たまプラーザの「まちのコイン」って、どんなお金なんだろう?地域通貨の使い方って興味津々。しかもスマホで使えるそう。とは言うものの、どんなものなのか全く想像がつかない私。藤本さんに「まちのコイン」についてお聞きすると、まず最初に「お金ではないですよ」との一言。「コイン=お金」とだと思っていた私はちょっと拍子抜け。逆に興味が湧きました。「円に換金できないし、いわゆる地域通貨とは違う」と藤本さんは続けます。
突然ですが、森ノオトの読者の皆さんは「お金」というとどんなイメージがあるのでしょうか?
「(お)金」を辞書で引くと、「貨幣」という言葉が出てきます。さらに貨幣を調べると「商品交換の中立ちとなり、その価値の標準となるもの(※小学館『国語辞典』)と記されています。 お金の概念は昭和から平成を経て令和の今、貨幣とはちょっと違った意味合いがあるのかもしれません。「換金できない」というまちのコインには、そのヒントが隠されているように思います。
「まちのコイン」は、鎌倉市の株式会社面白法人カヤックが、「使えば使うほど、人と人が仲良くなるコミュニティ通貨(地域通貨)」として立ち上げたサービスです。鎌倉市や小田原市では、行政が主体となって既に運用されていました。たまプラ・コネクトは、なぜこのサービスに参加することにしたのでしょうか。
藤本さんは、横浜市と東急が進める住民参加型・課題解決型のプロジェクト「次世代郊外まちづくり」から生まれた、地域団体「たまプラ・コネクト」の活動を通じて、困っている人の課題と解決とつなぐ仕組みづくりを模索してきました。各地の地域通貨も先進事例として視察する中で、円に換えられるような地域通貨は、商品券的な使われ方をするため、共助のコミュニティづくりを目指すたまプラーザには向かないと考えたそうです。
また、「助けてもらったらマイナス500」「助けるとプラス500」というような、通帳方式も他地域を参考にやってみたことがあります。が、「通帳は持ち歩かないから、あまりうまくいかなかったんです」と振り返ります 。
2019年12月ごろ、「まちのコイン」について知り、円に交換できないことはたまプラーザで目指す共助の考え方と合うことや、使いやすい設計になっていること、既に先行事例があることから、たまプラ・リビングラボの一環として、たまプラーザでやってみることになったそうです。たまプラ・リビングラボは、横浜市・東急と NTT ドコモ、NTT が、たまプラ・コネクトなどの地域団体と連携しながら、IT を活用して、たまプラーザの地域課題を解決していくプロジェクトです。
ワークショップを通じて意見を出し合い、たまプラーザのまちのコインのテーマは「世代を超えて育ち合う」、通貨名は「プラ」に決まりました。
まちのコインは、アプリをインストールして登録することで、誰でも使うことができます。2021年1月26日現在、登録人数は645人で、その内訳はたまプラーザエリアの住民が64%、たまプラーザエリア以外の住民が27%、不明が9%となっています。藤本さんは「だれでも使えるけど、たまプラーザでしか使えない」と、その仕組みを説明します。
使えるスポットは、コミュニュティ拠点の横浜市たまプラーザ地域ケアプラザや3丁目カフェなど、24カ所あります。お店の宣伝ではなく、あくまでもたまプラーザのまちの活性化」を目的にしているため、お店で商品券として使えるようにはしないことを運用のルールとしています。
「プラ」をためるメニューは、「公園掃除をすると300プラもらえる」(スポット:たまプラ・リビングラボ事務局/美しが丘公園)や「牛乳パックリサイクル10枚で10プラ」(小岩井牛乳横浜ミルクセンター)「あなたのイチオシの一皿を教えると100プラ」(たまプラ・コネクト)などがあります。
「プラ」の使い方としては、「美容院での肩と首のマッサージ<500プラ>」(美容室マカナ)や「紹興酒の瓶、差し上げます<200プラ>」(中華料理黒龍麺百花)や「今日のお店の賄い飯を買う権利<500プラ>」(炭火焼肉酒房 雷音)など、お店のメニューにはないちょい足しサービスを受けられます。
公園掃除などは実は仲間づくりの場でもあります。同じ価値観の方と自然と仲良くなれたりしますし、もらったプラはスポットとなっているお店などで通常の行っていないプレミアムな体験ができるというのも興味深いです。 ホームページ上でランキングを発表してゲーム性を持たせたり、プラを使った時に“チャリン”という音が鳴ったりと、遊び心のある仕組みやサービスが散りばめられています。
今後の発展として、どの様に活用したいかを伺うと、スポットを巡るポイントラリーやオリエンテーリングなどもアイデアもあるそうです。また、LINEの通信機能のあるサービス(たまプラボット)と連携してこんな構想もあるのだとか。「かぼちゃをいっぱい煮ちゃったんだけど、誰かいらない?と、おばあちゃんから子育て世代に気軽にコミュニケーションできたらいいなと。お金だと、値段が基準になってうまい下手とか、比較になっちゃうけど、サービスの物々交換を気軽に相談できたり、頼めたりするようになっていけばいいですね」と藤本さんは語ります。
藤本さんへの取材後、私も早速たまプラーザのまちのコインのアプリをダウンロードしてみました。
スポットとして登録されている昭和調剤薬局と3丁目カフェ、気になった中華料理黒龍麺百花さんの瓶を見に行ってきました。 お店の店員さんにお話を伺うと、「イベントなどで集まることができない今地域の活性化につながる何かができるといいし、何ができるか考えていきたい」と話していました。
お金の場合は値段が基準になってしまい、どうしてもサービスとしての質を比べてしまいがちです。新聞が溜まってしまい重くて持てない時などや、高い所の電球交換など、ちょっとした何かを頼めたり、スマホなどの操作方法が聞けたり、気軽に何かを相談することができる気持ちのサービスの交換が「プラ」なのではないかと取材を終えて思いました。自分たちの生活はお互い様の気持ちで守っていく、たまプラーザの魅力がまたひとつ増えたように思いました。 まちのコインは当初2020年春のスタート予定でしたが、感染症の影響で半年遅れて同年10月に導入となり、2021年3月末まで実証実験中とのことです。今後どういった形に発展していくかが楽しみです。
1月30〜31日には、たまプラーザ団地やピープルワイズカフェなどで「まちのコインが『少し』集まるイベント」が予定されています。この機会に、実際に登録して参加してみて下さい。
<Information>
「まちのコイン たまプラーザ」
参加しているお店やプロジェクトはこちらから。
https://coin.machino.co/regions/tamaplaza
まちのコインが『少し』集まるイベント
日時:2021年1月30日(土)31(日) 10:00 〜16:00
https://www.facebook.com/peoplewisecafe
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