森ノオトを奏でる人たち(2):藤崎浩太郎さん「“当事者性”を高める瞬間を増やすことを期待したい」
この11月で『森ノオト』は創刊10周年を迎えます。森ノオトにかかわる さまざまな人たちを通して、森ノオトの歩みを振り返るインタビュー集。 第2回は、横浜市議会議院の藤崎浩太郎さんです。藤崎さんと森ノオトは、2009年の創刊時期からの長い関わりがあります。政治家とNPOって、どんなふうに関わったらいいのか。何を一緒に実現していくべきなのか。それぞれの10年にわたる活動を俯瞰的に評価しあった対談をお届けします。

200911月に森ノオトが創刊した時、藤崎浩太郎さんは衆議院議員秘書として面識があり、今と変わらず青葉区のさまざまなイベントやお祭りに顔を出しては積極的にお手伝いをしてくれる人という印象でした。藤崎さんと深く関わるようになったのは、2013年、森ノオトがNPOになって間もない頃のことでした。2013321日に、青葉区の寺家ふるさと村、川崎市麻生区の早野地区、アートフォーラムあざみ野をめぐって「都市郊外の農的空間」をテーマに、今後の郊外がどうあるべきかを多様なプレイヤーで語り合うフューチャーセッションを開催したのです。

furures#5では、寺家ふるさと村の「四季の家」に集合し、寺家町と川崎市早野エリアを回ったあと、ア―トフォーラムあざみ野で対話のセッションをおこなった。

―― 私は東日本大震災をきっかけに、原発のない社会を目指してたくさんの勉強会を主催してきました。「一人ひとりがこうありたいという未来を描き、対話を通じてともに目指すべき社会像の実現に向かって道筋をつくっていく」ための手法として「フューチャーセッション」に着目していました。当時、フリーランスライターとして持続可能性をテーマにしたフューチャーセッションのレポートをしたり、「いただきますの日」を立ち上げた有福英幸さん(現・株式会社フューチャーセッションズ代表取締役)にさまざまな対話の手法を教えていただいて、あざみ野ぶんぶんプロジェクトの「お母さん版エネルギー基本計画」や、地域で地球温暖化について学ぶ「あおばECOアカデミー 私たちの未来をつくる井戸端会議」のプログラムに生かすことに挑戦してきました。

 こうした動きは、都内を中心に盛り上がっていたのですが、地元でフューチャーセッションをやろうとした時に、もっとも詳しい人は誰なんだろう、と思って見渡してみたら、近くにいた! 藤崎さんが市議会議員になった2011年以降、割と早い段階から、「フューチャーセッション」について発信していて、この人とじっくり話をしてみたい! と思って私からアプローチしたんですよね。

 

藤崎: 私は議員秘書時代、よくイベントのお手伝いをしていたので、よこはまハロウィンを主催していた金子拓也さんらとのお付き合いはあったんですよね。当時ハロウィンに関わっていたまどかさんともイベントでよく顔を合わせるようになって。2009年に森ノオトが創刊して、エコロジーをテーマにローカルで情報を発信していく、メディアとして人を巻き込んでいく活動に、「時代」を感じました。

 2011年以降、あざみ野ぶんぶんプロジェクトの活動でまどかさんがフューチャーセッション的な取り組みに挑戦していたことも知っていたので、関心をもって活動に参加させてもらったりもしました。まどかさんに呼ばれて、藤が丘のマザーズにあるドツテテでコーヒーを飲みながら「青葉区でフューチャーセッションを広げていこう、いろいろ試していこう」と話をしたことをよく覚えています。

2018年のよこはまハロウィンでの藤崎さん。長身なので、とにかく目立つ。私の娘たちも、よく肩車してもらっていた(写真提供:藤崎さん)

―― 森ノオトをNPOにするかどうか、という過渡期に藤崎さんとはいろいろ話をしていて、NPO法人になった直後の2013年3月に大規模なフューチャーセッションを一緒にやって。そんな流れで藤崎さんに「NPO会員になりたい」と言われた時に、「政治家ってNPOに関わっていいんだっけ?」って、お互いに迷ったんですよね。NPOは、政策提言は大いにすべきだが政治活動をしない、不偏不党であることが法的に掲げられていたので、そのあたりのことがわからずに即答できなかったんです。それで藤崎さんがわざわざ自分で選挙管理委員会に問い合わせて調べてくださって、「選挙活動に利用しなければ問題ない」とわかって、晴れてNPO会員になった(笑)。なんて誠実な人なんだ!って感激しました。

 

藤崎: 私も森ノオトに関わるまでは、NPOは非営利の組織で、ボランティア活動がメインのところと、福祉などの受託事業で回していくところがある、くらいの認識しかありませんでした。森ノオトが収益をあげながら活動を発展させていく様子を近くで見ていて、「法人格として、NPOでなければできないことがあるなあ」と感じました。森ノオトはこの10年で、ただの市民活動ではなく、ローカルメディアの枠にもおさまらず、市との協働の実績を積み上げている。子育て支援3R(資源循環)環境啓発活動の分野で、地域に根差しながら実践しているという重みが、社会的にも一目置かれていて、今では中間支援的な役割も果たすようになってきています。森ノオトが積み重ねてきた10年というのは、客観的にみてもものすごい10年だと思います。

 

あおばを食べる収穫祭で、汁ウィン・汗ウィンとポーズをとる藤崎さん。実は早朝から備品の運搬や設営で一仕事してくれている(写真提供:藤崎さん)

―― 2011年に3.11を経験した私たち世代のこの10年って、実は社会の大きな転換点になっているんじゃないかなあ、と思います。日常に埋没すると気づきにくいのですが、ふとした瞬間に俯瞰的な目線で自分たちのやっていることを見てみると、実はこのまちって、すごく変わってきている、と思うことがあります。森ノオトでよく言われるのは、「青葉区=オーガニックなまち、というイメージをつくった」ということ。個々に素敵なお店や活動があるからこそですが、ローカルメディアで一定の編集方針をもって発信し続けてきたので、そのイメージに森ノオトが関与していると評価されるのは、私にはとてもうれしいことです。

もう一つは、この10年の青葉区の地域活性化は著しいものがあって、たまプラーザ、あざみ野、藤が丘、桜台など商店会が独自にユニークなイベントを始め、それが横につながり出して、青葉区全体が盛り上がるようになった。商店会単位では地域を飛び出すのは難しいなかで、俯瞰的な目をもった藤崎さんがそれを横につないできた、と思います。青葉区内の各地域・各商店会を「横串にさす」ことへの藤崎さんの貢献度は、ものすごいなあと、見ていて思います。

 

藤崎: 私が青葉区に来たのは2005年で、それからずっとあざみ野が拠点です。あざみ野をなんとか活性化したいと思った時に、自分も当事者になって主体性をもってやろうとしたのが、「あざ〜すあざみ野マルシェ」です。3年近く、毎月やっていましたが、残念ながら継続はなりませんでした。でも、それをきっかけに商店会の方から何かを自分たちで仕掛けていこうという気運が高まり、私も商店会のメンバーに加わりました。

 森ノオトがNPOになった2013年は、区内の商店会にとっても転換期でした。藤が丘商店会は30代の外山高嗣さんが副会長になって商店会のコアメンバーが若手中心に世代交代し、FCC(藤・カルチャー・カフェ)を企画したり、森ノオトと一緒に藤が丘駅前公園で「あおばを食べる収穫祭」を始めたり、汁祭りがフィーバーしたりと、各地から注目を集めるようになりました。青葉台ではAFF(青葉台でFace to Face)というイベントで区内のいろんな人が交流を始め、その仕掛け人の一人でもあるベーカリーカフェ・コペの奥山誠さんが青葉台と桜台エリアをつなげ始めた。桜台商店会のウッディハート・木村さんエスニカ・田原さんなど元気な40代が地域にお店をひらきさまざまな活動を始めた。そうこうしているうちに、当時青葉台とあざみ野に店舗を構えていたガーデン&エクステリアのリード・安生敏弘さんが、青葉台とあざみ野をつなぐようになった。江田駅前商店会もスタートした。一気にいろんなことが動き始めた2015年ごろ、商店会の若手メンバーとの飲み会で「青葉区全体をつなげていきたい」と話し合ったのを覚えています。

 

―― 藤崎さんにその構想を聞いた時の話、よく覚えています。それがたった数年で、青葉区の商店主全体が集まって「みんなのハカ」をやるに至った。

 

藤崎: 区内の商店会メンバーが一堂に会して「青葉ブルーリーブス」として「みんなのハカ」を演舞したのは、一つの集大成になりましたね。

 

―― 青葉区が盛り上がりすぎていて(笑)、そろそろイベント疲れも始まるころかなあ、と思っています。今後はいかに「日常」が盛り上がるかが大事ですよね。

 

藤崎: イベントって、ゼロからイチを生み出すようなもので、人が何かに関心をもったり、関わる起爆剤になります。そこで生み出されたイチをヒャクにしていくには、お店の普段の努力が何よりも大切ですよね。こうした、ゼロ→イチと、イチ→ヒャクを繰り返しながら、「どういうまちをつくっていきたいのか」を商店会だけでなく、自治会や地権者さんも含めて話し合えるような環境をつくっていきたいです。

「みんなのハカ」では、区内の商店会メンバーが集結! 青葉区に扇風を巻き起こした

―― 藤崎さんが今後の森ノオトに期待することは?

 

藤崎: 今後10年、20年と、継続していってほしいですね。

ローカルメディアのほとんどが広告収入で運営するビジネスモデルなのに対して、森ノオトは一定のエリアに絞りながらNPOとして「寄付で支えるローカルメディア」を掲げて、そのスタイルで少しずつ成立しようとしている。情報発信で収益化をはかっていない、というのがとても新しいと思います。

 組織としてはある程度成長し、成熟し始めているなかで、これ以上の規模拡大というよりも、若い世代や男性の参加をうながしながら、無理のない範囲で続けてほしいなと思っています。

 

―― 私たちの世代や、もう少し若い人たちに、究極の市民参加でもある「政治」に、もっと関心を持ってもらいたいと思います。

 

藤崎: 政治とはまさに意思決定のプロセスに一人ひとりがどう関与していくか、という話です。政治に若者の関心を呼び起こすにはどうしたらいいのか、と考え続けていますが、「当事者性」をもたない限りは、関心を持つことはないんですよね。子育て、介護、働き方……さまざまな問題に突き当たった時に、それと政治の関わりに気付いて初めてそれが「自分ごと」になる。自分ごとになったら行動につながっていきます。
当事者性を高めていく、増やしていく、育てていくには、「当事者にさせられる瞬間」をいかにつくるかが鍵になっていくと思います。意思決定に関与するということは、社会との関わり方を自分で決められるということでもあります。議論する→調べる→何かを決める→決めた結果に従う、こうした対話における意思決定プロセスが政治なんですよね。

 

―― 今年、事務局スタッフの中から、意思決定のプロセスをフラットにしていこう、会議のあり方を変えてみんなで決めて、ふりかえりもしていこうという発議がなされ、森ノオトも組織として少しずつ変化を始めています。

 

藤崎: 森ノオトを10年続けてきたまどかさんにそれを提案できるスタッフもすごいし、それをやってみようとする森ノオトもすごい。この話はまさに、森ノオトが今後30年、40年続いていくための大きな転換点なのだなあ、と思いました。

 

―― これからもあちこちで「対話」の種をまきながら、今度は「政治」という実際の仕組みを動かす場に、当事者性をもったさまざまな声を集めていく活動をしていきたいですね!

藤崎浩太郎といえば、餅つき! 地域をくまなく回り地元の人と対話することで、地域の課題をすい上げていく(写真提供:藤崎さん)

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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