自ら畑の世話をする。地域に還元!地球に優しい!CSA型農場なないろ畑ってどんなところ?
地域住民がサポーターになって、自らが畑の世話をする。家庭菜園やレンタル畑とはちょっと違う農業のあり方「CSA( Community Supported Agriculture )」ー。欧米では一般的な仕組みとのことで、日本でも徐々に広がってきています。神奈川県大和市を拠点に、CSAスタイルで農園を運営する“なないろ畑”。農場責任者の「ミッチェル」こと、畑中達生(みちお)さんは東急田園都市線沿線の農業を盛りあげるべくチャレンジのまっただ中です。

直売所やマルシェでは地場産野菜がよく売られています。地域で作られ、新鮮でとっても美味しい。採れたてのお野菜はなんだかピカピカにも見えてきます。みずみずしさがやっぱり違う。

小さい頃に食べていた家庭菜園のきゅうりやトマトはもいでそのままポリポリ、カジカジ(笑)。農薬などを使っていないのでそのまま食べていたのですが、なないろ畑のお野菜はそれがそのままできるのです。

座間のなないろ畑、作業中の雨のあと、空に大きな虹が!

私も半年ほど前から畑を手伝いに行っています。この体験をもとに、あらためてなないろ畑の魅力を取材してきました。

なないろ畑の中央林間にある出荷所

市民農園ではなく、地域住民がサポーターになって生産者とお互いに支え合う新しい農業の形とはどんなものなのでしょうか?

なないろ畑の会員の種類は2通りあります。一つは、前払いで定期的に野菜を購入する「野菜会員」。もう一つは、年会費を支払って生産者とともに農業や出荷作業をおこなうサポーター会員です。草刈りや収穫した農作物の仕分けを手伝ったり、料理が好きな方は、収穫した野菜で賄いを作ることもあります。農作物の販売以外の収入が増えることで、安定的な農場運営につながります。なないろ畑では、サポーター会員だけでなく、野菜会員の方にもこうした積極的に作業にかかわってほしいと考えているそうです。

中央林間つるまの森の畑不耕起栽培園場の様子(写真提供:畑中達生さん)

会費を払っているのに“畑を手伝う”と聞くと、ちょっと不思議な気がします。なないろ畑から畑を借りるわけではないですし、畑をシェアしているわけでもないので、会員は収穫したお野菜は買わなければなりません。それでも、ここに惹かれて人が集まるのはなぜでしょう?

なないろ畑の魅力の一つに、土に触れられるという「実体験」があります。私の住んでいる田園都市線沿線は、横浜の中でも比較的自然の多い場所です。それでも、わが家には、田舎に住んでいた時のように家庭菜園ができる庭があるわけではありません。 “子どもに土を触れさせる体験ができる”という、教育の場でもあるのです。土に触れることは人間の五感を育てることに繋がります。これはとても大切です。

また、畑で働くことによって、農薬・化学肥料不使用のお野菜を作って食べられるという安心感や、それを地域で作る使命感が得られます。また、仲間ができるコミュニティの場にもなっています。

作業のお手伝いをすると、お野菜を2割引で買えたり、出荷所では賄いが安く食べられるのも励みの一つ。家庭菜園初心者・今後農業をやりたい人たちにとっては、農業のノウハウを学べる場でもあります。

なないろ畑で農作業中のミッチェルこと畑中達生さん

畑中達生さん(以下ミッチェルと記載)は空間デザイン設計施工会社の代表を務めています。町田市の鶴間公園で子どもや大人も楽しめる「トンカチ村」という木工やペイント体験も不定期で企画しています。建築が本業のミッチェルがなぜ畑を始めることになったのか?とても不思議に思いました。

 

ミッチェルはなないろ畑の先代、片柳義春さんが急逝したことで2020年11月28日に農場責任者に就任しました。

ミッチェルは15歳の時からサーフィンを始め、自然と対峙する経験を重ねながら「Save the Earth」の思いを強くしていきます。真剣に取り組む全てのことが、大地・地球のためであり、“やるなら責任があることをした方がいい”という思いから、空間をプロデュースする仕事の最後は建物ではなく、地球というスペースをプロデュースしたいと考えるようになったそうです。

「だから畑を選んだ」とミッチェルは言います。なないろ畑の農場責任者としてのオファーが来て1日考えてすぐにスタートを切ったと語ります。

また、ミッチェルには10年前から、寺家ふるさと村で有志のグループ「NOW TENKI(

ノー・テンキ)」を作り、そのメンバーで毎年お米と生姜を作っていたという経験もありました。

サーフィン中のミッチェル(写真提供:畑中達生さん)

*「なないろ畑」とは

「農業生産法人なないろ畑株式会社」の所在地は神奈川県大和市中央林間です。

20年ほど前に先代の片柳義春氏が設立。

現在は神奈川県大和市に2カ所、座間市に1カ所、長野県に1カ所の畑があります。

2021年11月に行われたつるまパークSDGs落葉大作戦。公園から集められた落ち葉はなんと260杯!私も運ぶお手伝いをしました

20年以上前から、「エコ」を言ってきたというミッチェル。なないろ畑の農場責任者に就きこれまで焼却処分されていた落ち葉を使って野菜を育てる「つるまパークSDGs落葉大作戦」を仕掛けます。落ち葉とヌカと水を混ぜて発酵させた“踏み込み温床”を、なないろ畑の苗づくりに使用。落ち葉は腐葉土に生まれ変わります。

 

「踏み込み温床はね、」とミッチェルが教えてくれました。落ち葉とヌカをミルフィーユ状に14層くらいに重ねて踏み込むと50℃くらいに温度が上がります。これが苗を育てる温床育苗ベッドになるのです。小さいポットに種を一つひとつ蒔き発芽させます。そうして発芽した苗を畑に定植させます。落ち葉の腐葉土は畑に戻します。畑に戻った腐葉土から育ったお野菜はつるまパークで販売されます。全てが循環しているのです。

踏み込み温床の様子(写真提供:畑中達生さん)

落ち葉を利用することは昔からの循環型の農法でやっていることで、「今の慣行農業ではやらなくなっただけ」とミッチェルは言います。

畑で作られた野菜は、各地での直売のほか、2022年5月から地域の鶴間小学校への給食の提供も決まりました。配達はミッチェル自ら行うことも多いそう。その他、地域の八百屋さんや飲食店にも出荷します。森ノオト読者のみなさんならお馴染みのキッチンカー・コマデリさんや青果ミコト屋の「micotoya house」さんでも使われているそうです。このほか、南町田でコミュニティ喫茶「cosoadot」を運営する中山綾子さんがプロデュースして鶴間公園にオープンした「BEER&CAFEつるま食堂」でも、今後なないろ畑の野菜が食べられる予定だそうです。

「つるまの森」での直売の様子。直売では、旬の野菜が並ぶ。販売はサポーター会員さんが手伝っています(写真提供:畑中達生さん)

中央林間にあるつるまの森不耕起栽培圃場の入り口には、ミッチェルが手作りした直売所があります。お天気や収穫にもよりますが、大抵毎週水曜日の10時から直売をしています。旬のお野菜は午前中で売り切れになることも多々あります。

こちらの直売所には、毎週いらっしゃる常連の方がいたり、小学生が計り売りで人参1本を買っていったり、調理の仕方を聞く方もいたりと、地域コミュニティの場になっています。

旬のお野菜は店先に並んでいなくても畑にあることも。「ほうれん草収穫してきて」なんて畑作業中のスタッフに声を掛けることもよくあります。収穫したものがその場で手に入る。生産者も消費者も顔の見える関係って素敵なことだと思いませんか?

直売所の情報は季節や天候で変わることがありますので、インスタグラムなどの情報で事前に確認してくださいね。

温床育苗ベッドから育った苗

 

日没の畑。畑の農作業は大抵日が暮れるまで行います

畑は日没の暗くなる手前までの作業です。畑の片付けが終わって解散する時ミッチェルは最後までニコニコ笑いながら手を振ってくれます。

毎日朝早くから野菜を通じて、人と地球に向き合っているミッチェル。「育てたお野菜がちゃんと出荷できるようになった時が一番うれしい瞬間だね。その次はそのお野菜を美味しいと言ってくれた時」と言います。一生懸命育てても、ちゃんと出荷できるお野菜ができない時もある。失敗する時もあるのです。そんな畑の経験が、出荷できる喜び、美味しいと言って食べてもらえる喜びにつながっているのだと思います。話を聞いているだけで、農作業で土に触れている時や、大地を裸足で歩いたときの、あたたかくふかふかした感じや、真逆のひんやり冷たく気持ち良い感覚。そんなことを思い浮かべ、ふんわり優しい気持ちになりました。

 

私も畑が大好きです。土と触れ合って整地をして畝を作り、種を蒔いて野菜の成長に毎回一喜一憂。雨が降らないと心配し、暑くなりすぎても心配です。

食べることは生きることに通じます。循環型の野菜作り、地球そのものが教育の場であると常々思います。

私がミッチェルに教わって、種を蒔いて草刈りをして育てた蕪。ちゃんと育って出荷されたことが、とても嬉しいです

地域コミュニティでもある「なないろ畑」、一度見学に来ませんか?

Information

農業生産法人なないろ畑株式会社

Instagram: @nanairo.batake

直売所:

◆「つるまの森」不耕起栽培園場

毎週水曜 10時〜16時(基本)

神奈川県大和市下鶴間9丁目51 東急田園都市線中央林間駅徒歩15分

 

◆「つるまパーク」毎週日曜 9時〜16時(基本)

東京都町田市鶴間2−5−11 東急田園都市線・南町田駅直結

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この記事を書いた人
塚原敬子ライター
2000年に青葉区に引っ越してから早20年、長男は藤が丘で産まれました。 その頃、これからは介護だ!と介護福祉士やアロマ、ヨガの資格を取りました。「健康は自分で作るもの」がモットー。月や星、石や植物が大好きで山や海での拾い物多し。
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