【レポートvol.1】市民メディアが集い、学び合った2日間「メディフェス横浜2026」
全国から市民メディアが集まる交流イベント「メディフェス」が、2026年1月24日、25日の2日間、20年ぶりに横浜で開かれました。テーマは「子どもと若者とメディア」「メディアリテラシー」「災害時の地域情報発信」など。横浜の複数の市民メディアが共同で運営を担い、森ノオトでは、メディアリテラシーに関するメインセッションと「ローカルメディアコンパス」のワークショップを企画しました。

「市民メディア全国交流集会」は、2004年に第1回が名古屋で開かれて以来、各地を持ち回りで開催してきました。2026年の横浜開催は20回目の節目にあたり、横浜での開催は2006年以来、20年ぶりとなりました。

 

今回の「メディフェス横浜2026」は、東京都市大学横浜キャンパス、日本丸メモリアルパーク訓練センター、ニュースパーク(日本新聞博物館)、象の鼻テラス、横浜市寿生活館、泰生ポーチなど、横浜らしい複数の会場を結ぶ回遊型イベントとして実施されました。5つのメインセッション、2つのワークショップ、2つの展示企画、5つの分科会、2つの連携企画で構成され、コミュニティFM、ケーブルテレビ、タウン誌、Webメディア、映像、SNSなど、多様な発信に関わる人たちが集まりました。

 

参加者は全国から約200人、オンライン視聴は延べ28人、1日目夜の交流会には96人が参加しました。横浜の市民メディアや地域の担い手に加え、教育、研究、行政、報道に関わる人たちが集い、それぞれの現場で抱える課題や工夫を持ち寄る場になりました。

 

森ノオトは、この2日間のうち、1日目のメディアリテラシーに関するメインセッションに北原まどか理事長が登壇、2日目の「ローカルメディアコンパス」の体験ワークショップをローカルメディアデザイン事業部の齊藤真菜さんが担当しました。

1日目のメイン会場は東京都市大学横浜キャンパス。メインセッションが2つと分科会が2つ開催された。写真は「こどもメディアえんたくん会議」で子どもと大人が話し合っている様子

市民メディアがメディアリテラシーを担えるか

1日目、東京都市大学横浜キャンパスで開かれたのが、メインセッション2「市民メディアでメディアリテラシー!」です。

 

このセッションでは、SNSなどで誤情報や過剰な表現が広がり、生成AIもフェイクに転用されうる時代において、市民メディアがメディアリテラシー教育の担い手になるには、どうすればよいのか、という問いが共有されました。

 

登壇したのは、白鴎大学特任教授で元TBSアナウンサーの下村健一さん、認定NPO法人森ノオト理事長の北原まどかさん、東海大学広報メディア学科教授の増田芽衣さんです。

総合司会は東海大学教授の水島久光さん、進行と模擬授業を下村健一さんが担当し、学びと対話を重視したメインセッション2。北原まどかさん、増田芽衣さんが、それぞれの事例を発表し、市民活動や教育、ジャーナリズムの現場で感じている情報社会の混乱への危機感について語り合った(写真提供 メディフェス横浜2026実行委員会)

下村さんの文章『想像力のスイッチを入れよう』は、小学5年生の国語の教科書(光村書店)に掲載され、学校のメディアリテラシーの授業に取り入れられています。

この日は下村さんが行っている訪問授業を模擬形式で再現し、その後、登壇者それぞれが現場で模索しているメディアリテラシーの実践について報告しました。

 

森ノオトから登壇した北原さんは、後述する「ローカルメディアコンパス」や「メディアリテラシー新聞」の取り組みについて紹介し、出会ってきた事例や地域メディアの現場で培ってきた視点を共有しました。

森ノオトで発行したメディアリテラシー新聞も会場で配布された。「肖像権」「災害とデマ」「ネットいじめ」など気になる10のテーマを一枚ごとにまとめた新聞風のプリント。家庭で会話のタネにして欲しいと2024年に作成した

増田さんは学生の読み書き能力の基礎を磨くために、あえて「スマホ禁止、ノートは紙かPCでとり、提出物は紙に手書きで出す」という方針を説明。「社会的に価値のあるメッセージを創造・発信できる人材の養成」するゼミでの最前線を語りました。

 

会場の参加者からは「市民メディアは学校現場と関わり教育現場からメディアリテラシーを育むべき」「行きすぎたオールドメディアの批判により敵対的認知が広がることへの懸念」「スマホを使わない時間を意識的に持つことでアナログの楽しみを生活に取り入れる」などの活発な意見が飛び交い、最後は下村さんは「1個の石を投げたら100万個の石となって人を傷つける発信よりも、1本の花を100万本の花束にして社会をよくする発信をしましょう」と呼びかけました。

 

市民が地域で情報発信を続けることと、情報をどう受け止め、どう伝えるかを学ぶことは切り離せません。

情報を「受け取る力」と「伝える力」を、子どもや若者に伝え、暮らしのなかでどう育てていくのかを考える時間になりました。

1日目の集合写真。メインセッション1は「子ども・若者とメディア」をテーマに「つづき&MMジュニア編集局」「石巻日日こども新聞」「かめおか子ども新聞」から子ども記者と運営者が発表を行った。京都府亀岡市、宮城県石巻市、横浜市から取材に関わる子どもたちがリアルで対面。大人と一緒に対話を行った(写真提供:メディフェス横浜2026実行委員会)

 

分科会「大学生が語る番組制作と情報発信の今」には大阪から龍谷大学と摂南大学の学生有志が参加し、近年の学生の放送、YouTube番組制作と配信を紹介し、その可能性について語りあった

 

「横浜のコミュニティFM大集合」の様子。横浜には、現在4つのコミュニティFM局があり、2026年には都筑区に「FM都筑」が開局予定。地域に根ざした公共的なメディアである「コミュニティFM」についてのパネルディスカッションは2日間通して行われた

「こんなときどうする?」を言葉にするワークショップ

2日目、ニュースパークで実施したのが、「市民ライターのローカルメディアコンパス体験会」です。

 

ローカルメディアコンパスは、クラウドファンディングを経て、森ノオトが2020年に発行した、情報の海を渡るためのワークショップカードです。令和の今、家族や暮らし方も多様になり、それがあたりまえになってきています。情報発信するにあたり、たとえばパートナーの呼称をどうするか、障がいや国籍、多文化、多様な生き方に関わる表現をどう扱うか、プライバシーをどこまで守るかなど、表現の常識が揺れ続けてきています。

 

普段森ノオトが運営する市民ライター講座内で行うワークショップでは、まずは参加者に同じトピックについて話し合ってもらいたいと、森ノオト側でピックアップしたカードを使います。

 

今回メディフェスでは、メディア関係者や市民活動として情報発信を行う人、横浜市内の市民ライター講座の受講生、メディアを学ぶ学生などが参加してくれました。日頃から情報発信について考えてきた人たちが関心を持っているのはどんなことかを知りたいという思いもあり、カードを参加者に選んでもらってグループごとに一定の方針を決めてみる「現場で考える私の方針」編としました。

 

2つに分かれたどちらのグループでもピックアップされたのが、たとえばPR記事の表記の仕方を考えるカード。市民活動をしている側からは「『PR』と大きく書けばいいのに」と疑問が出たり、「情報収集をしていてPRとわかるとガッカリする」といった受け手目線からの声も出たり。一方で企業の収益確保の必要性について理解を示す声もあり、レビューサイト等でお店の口コミを書く代わりに割引を受けるのは法律的に大丈夫なのか?といった議題も上がりました。

 

必ずしも答えが一つに決まるものではないからこそ、それぞれの経験や立場を持ち寄りながら、自分の方針を言葉にしていく場になりました。

メディアを学ぶ学生、市民メディアの実践者、市民団体の広報関係者やマスコミ関係者など、立場の異なる人が集まることで多様な視点と知見を交換する場となった

 

会場となったニュースパーク(日本新聞博物館)では新聞紙でバッグを作る「しまんと新聞ばっぐ」ワークショップが行われた。全国各地の76の新聞から自由に選び作成した新聞バッグを持ってパチリ(写真提供:メディフェス横浜2026実行委員会)

発信の技術だけでなく、姿勢を学び合う場

メディフェス横浜2026では、発信のノウハウだけでなく、「何のために伝えるのか」「どのような姿勢で地域と関わるのか」が、さまざまな場面で問われていました。

 

森ノオトが担当した2つのプログラムもまた、その問いに向き合うものでした。情報があふれる時代だからこそ、発信の量や速さではなく、地域の現実に根ざして丁寧に伝えること、迷いを共有しながら考え続けることの大切さを、あらためて確認する時間になりました。

 

メディフェス横浜2026は、私船本由佳が実行委員長を務めました。

森ノオトとメディフェスの出会い、そして運営の裏側についても次の記事で書きますので、ぜひ読んでくださいね。

初日の夜は「集まれ市民メディア!ショートプレゼン大会&交流会」が象の鼻テラスで開かれた。全部で12のローカルメディアが持ち時間5分でそれぞれの活動を紹介した。地域交流、子育て支援、調査報道、地域の記録など目的もさまざま、媒体も、映像、フリーペーパー、SNS、WEBメディアなど多彩(写真提供:メディフェス横浜2026実行委員会)

 

野毛に店舗を構えていたジャズ喫茶「ちぐさ」の精神を受けつぐミュージッククロニクルYokohama(ちぐさ保存会)が企画する「ジャズと街の記憶と記録」がメディフェス連携企画として参加。メディフェス来場者の目と耳を楽しませた

Information

発信する市民が増えると地域が豊かになる
「誰もが発信できる時代 わたしが考える市民メディア」

メディフェス横浜2026

開催日:2026年1月24日(土)25日(日)※開催済み

会場:東京都市大学横浜キャンパス、日本丸訓練センター、ニュースパーク、象の鼻テラス、泰生ポーチ他

主催:市民メディア全国交流集会よこはま2026実行委員会

共催:市民メディア全国交流集会協議会

後援:東京都市大学、東海大学広報メディア学科、ニュースパーク(日本新聞博物館)、神奈川新聞社、横浜市市民局

ウェブサイト:https://medifes.info/

facebook:市民メディア全国交流集会よこはま2026実行委員会

https://www.facebook.com/profile.php?id=61576380614074

X:https://x.com/medifes2026

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この記事を書いた人
船本由佳スタッフ/ライター
大阪出身の元TVアナウンサー。横浜市中区のコミュニティスペース「ライフデザインラボ」所長。2011年、同い年の夫と「私」をひらくをテーマに公開結婚式「OPEN WEDDING!!」で結婚後、自宅併設の空き地をひらく「みんなの空き地プロジェクト」開始。司会者・ワークショップデザイナー。
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