森ノオトは3回にわたり、これまでの取材ネットワークを通じて、拠点のコーディネートと案内役を務めました。
「あおば拠点歩き」のコーディネーターとして森ノオトに声をかけてくださったのは、森ノオトが社会起業支援で長年お世話になっている関内イノベーションイニシアティブ株式会社の治田友香さんです。
「セカンドキャリアあおば地域起業セミナー」の運営者として、今年から「次世代郊外まちづくり」とのコラボで、青葉区で起業したい、何かを始めたい人向けのまち歩きをしたい、ということで、これまでの取材のネットワークで何かお役に立てることがあれば、と思ってお引き受けしました。
森ノオトで長年、青葉区のさまざまな活動やお店を取材してきて、住宅地で何かを始める人ほど、「なぜその地域なのか」を追求し、「そこで暮らす人の生活に密着していること」を大切にしているように感じていました。
治田さんからこの話を聞き、あえて駅から離れた住宅街で、「その地域」にこだわって拠点を運営している人たちを訪ねてはどうかと、初回のエリアとして「美しが丘西」を提案しました。
第1回目の「あおば拠点歩き」は、7月6日に行われました。この日はあいにくの雨で、レインコートと長靴に身を包み、バスにのってたまプラーザから美しが丘西に向かいました。
郊外住宅地の一軒家を活用した、地域の女性が集い働く「book&cafe Nishi-Tei」がこの日の集合場所です。参加者たちは飲み物やケーキを囲みつつ、店主の岡崎牧子さんが起業のきっかけと、大切にしていることに耳を傾けました。
Nishi-Teiでは、カフェのほか、ワークショップに場を貸し出したり、手仕事の展示会をおこなうなど、用途にとらわれない自由な発想で場が運営されています。
「女性の一生は、子育て、介護など、状況によって大きく変わる。家の近くで働くことを通して、お互いを応援しあえる関係をつくる」という話や、近隣との関係性を重視して地域清掃などを心がけている話に、「地域と関わるには、そこまでやるんだね」と、参加者は感心していました。
<森ノオト記事>
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まるで避暑地!? 本と緑に包まれる 美しが丘西「book&cafe Nishi-Tei」
https://morinooto.jp/2017/07/29/nishitei/
続いて訪れたフラワーショップ「空の箱」の店主・大谷明子さんは、店舗のドアをいつも半分開けています。「地元の小学校の通学路でもあり、学校帰りの子どもたちがフラッと立ち寄れる駄菓子屋的な存在でありたい」と話し、夏休みには子どものお仕事体験を受け入れています。子どもたちがお客さんを呼んでくれることもあり、コミュニティが豊かになっているんだとか。
「家とも、学校とも、ご近所とも違う、タテの関係性をつくれるのが、地域で仕事をしていてよいなと思うこと」という大谷さんの話が印象的でした。
<森ノオト記事>
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植物を通して、人々に癒しを与える場。 美しが丘西・花屋「空の箱(そらのはこ)」
https://morinooto.jp/2014/04/15/soranohako/
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6月のコマデリ/コマロコな人々:フラワーショップ「空の箱」のオーナー・大谷明子さん
https://morinooto.jp/2016/06/25/comadeli1606/
美しが丘西地区センターは、まさに公設のコミュニティ拠点です。体育室、音楽室、調理室、図書室、キッズスペースや会議室などを兼ね備え、営利活動以外の地域活動を応援してくれます。地区センターと地域ケアプラザとの違いについても、青葉区の職員さんより紹介されました。
その次は美しが丘西エリアの「カフェブランコ」を訪ねました。店主の井口直之さんは、脱サラ・起業したきっかけについて「ワークライフバランスを考えるなかでキャリアチェンジをした」と話します。
職人気質な井口さんの背中を押したのは妻の幸子さんで、「私たちにとってお店を開いたことはとてもよかった。サラリーマンの妻時代が自分の”前世”になってしまったと思うくらい、人生が変わった。必要以上に稼いで必要以上に消費していた昔よりも、必要な消費しかしなくなった今の方が楽しい」と話してくださいました。
井口さんはあえて駅から遠い立地を選んだ理由を、「中南米産というマニアックなコーヒーは、一人ひとり顔が見えるお客様に対してていねいに伝えていきたい商品。商品特性と立地がマッチする。結果的に、こだわり派の人が毎週のように来てくれる」と話します。学校帰りの小学生との会話が日課になり、確かな場を確立している井口さんの情熱は、参加者の心に火を灯したようでした。
<森ノオト記事>
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中米産スペシャルティコーヒーでほっと一息。美しが丘西「カフェブランコ」
https://morinooto.jp/2015/07/25/cafebranc/
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美しが丘西、夢のような「子ども1日お仕事体験」!
https://morinooto.jp/2016/08/19/utsukushinishioshigoto/
続いて向かったのは、美しが丘第六公園内の「平津SUNサロン」です。平津三叉路の交差点のすぐそばにあることからつけられたネーミングです。美しが丘西部自治会が30年間積み立てた自治会費と、ヨコハマ市民まち普請事業の資金を活用して、住民念願のコミュニティ施設が建ったのは2011年のこと。特定の地縁だけでなく、地域住民に開かれた場として活用されています。場の管理運営、鍵の開け閉めなど、柔軟な運用と、地域住民の信頼関係、そして自分たちに必要な場所を自分たちでつくる「自治」について、大切なヒントをたくさんもらいました。
最後に、次世代郊外まちづくりのコミュニティ拠点「WISE Living Lab.」に場を移し、今日の振り返りをおこないました。
地域で起業したい、何か活動を始めたい人たちにとって、すでに地域で活躍している人たちの経験と話は、とても大きな刺激と、一歩踏み出すきっかけになったようです。
今回ご紹介している森ノオトの記事の多くは、まち歩きのコースとなった「美しが丘西」に住んでいるライターの清水朋子さんが手がけています。地域住民だからこその視点と実感がこもった記事が、生活に根ざした「地域起業」の視点を支えてくれています。森ノオトは、そんな市民ライターに支えられて運営しています。
清水さん自身をインタビューした記事が森ノオトにあるのですが、その中で、彼女は次のようなことを語っています。
「森ノオトが生活の中心になっていた時期を経て、今やっぱり近所の歩ける範囲に森ノオト的なコミュニティがあって、子ども同士仲良くなったり、安心して預けられたり、話せる友達がいるというのがいいなって感じるんだよね。今は、自分の住んでいるところにエネルギーを使いたいなって思っているの」
起業というと、どうしても駅に近いところで、仕事のテーマをベースにしたコミュニティがつくられがちですが、「地域起業」に関していえば、住んでいるところで、生活者として、いかに地域を必要とし、地域に必要とされる関係性を築いていくのか、ということが重要なのではないかと感じます。清水さんの話のように、自分の住んでいるところの魅力を発見し、そこに力を注いでいく人がふえることで、その地域が自ずと活性化していくはず。
そんなことを、美しが丘西エリアでお伝えできればと願って案内をした「あおば地域拠点歩き 美しが丘西編」。私自身、あらためてこのエリアの持つ力を実感する、いい1日でした。
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