
「森ノオトを支えるプロフェッショナルたち」第4回はそんな相澤さんに、仕事への向き合い方、森ノオトへの思いを伺いました。
何をやっているのかわからない謎の会社?その中身は……
2026年1月。森ノオトの理事を担ってくださっている株式会社plan-Aの相澤さんへの取材日程が決まり、初めてお会いするということでドキドキしながら会社のホームページ等を拝見していると、とある焦りが湧き上がりました。
「ま、まずい……調べれば調べるほど、よくわからない」
不動産開発からハウスメーカーのプロジェクトデザイン、創業支援や次世代起業家育成など、非常に多様なことに取り組まれている方、勢いがとてもあってパワーに満ちあふれている方というのは、plan-Aのホームページや相澤さん個人のSNS等を拝見していても浮かび上がってきます。が、読み込もうとすればするほど実態をつかめていないような気持ちになる、とても不思議な方という印象でした。これはもうご本人にお会いしてみるしかない!と、わくわく半分、緊張半分で取材当日を迎えました。
ご自宅は森ノオトのご近所ということで、取材場所の森ノオト事務所にお越しいただきました。

インタビュー場所を森ノオト事務所にしていただいたことで、あまり肩肘張らずにインタビューできた気がしています
現在は横浜市中区を拠点に、共同事業体として横浜市の次世代起業人材育成拠点「YOXO BOX(よくぞボックス)」の運営受託もされていますが、もともとは関内が本社のローカルディベロッパーで勤務されていたという相澤さん。会社に所属していた頃から本人も「何をやっているかわからない」と、仕事相手からよく言われる自覚はあったそうです。
所属していた会社はもちろん、取引先の新規事業開発等をも手伝い、結果的にそれが会社の売り上げにつながっていたものの、徐々に社内外問わず「なぜ独立しないのか」と問われることが増えてきて、気がつけば独立を意識するようになってきたのだとか。
実際にplan-Aを設立したのは2018年。不動産開発から人材育成分野へ事業領域は広がってきていますが、「やっていること、やりたいことは会社員時代と何ら変わらない」と話す相澤さん。
今でこそ自身の仕事を「成長支援」というキーワードで言語化できてきましたが、「自分は何ができて、何者なのか」という問いは、長年続いていました。

とても誠実にインタビューにお答えいただきました。意思の強そうな目が印象的な相澤さん
不動産開発や創業支援、次世代起業人材育成まで幅広い業務内容
相澤さんは、ちょうど独立のタイミングで横浜市の次世代起業人材育成拠点「YOXO BOX」に関わり始めます。最初のうち、plan-Aの役割は、「YOXO BOX」に関わるスタートアップ企業や拠点そのものが関内のまちにうまく溶け込めるよう立ち回ることでした。
YOXO FESなどのイベントを通して少しずつ地域での認知度を上げ、スタートアップをまちの文化に馴染ませていく中で、スタートアップ支援のノウハウが見えてきた頃、縁あって富山県で「SCOP TOYAMA」という創造支援拠点整備を行うことになり、最終的にはハード整備だけでなく、創業メンバーの支援といったソフト面まで一体的に引き受けることになりました。

plan-Aがスタートをプロデュースした創業支援センター/創業・移住促進住宅「SCOP TOYAMA」 (写真提供:株式会社plan-A)
その後「SCOP TOYAMA」の取り組みがひと段落し、横浜に戻ってきて「YOXO BOX」を見た際、スタートアップ企業の存在が関内の中で一定程度知られてきた中で、次は近隣の他施設等との役割分担を明確にする戦略の整理が必要だと感じたそうです。
そういった問題意識を持っていたところ、横浜市が進めていこうとする方向性と合致し、前向きな気持ちで新規事業に取り組むことになりました。
具体的には、昨年度までスタートアップ企業のビジネスの成長・発展を加速させるための専門家によるメンタリングや事業会社とのマッチング、各種のイベント・セミナー等を実施するプログラムの会場として活用されてきた「YOXO BOX」の支援の軸や対象を見直しました。
これまで支援を行ってきたスタートアップやベンチャーを含め、さらに「次世代」というキーフレーズを掲げて中高生や若い世代の起業家精神を高める機会を提供することで、より地域とつながる、より裾野を広げる方向へ舵を切ることにしたのです。また、会員制度を設けて支援する側とされる側を確保し、地域連携マネージャーを常駐させ、「YOXO BOX」を相談窓口としても機能させています。

今年度から「起業する次世代をまちぐるみで応援するまち」を目指すYOXO NEXT(よくぞネクスト)というプロジェクトも始まっています (写真提供:株式会社plan-A)
その他、相澤さんは認定NPO法人こまちぷらすが「まち全体で赤ちゃんの誕生をお祝いし、子育てを応援できる社会になること」を目指して実施している「ウェルカムベビープロジェクト」の選考委員を務めたり、数多くあるハウスメーカーの中でも歴史があるパナソニックホームズ株式会社が手がける不動産開発事業の伴走支援を行ったりするなど、その事業領域は多岐に渡ります。
チームのモチベーションを最大化するプロジェクトマネジメント
開発をやろうが、新規事業をやろうが、「関わる人たちのモチベーションを最大化させる」という根幹の部分、チームをネガティブにせず、その人自身がプロジェクトに関わる意義を見出せるようにすることをいつも徹底しているという相澤さん。
プロジェクトマネジメントをする際には、一緒に仕事をする相手のタイプに合わせてやり方を変えるそうです。「心に火をつけた方がいいタイプ、自由に泳がせた方がいいタイプ、お尻に火をつける必要があるタイプなど、相手に合わせて対応を変えています。そうすることでプロジェクト全体を円滑に回し、個々の経験値を引き上げることを目指しています」と語ります。一方、締切遵守や品質担保には厳しく、その上で、相手に何を求められているのか、今回の事業を通してどんな価値を残せるのかを突き詰めていくことを基本としています。

常に相手のことを考え、またplan-Aが関わるべき理由に真摯に向き合う相澤さん(写真提供:株式会社plan-A)
また、お話を伺っていて相澤さんの「利他的精神」の強さを感じる場面が多々ありました。特に行政の新規事業では、「変化を起こさなければいけないのにいつも通りやっている場合じゃない」と相手に求められる以上に事業のことを真剣に考え、提案し、実働されることも多いようです。
そして、一つの案件について考える時に、その案件のことだけを考えるのではなく、他の案件にも活かせないかを常に考えている、とのことでした。常に「一石五鳥」を狙うことで、回り回って元々の役割のクオリティ向上にもつながるそうです。昨年度は、横浜市の次世代起業人材育成事業と、神奈川県の起業アイデア実現プロジェクトを連携することにも取り組みました。
また、もう一つ大切にしているのが、「誠実であれ」ということ。ここを大事にしていると、協力してくれる人が自然と増えていきます。
たくさんの事業を同時並行で進められている相澤さんは、どの事業も「絶対に手を抜かない」そうですが、そもそも多忙な相澤さんに、事業を引き受ける際の判断はどういう点なのかを聞いてみました。
すると、判断基準は予算などではなく、「この事業をわれらがやる意義は何なのか」というところを徹底的にチームで突き詰め、「他の人にもできるのではないか」「plan-Aでないとできないものなのか」を考えたうえで、自分たちがやる意義を感じた事業のみを引き受けているそうです。
“子育て”はすべての営みの源泉。なればこそ、それを中心に据える
「子どものことを考えることが社会全体にとってよい影響をもたらすという考え方と、利他的精神とが、広く人の営みの原点にあるといい」と相澤さんは語ります。
「不動産開発を仕事にしている時には、面的な開発をするデベロッパーは“子どもの育つ環境”まで考えが及ばないこともあります。しかし、子どもが育つ環境として不動産を考えるのは開発者の責務です。子どものことを考えて仕事ができるかどうか、それが私の独立の決め手になりました」
ビジネスやスタートアップも、相手が何に困っているかを抽出することから始める点では、子どものことを考えることと本質的に通じる面があります。「世の中の困りごと」は日常生活の中にヒントがありますが、普段から意識して観察していないと相手が何に困っているかわかりません。
ただ、こういった視点は現在の教育カリキュラムでは十分に扱われていないため、今は親が教えるしかなくなっています。今年度から始まった、横浜市が「まちぐるみで起業を応援するまち」を目指すプロジェクト「YOXO NEXT(よくぞネクスト)」は中高生を対象としていますが、このプロジェクトをうまく活用して、例えば将来的に探求学習のカリキュラムに移行していくようなことはできないか、と相澤さんのアイデアは尽きません。
なお、「YOXO NEXT」は今年度中高生対象のプログラムですが、先日横浜銀行とのコラボレーションで実施した「はまぎん おかねの教室・しごとの教室 in YOXO BOX」では小学生も参加可能にしてみたところ、中高生だけでなく小学生の申し込みも多く、潜在的な需要を確認できたんだとか。
こういった実績を積み上げていくことで、来年度以降の対象年齢をどうしていくかという議論を展開できるようになります。次の展開を見越した仕掛けを随所に忍ばせていくところが常に「一石五鳥」を狙う相澤さんらしいなとお話を伺って感心しきりでした。

2月1日に開催された「はまぎん おかねの教室・しごとの教室 in YOXO BOX」。多くの参加者で賑わいました(写真提供:株式会社plan-A)
子育ては最強のプロジェクトマネジメント
これだけ多忙な中でも、娘さんの保育園の送迎を担当するなど、仕事のやり方も“子育て中心”で組み立てているという相澤さん。
「子どもって今の時期はもう本当に今しかないし、後になると関わりたくても関われなくなることの方が増えていく。そこを後悔しないよう、そこだけはもう是が非でも守るという気持ちでやっている」と熱く語ってくれました。
そう話す通り、たとえ遠方に出張に行っていても、お迎えの約束をしていたら必ず行く、発熱の電話がかかってきたら迎えに行けるかどうかを真摯に検討し、判断する。そういった積み重ねで子どもとの信頼関係を強固なものとして、子どもたちが隣を取り合うぐらい大好きなパパになるのだろうなあと感じました。まさに、「子育ては最強のプロジェクトマネジメント」だとご本人がおっしゃるのも納得です。
一方、ご近所に引っ越してきたというご縁があるとはいえ、どうして多忙な中森ノオトに関わってくださっているかについても尋ねてみました。
まず出てきた言葉は、「森ノオトは、良くも悪くも温度感がある」というもの。
「清濁併せ持っていて、失敗もちゃんとするところがすごく人間らしいんですよね。森ノオトはローカルメディアでありながら、まちづくり活動にしっかりと関わっていて、真剣にやっていたらキレイごとだけでは済まないダメな面もしっかり出てくるよね、というところに真摯に取り組んでいる団体。森ノオトが苦しんでいる時には助けなければと感じます」(相澤さん)
理事や監事の専門領域が異なるため、それぞれが「この分野は自分が見る」という意識を持って森ノオトに関わっているとのことでした。

森ノオトのビジョン・ミッションを決める会議にも同席してくださった相澤さん。自らが議論を先導するのではなく、そっと寄り添いながら大事なところで一言コメントをくださるスタンス
真っ直ぐに子どもたちの未来を見据えている相澤さん。お話を聞く中で、子どもたちが生きていく社会の未来のために自分にできることは全部やるぞという気概を感じました。
私と同じ子育て世代に、相澤さんのように子どもたちの未来を徹底的に考えて、社会に還元しようとする方がいることがとても心強く、自分は子どもたちのために何ができるのかを改めて考えるきっかけになりました。同時に、相澤さんの「一石五鳥」の考え方は、これまで私が仕事で大事にしていたことにとても近く、育休復帰後、環境変化や転職などが重なり、少なくともこの一年は目の前のことに必死で、その感覚が鈍っていたかもしれないと気付かされました。
お話しているだけで相手のモチベーションをそっと引き上げてくれる相澤さん。インタビューの機会をいただいたことに感謝しつつ、私も今しかない子育てにしっかり向き合いながら、歩みを止めず、あちこちにアンテナを張り巡らせて少しずつでも子どもたちにとってよりよい社会になるように進んでいきたいと勇気をいただきました。
<Information>
株式会社plan-A
所在地 〒231-0011 神奈川県横浜市中区太田町6-84 神糧ビル403
横浜市次世代起業人材育成プロジェクト YOXO NEXT
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