
「すすき野たまりんば」ってどんな場所?
地域福祉サロン「すすき野たまりんば」は、この地域のお買い物スポット「すすき野とうきゅう」のちょうどお向かいにあります。ときどき前を通りかかっては「地域福祉サロンってどんな場所なのかな?」と気になっていました。

「すすき野たまりんば」入り口の案内プレート
入り口の案内プレートには「憩いの場 すすき野たまりんば どなたでもお気軽にお寄りください」の文字が。誰もが気軽に立ち寄れる場所であることがわかります。
地域福祉サロンは、コミュニティカフェなどとも呼ばれ、仲間づくりや健康づくりを目的とした場所です。
喫茶や軽食を楽しむことができ、地域で孤立しがちな人たちのふれあいの場、相談の場でもあります。
ここは地域住民でつくるNPO法人すすき野たまりんばが運営しています。
さっそく中へ。施設内は白を基調とした明るい雰囲気です。

店内の喫茶スペース
テーブル席でランチを楽しんでいた女性が私に声をかけてくださいました。
「私、ここに引っ越して来てまだ間もないのよ」とおっしゃいます。
初めて出会う人とでも、気軽に声をかけ合える場所。
「すすき野たまりんば」はそんな心なごむ、ふれあいの場です。
「すすき野たまりんば」のあゆみと活動
今回、お話をうかがったのは代表の宮崎泰雄さんです。
この場所の開設、運営を支えてこられた地元有志グループの一員で、当初はすすき野連合自治会の会長を務めていらっしゃいました。

「すすき野たまりんば」代表の宮崎さん
10年前の立ち上げの背景には、すすき野地区の高齢化がありました。当時すでに築40年を超えていたすすき野団地では、住民の高齢化が顕著に。自分たちで地域の課題を解決しようと、多くの有志メンバーが開設に向けて力を合わせたそうです。
「すすき野たまりんば」はこの10年、地域のために大きく二つの役割を担ってきました。
まず一つ目には、地域住民が望んでいることをできるだけ解決し、それぞれの悩みに寄り添う。核家族化、少子高齢化などから派生する多くの問題を、行政の支援だけでカバーするのは困難です。子どもや高齢者の見守り、医療や介護の問題、生活支援など、待ったなしでの対応が求められています。
そして二つ目には地域交流の場、対話ができる居場所をつくること。
あらゆる年代で、孤立化は大きな社会問題です。コロナ禍以降の急速な街のデジタル化も、その一因になっていないでしょうか。タブレットでの注文やセルフレジでの会計は効率的で、目的もハッキリと伝えられますが、対話のない世界になったようにも思うのです。心なごむ場所が家庭や職場、学校以外にもあることは安らぎや張りあいにつながるでしょう。
宮崎さんはこの10年間について次のようにお話してくださいました。
「ここはNPO法人として立ち上げて10年目だけど、その前から5年以上の準備期間をかけて、じっくり取り組んでいます。多くの人の意見をすり合わせて活動していくのは大変なこと。それぞれの思いがぶつかり合うこともあったしね。でも『地域のため』という同じ思いがあるからやってこられたんです」
またNPO法人としての運営については「資金繰りはいつも厳しいです。ここはみなさんの善意で成り立っている場所なんですよ。喫茶の売り上げや寄付が財源だし、業務は30~40名のボランティアスタッフが担当してくれています。よく10年続いているなぁ、なんて思いますよ」と振り返ります。
「でも目の前に困った人がいれば寄り添う必要があるし、地域の人たちがこの場所を大切に思ってくれていることが何よりもありがたいと思うんだよね」
さまざまな葛藤を抱えながらも、着実に活動してきた10年間だったことがうかがわれます。
「居場所」体験を楽しむ
さて、ここで居場所としての「すすき野たまりんば」の楽しみ方をご紹介しましょう。
取材にうかがった日はイベントDAYで「おりがみ教室」が開催されました。ドリンクと材料費、2時間の体験費用をすべて含めて400円の参加費です。これはぜひ、参加しなければ!
この日は、花をあしらったグリーティングカードを作りました。カードを飾るための小さな花を折ります。

ステキなお花のカードは、ボランティア指導をしてくださる先生のお手本です
桜の花びらを折る紙は1.5×3cmとかなりのミニサイズ。一度、大きめの紙で練習してから、いざ本番!です。私も老眼鏡をかけて気合を入れました。

桜の花びらを制作中。マイピンセット持参の方も
折り順を覚え、細かく指先を動かして……これは脳トレになりそうです。
「えっ!先生、ココはどうすれば!?」
「うん、こうすれば大丈夫よ」
先生はゆったりと丁寧に教えてくださいます。参加者同士で教え合ったり、ぼやいてみたり……楽しいひと時でした。
他に「健康体操」「ギターで歌おう会」など、人気のイベントは数多くあります。
年に数回のクラシック演奏会や、お抹茶がいただけるイベントも、皆さんの、ちょっとしたお楽しみと社交の場になっているとのことです。

取材をした2025年3月のイベント一覧
喫茶や軽食はお財布にやさしい価格で、お味もなかなかです。
「専門店じゃないんでしょ」なんて、侮るなかれ!
スタッフの方との楽しいおしゃべりも、味に彩りを添えてくれる「喫茶たまりんば」です。

メニュー表とクリームソーダ
冬場はお食事メニューに焼き芋や鍋焼きうどんも加わります。私はこの日、蜜たっぷりの「紅はるか」をお土産用に買って帰りました。

ヤキイモヤケタカナ?
これからも 「おたがいさま」で助け合い
10年という節目の今年、これからの活動についてもお話をうかがいました。
この3月からは「こども食堂」がスタートします。
実は以前にも行っていた活動であり、再開なのだとか。
まずは2025年3月28日(金)から、月1回でスタートします。
保護者の方への帰宅連絡としてLINEの活用を検討しながら、準備中です。
宮崎さんはこれからの活動への意気込みを語ってくださいました。
「この場所で、それぞれの人にとっての居心地の良さをかなえるのは、なかなか大変です。それでも、ここを子どもから高齢者まで一気通貫で異世代交流できる場所にしたいんだよね。人と人が顔を合わせ、言葉を交わし合うことを大切にしたいんです。
高齢者への福祉支援も、難しい問題は多いけれども、これまで以上に力を入れて取り組んでいきます。
一方的に支援しているんじゃなくて、『おたがいさま』だと思っています」
ふと、私も何らかの形でこの「おたがいさま活動」に参加できないものか、と考えました。
たとえば、喫茶の利用や募金は、お金やモノを使ってこの活動を支えることができます。
あるいは自分の時間を労働力として提供してもよいでしょう。自分の知識や技術など、専門的なスキルでお役に立てる場面もあるかもしれません。
等身大の今の自分にできることで、誰かのためにちょっと勇気を出して行動してみる。
そうすることで、自分が助けてもらいたい時にも素直に声をあげられるような気がします。
時代の変化に問題解決が追いつかない中、助け合いの担い手となってくれているのが「すすき野たまりんば」のような「街の居場所」なのです。

すすき野たまりんば入り口
一人の幸せは社会全体の幸せ
宮崎さんのお話で印象に残った言葉があります。
「住み慣れたこの地域で、安心して暮らしてもらいたいし、自分の人生は幸せだったと思ってもらいたい。周りの多くの人がその姿を見ることで、地域全体に幸福感や安心感が生まれると思うんだよね。それがなかったら、若い世代は安心して子どもを産み、育てようとは思えないでしょう」
一人の幸せは地域や街、社会全体の幸せにつながっている。
本当にその通りだと思います。
個人の集まりが街を作り、社会を作ります。
今は家族と暮らしていても、ずっと一緒にいられるとは限りません。
この先の人生で一人になった時に、どんな人とつながりを求めていけばいいのでしょうか。
少子高齢化社会の課題であり、私自身にとっても大きなテーマになるでしょう。
また、取材を通し今さらながら「これまでの私の人生も、地域の活動を担ってくださる方たちに支えられていたんだ」。そんなことにも気付かされました。
60歳になったばかりの私も、高齢者の初心者マークをつけながら「誰かのお役に立てる活動」をこれから探していこうと思います。
帰り際に「またいつでも、いらっしゃい」と声をかけていただきました。
おかげで私にも新しい「居場所」が一つ増えました。
次は散歩のついでに、コーヒーを飲みにうかがいます。

名称:特定非営利活動法人すすき野たまりんば
住所:横浜市青葉区すすき野2丁目6番地6
電話:045-514-5534
連絡先メールアドレス:susukinotamarinnba@d07.itscom.net
営業時間:10:00~16:30(金曜日はイベント開催のため喫茶営業なし)

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