カフェ、教室? いいえ「まちの小さな集会所」。美しが丘西「Glanta(グレンタ)」
たまプラーザ駅からバスで15分、花桃の丘にほど近い美しが丘西にあるとある住宅で始まった「Glanta(グレンタ)」。その場のあるじは、森ノオトのリポーターでもある清水朋子さんです。完全予約制のランチが早くも評判ですが、「おうちカフェ」ではなく「森のなかの小さな集会所」をイメージしてつくったというその理由は……。

Glantaには、時を経てていねいに使い込まれたアンティーク家具、北欧雑貨や手仕事の小物、食やインテリアの本がさりげなく配置されていて、朋子さんの好きなもの、センスをうかがわせる。写真は「魔女の作業場」当日の様子

森ノオトのリポーター、清水朋子さん。「食」に関わるさまざまな取材を精力的にこなし、「食いしん坊の書く記事は美味しい!」と思わせる確かな筆致で、ファンも多いことと思います。そんな朋子さんは、若い頃、ヨーロッパのあちこちをめぐり、食に関する知識や経験を広げてきました。ワインやチーズ、お菓子、コーヒー……気になったことを、一つひとつ、コツコツと学んでいき、日々の生活のなかでじっくり味わう暮らし。そして、食や暮らしをていねいにしつらえる喜びを、地域のなかでわかちあいたいーー。朋子さんがかねてから抱いていた夢が、いま、ようやくカタチになろうとしています。

「魔女の作業場 緑・灯・食のワークショップ」のランチを手がけたのは朋子さん。このランチ目当てに行きたいくらい

朋子さんの住まいを森ノオトの山川紋さんが取材したのは、2014年の5月。その時に、住まいから外に開かれた「アトリエ」について、朋子さんは「ごはんや暮らしにまつわるモノやコトを扱い、家族や友人、ご近所さんとやわらかなつながりを育みたい」と語ってくれました。専用の小さなキッチンを通じて自宅のリビングルームとつながるアトリエを、この秋、「Glanta(グレンタ)」と名付けた朋子さん。スウェーデン語で「木々が生い茂る森のなか、そこだけ陽の光がさしている陽だまりのような場」という意味のGlantaは、カフェやギャラリーというより「森のなかにある小さな集会所」をイメージしているそうです。

 

「人が集まって、一緒に手を動かしながらおしゃべりをして、私自身も一緒に楽しんで……。そこに食べものや美味しいお茶があったらいいな、と思って」。昨今流行しているおうちカフェ、おうちショップではなく、あくまでもカフェは集会所にぬくもりと笑顔を添える脇役で、人が集まりつながる「場」をメインにもっていきたいと朋子さんは強調します。

10月のワークショップを担当した3人の魔女たち。左から、「灯」の山田留美子さん、真ん中が朋子さん、右が「緑」の原口瞳さん(写真提供:Glanta)

今年、10月21日から23日にかけて、Glantaとして初めてのイベント「魔女の作業場 緑・灯・食のワークショップ」が開かれました。朋子さんの友人でリースやブーケを手がけるombrageの原口瞳さん、食を担当する朋子さん、キャンドル作家のcamitureworksの山田留美子さんが、リレー方式で6名ずつの講座をおこないました。

 

わたしも2日目の「食 編み棒でつくる小さなパスタの会」に参加しました。女性たちでおしゃべりをしながら、編み棒で黙々と小さなパスタをかたちづくる時間は、とても穏やかで贅沢。手仕事には心身をととのえる効果があるなあと実感しました。

 

初日の「森のサンクチュアリィ・リースの会」に参加した森ノオトの大西香織さんは、「みんなで一緒にリースをつくっておしゃべりしていると、初めて出会った人たちなのに、まるで昔からの友達のように盛り上がった。きっと、これが朋ちゃんのやりたいことなんだろうな」と語ってくれました。

 

3日目の「魔女の蜜蝋ろうそくの会」でも、みんなでせっせと手を動かし、ゆるやかで心地よい時間が流れていたようです。

参加者は、一緒に手を動かしたあとは朋子さんお手製のランチを食べて、心ゆくまでおしゃべりを楽しんでいました。

 

「この3日間でたくさんの美しい“手”に出会えた」とブログで語った朋子さん。Glantaで提供したいのは、きっと、暮らしをていねいにととのえ、しつらえる“手”を使う場と時間であり、それはきっと、朋子さん自身の生き方なのだろうと、わたしは感じました。

北に開口部を穿つGlantaは、穏やかで安定した光が入り、手仕事をするには最適な空間だ

Glantaが本格オープンするのは来年2月ですが、「月に1、2回ペースのイベントと、時々、カフェ。そのくらい、のんびりやっていきたい」とのこと。とはいえ、最高にセンスのよいやわらかな空間で、食いしん坊魔女がつくるていねいできれいなごはんは、オープン前からすでに話題になっています。

 

「でも、わたしの優先順位は、家庭が第一」と言い切る朋子さんは、「Glantaというお店でお客様にサービスを提供する」というよりも、「自分の住まいと暮らしの一部にGlantaと名付けて、気心知れた友人たちがつながる場を用意した」という気持ちなのかもしれません。

朋子さんの友人が撮った写真。あまりに素敵な雰囲気だったのでお借りした。看板などは手作りだ。緑に囲まれた集会所へようこそ(写真提供:Glanta)

食やガーデニング、ハーブなど、暮らしにまつわるさまざまな手仕事に興味を持ち、学びを深めてきた朋子さんが行き着いた形が、自宅に併設されている「まちの小さな集会所」。地域の「陽だまり」として、これから、たくさんの美しい手仕事の時間が生まれていくのだろうと思います。

 

これからのGlantaでおこなわれること、それは、日本的にいえば、お正月の前に、古民家の土間と板間で農家のおばちゃんたちが縄をない、お団子をこねているような風景であり、北欧風にいえばクリスマスに向けて教会の婦人会でリースをつくったりクッキーを焼いているような……集会所での婦人会、そこから生まれるコミュニティを今風に編集し直すイメージでしょうか。地域に根ざした新しい生き方のモデルになるかもしれないな、と、ふっと思いました。

Glantaに関するお問い合わせは、朋子さんのブログへ。

 

Information

Glanta(グレンタ)まちの小さな集会所

住所: 横浜市青葉区美しが丘西

営業日: 不定期開催(詳しくはブログをご覧ください)

Blog: http://glanta.blog.fc2.com/

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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