地域で育った大学生とめぐる、私のまち ーまちねこLab.「まちでつながるおさんぽ会」に参加してー 
雨の切れ間から青い空がのぞき、まぶしさを感じた3月のある日、青葉区のすすき野、大場町エリアで活動する大学生のまちづくりグループまちねこLab.(ラボ)主催「歩いてつながるまちねこおさんぽ会」に参加しました。おさんぽしたのは、小学生、大学生、社会人など世代もさまざま。お花を摘みながらのんびり歩く時間は、ゆったりと流れる心地よいひとときとなりました。

集合場所は、横浜市青葉区すすき野2丁目にある生活クラブすすき野デボー2階。参加者は2チームに分かれて、大場町にあるまちねこLab.の活動拠点「まちねこハウス」まで歩きます。

 

 

まちねこLab.の名前の由来は?

おさんぽ会を主催しているまちねこLab.の名前の由来は「まちのねこになる」と「ねこの手も借りたい」という言葉を掛け合わせたもの。まちの困りごとに対して、学生たちが手を貸し、解決に関わっていこうという思いから名付けられました。「顔の見えない現代コミュニティに初心を灯す」という理念のもと、世代をこえてわくわくが循環するまちづくりを目指しさまざまな活動を行っています。

伊藤花帆さん(大学1年)と以前からイベントに参加している人、知り合いからのお誘いで参加した人、偶然通りがかった人など1チーム6人でのおさんぽ会

相手の歩幅に合わせて歩くまちねこメンバー

どの道を歩くかは、まちねこメンバーが作成したおすすめの公園が載っている地図を見ながら緩やかに決定。私が参加したチームは、すすき野公園から荏子田小学校沿いを通り、荏子田太陽公園を散策し、元石川高校校庭に沿った坂道を下ってまちねこハウスに向かうルートを辿りました。

 

ちょうど草花の息吹を感じる季節。歩く道には雑草や野の花が咲き始めていたので、話題は自然と草花の話が中心になりました。荏子田太陽公園では、もうじき訪れるばらの季節に思いを寄せたり、芽が出てきた芍薬に春の訪れを感じる穏やかな時間が流れました。まちねこのメンバーは、相手の歩幅に合わせて歩くので、それぞれが無理なくゆっくり歩くことができてとても居心地よく感じました。

メンバー作成の「お花ボード」を手に、お花や緑の話をしながらおさんぽ。道ばたに何気なく咲いているお花や雑草もボードに飾るとキャンパスに彩られた作品に大変身

地域に育てられている感覚

まちねこLab.代表の田中優大さん(大学院2年生)が活動を始めたのは2024年10月。きっかけは「大学の『地域課題実習』で団地再生の現場に入ったこと」と言い、「実習の中で、地域の方々や関係者から乳幼児の親のコミュニティがなく、情報交換ができないという声を聞き強く印象に残りました。 そこで、教育に関心のある学生たちと一緒に、まちねこLab.を立ち上げました」と話します。

同じ志を持った学生たちが集い、メンバーの数は増えていきました。地元の大学や卒業した後もつながっている社会人など現在のメンバーは10人ほど。田中さんは前列左から2人目(写真提供:田中さん)

私の学生時代を振り返ると、地元より外の世界に関心が広がっていた時期でした。そんな学生時代のイメージが強かったので、何故田中さんは自分が暮らすこの地域で活動することを選んだのか疑問に思いました。

 

「子どもの頃、サッカーの習い事で忙しく暮らしている『地域』に強い関心があったわけではありません。ただ、通っていた鉄小学校では授業で田植えをしたり、収穫祭があったり、昔遊びの時間があったりと地域での体験が当たり前に組み込まれていて、日常的にさりげなく声をかけてくれるおっちゃんの存在がありました」

 

こうした時間の中で「地域に育てられている」感覚が自然と育ち、「さりげない挨拶」が、地域で暮らす安心感を生むと考えるに至ったそうです。

 

 

まちねこハウス爆誕

2024年10月の第1回イベント「読み聞かせ&子ども劇」を皮切りに、すすき野地域ケアプラザを拠点に、団地内外の住民が交わるイベントを行いましたが「また会える」「困ったら行ける」といった日常の接点が残りにくいという課題も田中さんは感じていたそうです。

 

そこで、友人を通して出会った全国的に空き家再生事業を行っているsumica 株式会社代表木村元紀さんに空き家をリノベーション拠点にしたいと相談した上で、クラウドファンディングも行い2025年11月に「まちねこハウス」が生まれました。「まだ試行錯誤の途中ですが、拠点を育てながら形にしていきたい」と田中さんは話します。

天井の解体やお庭の整備などを学生たちの手で行いました。「みんなでやりたいことを考える会」では、参加した子どもたちとどんな場所にしたいかアイデアを出し合ったほか、ハウスの看板を作ったり、壁に漆喰を塗る体験会なども行いました(写真提供:田中さん)

おさんぽ会のゴールは、この活動拠点まちねこハウス。イベント参加者の多くがすすき野エリアに住んでいるため、ハウスまでの道を一緒に歩いてみることで「イベントに参加しやすくなるように」という思いがおさんぽ会を行ったきっかけになったそうです。

まちねこハウスでは、学生主催のイベントの他に、展示会や、地域交流会(多世代交流)など、世代や立場を超えて自然と交わる入口として駄菓子屋さんも行っている(週1〜2回程度)

まちねこLab.の魅力

おさんぽ会にも参加した中川フミ子さんは、まちねこハウスで駄菓子屋さんを行うなどまちねこLab.を応援しています。まちねこLab.の魅力を聞くと「核家族の家が多くなって、少し年上のお兄さんやお姉さんと知り合うきっかけもなくなったよね。まちねこLab.の活動を知って、知り合いの近所の子どもたちに、イベントに参加してみない?と誘ってみると最初はちょっと躊躇しているんだけど、参加してみると楽しいと喜んで、その次も通うようになるんですよ。学童のスタッフなど、普段関わるお兄さんやお姉さんともまたちょっと違う関係性が生まれて。そんな関係性がちょうどよいみたい」と話します。

おさんぽ会終了後は、企業組合ワーカーズ・コレクティブミズキャロットのお弁当を全員で集まって食べながらランチタイム。小学生親子、チラシを見て初めて訪れた高校生も一緒にハウスには多様な世代が集いました(写真提供:田中さん)

まちねこは自分の居場所 ゆるくつながるのが心地いい

まちねこメンバーの伊藤花帆さんは、2024年秋、高校3年生の時に代表の田中さんと出会い、大学に入学した2025年の春、メンバーになりました。活動に参加したきっかけを「自分じゃない誰かのために、みんなで本気で話し合っていることに感動し、ワクワクしたから」と話します。今では、まちねこが自分の「居場所」になっているそうで「家族や友達など、普段過ごす中で自分の関わり方が固定化されてしまうところがあるけど、まちねこに参加しているメンバーは大学も違う。ゆるくつながっているのが心地いい」と話します。

 

一方で「できたばかりの団体で、会話が一方通行になっていると感じることもあって、メンバーとの関わり方に悩む時もある」と話す伊藤さん。だからこそ、活動を続けるためには「自分が楽しんでいることが根底にあります。ずっとその気持ちを持ち続けていたい」と話します。「まちねこに来ることで、普段はできないことができる、普段は出会えない人と出会える、そんな場を作りたい」と次期代表として意気込みを語りました。

福祉団体を紹介する「まちの福祉とつながる上映会」終了後に、後日開催される「おさんぽ会」のお誘いをする伊藤さん

すすき野エリアで活動する7つの福祉団体が集まって3月にすすき野地域ケアプラザで開催したイベント「シュガーフェス」では、まちねこLab.は実行委員会の一つとして参画しました。フェスの中では、福祉団体のことを地域の方たちに知って欲しいという思いで「まちの福祉とつながる上映会」を企画。事前インタビューも学生たちの手で行い、各福祉団体の思いを汲んだ編集をした動画を、当日上映しました。

 

鑑賞した方の中には「このエリアに、こんなにたくさんの団体が活動していたなんて知らなかった」という声もあがりました。

子どもたちからシニアの方まで、地域に住むさまざまな年齢層のお客さんが集まり、鑑賞しました。上映会の前には、自分たちがどんな思いで映像を作ったのかを丁寧に説明していました

地域で育てられたことが活動の原点

私は、子育てをしながら地域の人に助けられ、「親」としての自分を育ててもらったという体験があります。そして、それをきっかけに地域で子育て中の親子を対象としたアート活動をしています。私も同じ「シュガーフェス」の実行委員として、イベントを行うにあたり、これからどのような取り組みをしていきたいかのか田中さんにお話しを聞きました。話を聞く中で、年齢やこれまで辿ってきた経験は違うけれど、自分が暮らす地域の人たちに支えられ、育てられてきた実感があり、その実感こそが活動を続けるエネルギーになっている点は共通していると気づきました。

おさんぽもゴールに近づいた頃に、元石川高校の校庭脇に咲く桜の木を見つけました。「こんなところに桜の木があったんだね、歩いてみないと分からないものね」と話しながら歩きました

伊藤花帆さんは「友だちと遊ぶのと同じように、まちねこLab.での活動は楽しい」と話します。まちねこLab.の活動やまちねこハウスがこれから地域でどんなふうに育っていくのか、私も同じ地域で活動する仲間として、地域住民の一人として、一緒になって楽しみながら応援していきたいと思います。

 

※表記は全て取材当時のものです。

Information

まちねこLab.

https://www.instagram.com/machineko_lab

メール:machinekolab@gmail.com

 

まちねこハウス

住所:神奈川県横浜市元石川町4247

 

sumica 株式会社

https://www.machi-sumica.com/

Avatar photo
この記事を書いた人
松井ともこライター卒業生
神奈川県出身 ワークショップデザイナー。劇団の養成所を経て俳優のマネージメント、文化施設で事業企画運営などを行う。青葉区の子育て仲間と地域でアート活動(トトリネコ)を始めたところ、子育てとアートの関係に興味がわき、立教大学大学院にて研究中。二児の母。
未来をはぐくむ人の
生活マガジン
「森ノオト」

月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる

森のなかま募集中!

寄付についてもっと知る

カテゴリー

森ノオトのつくり方

森ノオトは寄付で運営する
メディアを目指しています。
発信を続けていくために、
応援よろしくお願いします。

もっと詳しく