私が荒木典子さんに初めて会ったのは、「はまふぅどコンシェルジュ養成講座」に参加した2018年夏でした。横浜市の開港記念館で「活躍する先輩コンシェルジュ」として自身の活動を発表し、自宅での保育つき料理教室「nori★nori★kitchen」や、生協での商品開発について発表していたのを覚えています。その時に名刺交換し、「いつか、何かでご一緒したいですね」と挨拶を交わしました。荒木さんははまふぅどコンシェルジュの8期で、私は13期生です。
それからわずか1カ月後、森ノオトで企画した「横浜市の地産地消を未来につなぐ文化祭」に、荒木さんは親友のなかおわかこさん(トップ写真左)とともに参加してくれました。このプロジェクトは、講座形式で横浜の地産地消について学び、受講生は半年かけて「文化祭」で実施するイベントを農家さんと一緒に企画し実行する、というもので、荒木さんはパン講師のなかおさんと「ぶんこのこんぶ」を使ったクッキングプログラムを企画しました。講座中はとにかくいつも明るくノリノリで冗談を言い、「ノリノリ典子」とニックネームがついてメンバーを笑いの渦に巻き込みました。文化祭当日は、はまふぅどコンシェルジュ仲間と一緒に金沢区の海で収穫された昆布を使って、ボリュームたっぷり、爆笑の講座をやり遂げました。その後、「森ノオトの活動を応援したい!」といって、NPO会員になってくださった荒木さん。応援マインドが高い方だな、と感動しました。
その後、私は荒木さんに誘われ、文化祭メンバーと一緒に「ぶんこのこんぶ」の収穫体験に行きました。昆布などの海藻類はCO2の吸収力が高く、酸素の排出量も多いため、地球温暖化の救世主と注目を集めています。八景島シーパラダイスのすぐ近くの藻場で昆布を養殖する幸海ヒーローズを応援し、「ぶんこのこんぶを使った地産地消の加工品を開発したい」と構想を語ってくれました。
2021年4月には、地産地消のレトルトカレーの開発者・マサラモアの中尾真紀子さんと「横浜おいしんぼエンジェル」を結成。横浜の農家による旬の作物やはまふぅどコンシェルジュの開発した加工品を各地のマルシェやTSUBAKI食堂での定期的なマルシェで販売しています。
どんなイベントも、プロジェクトも、全力で取り組み、パワフルな笑顔でみんなを元気にする典子スマイルが生まれた背景には、今年成人式を迎えた愛娘の存在がありました。
高校卒業後に青森県から上京し、大手企業に就職した荒木さん。若いころは料理が得意ではなかったそうですが、仕事のかたわらに叔母さまが主宰する料理教室に通ううちに、少しずつ料理のコツを得て、「50代後半になって仕事を辞めてから、家で料理教室でもできたら」と漠然とした夢を抱くようになりました。しかし、仕事も楽しくやりがいがあったので、結婚、出産後も夢中になって働いていたそうです。
そんな荒木さんの転機は、娘さんが小学校2年生の時に、謎の頭痛や発熱で学校に行けない期間があったことです。仕事が忙しすぎてお子さんのSOSが聞こえず、「娘が相談できない壁をつくっていた」と当時を振り返ります。責任のある仕事を任され充実した日々を送っていましたが、2010年の5月、荒木さんは娘のために仕事をやめる決断をします。「ママ、仕事辞めるよ、と伝えたら娘は“ありがとう”と。一緒に過ごす時間が増えたら、娘に元気が戻ったんです」
仕事を辞めて、ぽっかりと時間ができた時に思い出したのは、自宅での料理教室の夢。1年は勉強しようと、生協の食育リーダー養成講座で学び、生協で食育活動に取り組みました。準備期間を経て、2011年4月に自宅での保育つき料理教室「nori★nori★kitchen」をスタート。「一つの料理がいくつものレパートリーに変化する楽ウマレシピが典子流」と、日々の献立づくりを強力にサポートするレシピが地域で評判を呼ぶように。そのうちに地域で食に関する仲間が増え、2012年に訪れた「野菜レストランさいとう」で運命の出会いが待っていました。齊藤良治シェフに「はまふぅどコンシェルジュ」のことを教えてもらい、「ここに私のやりたいことがある!」と直感が働きました。
「農業や直売の体験、横浜の農家ツアーなど、生産者の顔が見えて、食べておいしいだけじゃなく、応援したい、伝えたい!という気持ちが強まったの。思えばここが私の人生のターニングポイントかもしれない」
荒木さんは2013年8月にはまふぅどコンシェルジュとして認定されました。今でも認定書はスマートフォンですぐ取り出せる場所に保管しています。
その後、はまふぅどコンシェルジュとして、港北区の大倉山の保育園での食育活動や、大倉山のコミュニティスペースで毎月1回ワークショップを中心としたイベントを開催、荒木さんのランチは大盛況でした。また、大倉山ミエルのハチミツを使ったレシピ提案など、「コンシェルジュになってから、地元との関わりがどんどん深くなっていった」と言います。新しいプロジェクトで人と出会うたびに、活動の幅がますます広がり、仲間が増えていく。荒木さんが描くループはどんどん大きくなっていきました。
「でもね、挫折もあるのよ。一度、地産地消ビジネス創出事業で加工品開発にチャレンジしたんだけど、小ロット対応は不可でどうしても採算が合わなくて、商品化を諦めたの。でもその時の情熱や加工品開発への思いはどうしても消えなくて」
そんな荒木さんは今、ぶんこのこんぶを使った「はまアイス」や焼菓子の開発に力を注いでいます。「昆布の味が濃く出ているアイスは自信作。ようやく思いが形になった」と語り、2022年3月26日には南部市場内のNANBU BASE(金沢区)で「ぶんこのこんぶ祭り」を開催します。横浜の地産地消と、横浜の里海を豊かにする活動を、はまふぅどコンシェルジュの仲間たちや、これまでのさまざまな活動で出会った人たちを大切にし、パワフルに巻き込みながら、大きく開催していきます。
そうそう、この3月はTSUBAKI食堂での18区丼企画「港北区丼」のプロデュースもしており、大忙し!「小松菜の小山晃一さんと出会ったのは、横浜の地産地消を未来につなぐ文化祭!」と、これまでに関わってきた人を常に盛り上げてくれます。森ノオトの主催するめぐる布市も常連で、日本の美しい食文化「箸」を正しく未来につなぐ「箸チューター」の活動でも布市オーダーのアイテムを使ってくれています。自身のSNSでも、常に「あのイベントがきっかけで出会った**さん」「そこからつながった◎◎さん」と、相手への敬意を持ち、感謝の気持ちを伝える荒木さん。「はまふぅどコンシェルジュのきっかけを作ってくださった野菜レストランさいとうへの2カ月に一度のお礼参りは欠かさないの」とチャーミングに笑います。
取材の時に「娘にね、ママが昼から地産地消のレストランに行ってワインを飲んで笑っていられるのは、私のおかげだよ!って言われたの」とコッソリ打ち明けてくれた荒木さん。あの時、仕事より家族を選んだことで、その時に思い描いていた夢が前倒しになり、はからずも地域にたくさんの仲間ができたのは、神様からのギフトだったのかもしれません。
そして、荒木さんが横浜の地産地消に力を入れたこの10年で、彼女の明るさ、パワフルな笑顔に救われ、元気をもらった人も少なくありません。仕事への情熱も、地域活動への熱量も、人への恩を大切にすることも、常に全力で取り組んできた荒木さん。これからも、ノリノリタイフーンから目が話せません。
荒木典子さんのホームページ
http://nori-nori.biz/school/
ぶんこのこんぶ祭り
日程:2022年3月26日(土)10:00〜17:00
会場:NANBU BASE(横浜南部市場)
プログラム:
・こんぶ収穫を祝うセレモニー
・こんぶトークショー
・ワークショップ
・ゲーム
・クッキング教室
・マルシェ
主催:幸海ヒーローズ
共催:横浜おいしんぼエンジェル、水産女子
https://sachiumi.com/
TSUBAKI食堂「港北区丼」
前半:2022年3月15日まで
後半:2022年3月16日〜3月31日
1日限定20食(予約がおすすめです)
TSUBAKI食堂
住所:神奈川県横浜市中区本町6-50-10 横浜市庁舎2階 LUXIS FRONT内
営業時間:11:00〜23:00(感染症対策のため時間変動あり)
電話番号:045-211-4300
詳細はTSUBAKI食堂HP(https://tsubakisyokudo.owst.jp/)またはFacebookページ(https://www.facebook.com/tsubaki.ygc)でご確認ください。
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