回開催するにあたり、協力団体を募りました。
横浜市中区で企業型保育施設を核に放課後の居場所事業や地域食堂に取り組むピクニックルーム、横浜市中区のコミュニティスペースKosha33ライフデザインラボ、横浜市青葉区の私設図書室たまプラーザ駅徒歩2分図書館(ぷらに)横浜市中区で子どもの居場所事業を行うみんなの放課後クラブ、横浜市港北区大倉山商店街のソーシャルスペース大倉山おへそです。
4回にわたって、各団体の拠点をお借りして開催することで、協力団体の皆さんの日頃の活動や地域のつながりを知り、共に活動をすることでさらに親交が深められることも楽しみです。
20年前は、一家で一紙の新聞を取り、一台のテレビをみんなで囲んで見ていました。同じニュースや情報を、家族みんなで受け取って共有していたのです。
家族で一つのニュースを受け取る「うちのニュース」時代から、それぞれの端末に情報が届き家族がバラバラにニュースを受け取る「自分のニュース」時代への移行を経て、ニュースをタネに家族で話す時間も減ってしまったように感じます。
インターネットの発達で、良い意見も悪い意見も見えるようになってきました。自分好みの情報が出やすくなるネットの仕組みにより、考え方が偏ってしまったり、答えが既にネットにあると思い込んで自分で考える努力を怠ったり、批判が怖くて自分の意見を言えなかったりというのは大人でも陥る状況です。
情報をちゃんと受け取り発信する力を身につけることは、要らぬ分断を避けることにつながるとわたしは考えています。
考えの違う他者の意見を受け止め、自分の意見を言うことができるようになるために、安心できる環境で練習できるといいですよね。
このワークショップをきっかけに、ご家族で、地域で、対話を生み出し、日常的に意見交換できるようになっていくといいなと思っています。
子どもが学ぶ情報リテラシー ニュースをいろいろ読んでみよう
日程・会場
2月23日(水・祝)10:30〜12:00 横浜上野町教会(中区)
2月27日(日)10:00〜11:30 大倉山おへそ(港北区)
3月12日(土)10:00〜11:30 ライフデザインラボ(中区)
3月19日(土)10:00〜11:30 たまプラーザ駅徒歩2分図書館ぷらに(青葉区)
参加費:無料
参加対象:小学生〜中学生、保護者の参加も歓迎します
主催・問い合わせ:NPO法人森ノオト、localmedia@morinooto.jp
共催:株式会社ピクニックスクール・たまプラーザ駅徒歩2分図書館ぷらに・みんなの放課後クラブ・大倉山おへそ
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