冬時間をゆたかに。花と緑のブックリスト
冬、それはガーデナーにとって春からの庭計画をあたためる楽しい季節です。土の中で力をたくわえる植物たちが花開くときを待ちわびて、花と緑の本の旅を楽しんでみませんか。庭いじりが好きな方も、土いじりに心惹かれている人も、春からの新しい一歩のヒントが詰まっています

庭いじりや土いじりの楽しみは人それぞれあると思いますが、私は、車や自転車を運転したり、パソコンで仕事をしたり、ご飯を食べたりという日常とは別の世界にふれられるような気がします。育てている植物や土の様子と向き合ったり、あるいは植物の世話をしながら人と話したり。そんな時間を過ごしていると、ゆったりとくつろいだような気持ちになるのを感じます。

 

読書もまた、別の世界に連れていってくれるので、土いじりとどこか通じるような気がします。冬場はお家で暖をとりながら、本を通じて植物の世界をのんびりと味わいたいものです。冬時間のお供に、花好き、本好きの森ノオトライターから、花と緑にまつわるおすすめの本を紹介してもらいました。

 

『庭をつくろう!』作:ゲルダ・ミューラー、訳:ふしみみさを(あすなろ書房、2015年)
『木のすきなケイトさん』文: H.ジョゼフ・ホプキンズ、絵:ジル・マケルマリー、訳: 池本佐恵子(BL出版、2015年)
『木のうた』作:イエラ・マリ(ほるぷ出版、1977年)

 

まずは松園智美さんのおすすめの本です。

 

「『庭をつくろう!』は、主人公が引っ越してきて一から庭を開拓するお話で、子どもたちもワクワクしながら読んでいた本です。絵が描き込まれているので、子どもたちが大きくなっても楽しめます。『木のうた』は字のない絵本で、土の中が緻密に描かれています。土の中でどんどん芽が出てきているとか、夏に鳥が巣をつくって巣立っている様子だとか、定点観測的に描かれていて、小さい子でも植物に興味を持てると思います」(智美さん)

 

子どもの本を通して学ばせてもらっているという智美さん。『木のすきなケイトさん』は、娘さんが小学生の時に夏休みの課題図書で買った本です。サンディエゴの砂漠に公園をつくった人のお話です。いろんなところで育つ木を調べて植え続けて森となり、今ではサンディゴの観光地として有名な場所「バルボア公園」をつくりました。「砂漠に木が生えるということに夢があります。この本を読んで、公園一つでまちを変えることがあるんだなと感じました」

 

花と緑を通じて、まちづくりの担い手になるきっかけづくりを行う青葉区と森ノオトとの市民協働事業「フラワーダイアログあおば」にもつながるような視点ですね。

 

『みすゞ詩画集 花』誌:金子みすゞ、画:栗原佳子(春陽堂書店、2000年)

 

続いては、詩が好きという中島裕子さんからの紹介です。

 

「金子みすゞさんは、身の回りの小さな草花の詩をたくさん書いていて、これはお花の詩だけを集めた詩集です。どんな小さな草花にも役割があって存在しているというあたたかい目線で書かれています。この本は、本物の草花を使った押し花が挿絵になっているのがいいんです。小さい子でも、押し花があることで、どんなお花なのかわかります。押し花がメルヘンチックで、絵本としても楽しめますよ」(裕子さん)

 

『さくらがさくと』作:とうごなりさ(福音館書店、2020年)
『つちづくり にわづくり』文:ケイトメスナー、絵:クリストファーサイラスニール、訳:小梨直(福音館書店、2017年)
『野の花ごはん』作:前田まゆみ(白泉社、2013年)
『はやくちことばのさんぽみち』文:平田昌広、絵:広野多珂子(アリス館、2020年)

 

絵本を4冊紹介してくれた本田真弓さんは、「子どもとお散歩しながらいろいろ教えてあげたい」という思いで選んでくれました。これらの本は、住まいの近くの弘明寺商店街にある「子どもの本& クーベルチップ」で出会ったものだそうです。、「『さくらがさくと』は、作者のとうごさんが戸塚区にお住まいで、弘明寺を流れる大岡川沿いの桜がモデルになっているんです。小さい頃から見ていた風景が描かれているので、親近感が湧くのと、自分がこの中に登場しているような気分で読めます」と、地元を舞台にした絵本を紹介してくれました。

 

「『野の花ごはん』は、ノアザミなどこんなものまで食べられるの!?という驚きのものまで、たくさんのレシピが載っています。『はやくちことばのさんぽみち』は、お父さんと娘がいろいろなものを見つけながらお散歩するお話です。早口言葉で植物の特徴や生き物の生態が紹介されていて、図鑑のような一冊です。『つちづくり にわづくり』は、地上の植物だけでなく、目には見えない土の中の世界が描かれています。子どもにも、見えない部分もあるんだよということが伝わればいいなと思います」(真弓さん)

 

真弓さんが紹介してくれた本は、子どもと過ごす時間がぐっと豊かになりそうな絵本の数々です。

 

『ナマケモノのいる森で』作:アヌック・ボワロベールとルイ・リゴー,ソフィー・ストラディ、訳:松田 素子(アノニマ・スタジオ、2012年)
『はちうえは ぼくにまかせて』作:ジーン・ジオン、絵:マーガレット・ブロイ・グレアム,訳:森比左志(ペンギン社、1981年)
『寺家の自然』中村一恵・高桑正敏編 神奈川県立博物館監修(横浜ふるさと村自然と文化の会、1987年)

 

続いては、宇都宮南海子さんの紹介です。

 

「『はちうえは ぼくにまかせて』は、子どもと一緒に何を植えてみようかと話したくなる本です。『ナマケモノのいる森で』は、仕掛け絵本で、開くとナマケモノのいる森が立つ仕掛けになっています」

 

この2冊は、森ノオトライターの山田麻子さんが以前、フラワーダイアログのイベントで紹介していた本なのだとか。

 

もう1冊は、地元の自然を紹介した本です。「『寺家の自然』は、寺家の歴史をまとめる記事を書く時に参考にしました。動物や植物のこと、歴史のこと、地理的な話も書かれていて、自分が住んでいるピンポイントな地域のことなので家族で代々持っていたい本です」(南海子さん)

 

こちらは、寺家ふるさと村の四季の家で購入できます。

 

『のぼっちゃう』著:八木田 宜子、太田 大八(文化出版局、1984年)
『カルチュラル・ガーデン 育つままに、ほったらかしの庭づくり』(グラフィック社、2015年)
『derek jarman’s garden 』著:デレク・ジャーマン(光琳社出版、1997年)

 

お次は、デザイナーの畑道代さんの3冊です。

 

「『のぼっちゃう』は、主人公が木にずんずん登っていく様子がかわいらしい絵で描かれています。マイツリーにも通じますね。私は古い家に引っ越してきて、庭も自分でリノベしていますが、庭づくりの参考にしたのが『ほったらかしの庭づくり』です。ほっといてもかっこよく見える庭の実例を交えて紹介してあり、これを見ながら何を植えようか考えています。デレク・ジャーマンさん(故人)は映画監督で、イギリスのコッツウォルズで庭づくりをしていました。最後の著作として出した写真集がすばらしくて好きです。日本ではあまり見られないような植物も載っていて、英語だけど読み物もあります」(道代さん)

 

続いては、森ノオト事務局長の梅原昭子さんからの紹介です。

『地球のくらしの絵本 全5巻』著:四井真治、立体美術:宮崎秀人、写真:畑口和功(農文協、2016年)

「『地球のくらしの絵本』5冊シリーズは、森ノオトの事業で青葉区にお招きしたことのあるパーマカルチャーの実践者・四井真治さんの生活を、人形で描いています。『土とつながる知恵』は土を循環させる方法、『水をめぐらす知恵』は水を汚さない・きれいにするための知恵が入門的に書かれています。このほか、『土中環境』(著:高田宏臣、建築資料研究社、2020年)は、土の中の空気と水の流れが遮断されることで、土自体が痩せてしまうという警鐘を鳴らしています。炭を入れるとか、通路をつくってあげるなど、人間の手で再生できるということが書いてあります。青葉区でも弱っているなという木がありそうなので、この本に書かれていることの実感を持ちながら読んでいます」(梅原さん)

 

『みんなの園芸店』著:大野八生(福音館書店、2020年)
『庭とエスキース』著:奥山淳志(みすず書房、2019年)

 

最後は、わたくし梶田亜由美のおすすめの2冊を紹介します。

 

『みんなの園芸店』は、春夏秋冬の庭しごとの楽しみが、かわいらしいイラストとともに紹介されていて、子どもと一緒に読むのにもおすすめです。たとえば果物の種をまいて育ててみたり、お茶やジャスミンを育てたり、鳥たちのレストランのアイデアがあったり。食べものや生き物ともつながる楽しみがふんだんに載っているので、読み応えのある一冊です。 

 

『庭とエスキース』は、北海道で自給自足の庭づくりを続けた弁造さんを撮り続けてきた写真家の奥山淳志さんの本です。まるで時間の流れ方が違う弁造さんの生き方と庭づくりのことが、奥山さんの写真と文章で浮かび上がり、年の離れた二人の立ち入りすぎないけれども深くつながる友情がじーんと胸に広がります。

 

さて、庭づくりの参考になる園芸本から、写真集、絵本などさまざまなジャンルの本をご紹介しました。どれか一冊でも気になる本があったら、図書館や本屋さんで手に取ってみてくださいね。「おすすめの本ある?」は、「花端会議」の話題にもぴったりです。それでは楽しい冬時間を過ごしましょう。

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この記事を書いた人
梶田亜由美ライター
2016年から森ノオト事務局に加わり、AppliQuéの立ち上げに携わる。産休、育休を経て復帰し、森ノオトやAppliQuéの広報、編集業務を担当。富山出身の元新聞記者。素朴な自然と本のある場所が好き。一男一女の母。
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