〜朝の輪広がる〜保木公園ラジオ体操会がつなぐ人の輪
朝6時半前、横浜市青葉区美しが丘西3丁目にある保木公園に次々と人が集まってきます。愛犬を連れた人、杖をついた高齢の方、ランニング前の中学生。未就学のお子さんの姿も見えます。目的はラジオ体操。このたった10分間のラジオ体操のために、毎日みんなが集まるのはどうして?ラジオ体操会を運営する皆さんにお話を伺いました。

関東地方も梅雨入りした土曜の朝、この会の発起人でラジオ体操指導員の藤元直美さんと待ち合わせて公園に向かうと、すでにたくさんの人が集まっていました。

すべり台にはラジオ体操の旗が掲げられています。旗はここでラジオ体操をしているという目印なのだそう。

 

集まった方々は自分のスタンプカードに参加のスタンプを押してもらっています。そんな姿を見ていると、夏休みの朝にラジオ体操の参加スタンプを集めることが楽しかった、子どもの頃の懐かしい記憶がよみがえってきます。ラジオ体操は誰でも一度は体験したことがある馴染みの体操だと思います。

あっという間にたくさんの方が集まり、体操が始まるまでは楽しそうにお話をしていました

保木公園でラジオ体操会が始まったのは今から約1年前の2025年4月。最初は数人だけでの開催でしたが、今では多い時は100人以上も参加しています。

 

参加者は公園前のマンション住民を中心に、徒歩10分圏内から通う方が多く、地域に根ざした集まりとなっています。

中心となるのは60〜80代で、男性の参加も約4割。年齢や性別を問わず、さまざまな方が集まっているのが特徴です。

 

中には体操が始まる前に少し早めに来て、ここで知り合った仲間とのおしゃべりを楽しむ方も。ラジオ体操は運動の場であると同時に、自然な交流が生まれるコミュニティの場にもなっています。

取材日は土曜日だったこともあり、未就学児の姿も見られました。平日は仕事や子育てで参加が難しい世代でも、週末や夏休みなどを活用すれば無理なく参加できそうです。これから夏休みに入って、子どもの生活リズムを整えるためにも良さそう。

 

「雨と雪の日以外は毎日行っている」と保木公園ラジオ体操会・代表の駒井三彦さん。毎朝続けていくことは大変なことなのではないかと私は思います。駒井さんに続ける秘訣や参加者さんの声を取材しました。

ラジオがないと始まらない! 旗とラジオは必須アイテム。通常は駒井さんが持参するそうです。駒井さんがお休みの場合は他の方に頼んで上手く回しているそう

駒井さんは約20年前、東京から青葉区に引っ越してきました。

 

当時、行政主催の「青葉区スポーツ協会のハイキング(通称区民ハイク)」をきっかけに地域のラジオ体操会に出会いました。そこで藤元さんから保木公園でのラジオ体操会立ち上げの話を聞き「家にこもりがちな高齢者の方も、外に出るきっかけになれば」と代表を引き受けたそう。

 

毎朝ラジオと旗を持参し、初めての方にはスタンプ帳を渡して、「ご自分のペースで来てください」とルールを説明します。気軽に参加できる温かな雰囲気があるのは駒井さんのお人柄もあるように思います。

 

最初に100冊あったスタンプ帳はすでに配布済みで新たに注文するほど盛況です。「スタンプを押してもらうと励みになる」と参加している皆さんはうれしそう。スタンプ帳は出席を管理するためではなく、参加する楽しみや励みになっています。

“来られるときに来る”そんな良い意味でのゆるさが、ラジオ体操会が無理なく続く理由の一つだと感じました。

スタンプを押してくれる駒井三彦さん。朝のスタンプは駒井さんが押してくれます。ラジオ体操が生まれたのはなんと1928年(昭和3年)だと聞いてびっくり!もうすぐ100周年になるそうです

参加者さんの声と、ラジオ体操のもう一つの魅力

保木公園ラジオ体操会には、さまざまな年齢の方が参加しています。この日参加していた方にお話を伺いました。

 

大曽根トキ子さんは最年長の90歳。

2年前に交通事故で杖が必要な生活になったけれど、保木公園でラジオ体操が始まったことを知り「杖をついてでも参加できる」と毎朝通うようになりました。ここに来ると元気になると笑顔で話してくれました。

赤野たかしさん(左)と大曽根トキ子さん(右)。元々保木公園の愛護会をしていた赤野さんは「子どもだけではなく、年配の方にも公園を使ってもらいたい」と、藤元さんと共にこの活動を始めました

櫻井肇さんは、愛犬りくちゃんとの初めての散歩をきっかけに保木公園のラジオ体操に出会い、参加するようになりました。

さらに櫻井さんは、「天候不良などの連絡をもっとスムーズにできたら」と考え、開催情報を共有できるラジオ体操連絡アプリ「あさのわ」を開発。現在は、さまざまなラジオ体操会場でも活用できるよう改良を進めているそうです。

アプリを開くとこんな画面が表示されます(写真提供:櫻井肇さん)

 

櫻井肇さんと愛犬のりくちゃん

櫻井さんは器用に片手でリードを持ち替えながらラジオ体操を楽しんでいます

 

沓澤航汰(くつさわこうた)さん(中学3年)は朝、公園をランニングするのが日課でした。1年前ラジオ体操が始まり準備体操として参加するようになったそう。今ではラジオ体操指導員の資格も取得して、みんなの前で体操をしている頼りになる存在です。

 

藤元菜月さん(21歳の大学生)も毎朝参加です。早起きを習慣づける手助けになったそう。

彼女のお話を聞いて印象的だったのは、「雨の日などは家でやってみたけど、一人ではやらなくなった」というエピソード。

なぜなら「モチベーションが上がらない」からだそう。もう一つは「年配のお友達が増えてうれしい」と楽しそうに話します。

誰かと一緒だと楽しさも倍増するものですね。

 

参加者が受け身になるのではなく、それぞれが得意なことで役割を担い、助け合いが生まれているのも保木公園ラジオ体操会の魅力。

身体を動かすだけでなく、人とのつながりが心まで軽くしてくれる。ラジオ体操のもう一つの効果を感じました。

体操が始まると自然とこんな形に参加者の方が広がります。覚えていなくても指導員さんが前にいるので真似しながらで大丈夫

ラジオ体操の効果と今後の取り組み

保木公園ラジオ体操会の発起人である藤元さんにお話を伺いました。

 

藤元さんは日本体育大学在学中からNHKの「テレビ体操」の実技実演者として活動を始め、指導員歴は25年近く。現在は全国ラジオ体操連盟の理事も務めています。

「ラジオ体操は3分間でありながら身体へ適度な負荷をかけることにより効果がしっかりだせる体操です」と藤元さん。

そんなプロフェッショナルが支える保木公園ラジオ体操会では、参加メンバーがラジオ体操への関心を高め、この1年で9人も指導員の資格を取得した方を輩出しました。

保木公園で活躍する指導員の皆さん
左上から、駒井三彦(代表)、 赤野たかし、 渡辺早都子、栢森聡、栢森早苗、櫻井肇、 斎藤理恵子、岡本イツ子、沓澤航汰(敬称略)

ラジオ体操会が1年続いた秘訣を尋ねると、「正直、こんなに人数が増えるとは思わなかった」と藤元さん。代表4人が連携しながらラジオや旗を引き継ぎ、無理なく続けられる仕組みを作ってきました。体操後には太極拳や散歩など、それぞれが自然に交流を深め、ラジオ体操は単なる運動の場を超え、地域コミュニティの場へと育っています。

 

もちろん身体の変化に関する反響も。藤元さんには「腕が上がるようになった」「足取りが軽くなった」「血圧が下がった」といった声が寄せられているそうです。

発起人の藤元直美さん(右)

藤元さんは今後、相模原市にあるようなラジオ体操会場マップ作りを目指しているそう。

「青葉区内のどこでラジオ体操が開催されているかが分かれば、もっと参加しやすくなるはず」と藤元さん。ラジオ体操という日本の運動文化を次世代へつなげ、会場も増やし地域の輪をさらに広げていきたいという熱い思いが伝わってきました。

 

ラジオ体操は、ただ身体を動かすだけのものではありません。

 

 

“身体が整う”“生活リズムが整う”“人とのつながりが生まれる”

朝起きる理由になり、外に出るきっかけになり、人とつながる入口になる。「今日も行こう」そんな気持ちが、身体だけでなく心まで軽くしてくれるのかもしれません。100年近く続くラジオ体操が、今あらためて地域コミュニティの力として見直されています。人が集まれる環境がある、というのはとても大事なこと。

 

保木公園から広がる“朝の輪”。その輪が青葉区全体へ、そして次の世代へつながっていく未来が楽しみです。

今日の参加の皆さん

 

石手寺のラジオ体操。ラジオ体操会は全国で開催されています。写真は私が先日訪れた四国愛媛県。6月上旬、お寺の参拝中にラジオ体操が始まりました。毎週土曜日の掃除の後、皆さんでラジオ体操を行なっているそう。日本中たくさんの方が知っていて、みんなで集まれるラジオ体操ってすごい!

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この記事を書いた人
塚原敬子ライター
星空を見たり自然の中にいることが大好きで、今は歩きお遍路に挑戦中。 「健康は自分で作る」をモットーにヨガやダンス・ストレッチを教えています。人生はハッピーエンド、そんな生き方目指してます!
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