2/1スタート!「青葉区食育丼」前半のテーマは「すがたをかえる大豆御膳」です。
2024年2月1日より、横浜市庁舎2階の「TSUBAKI食堂」で、食育をテーマに青葉区産の食材を使った「青葉区食育丼」が期間限定でスタートします。横浜市の小学3年生は、秋頃、「すがたをかえる大豆」をテーマに国語の学習をしています。学校での学びとつながる横浜の大豆の物語を、ぜひご家族で味わっていただきたいです。

私には今、小学3年生の娘がいます。昨年の秋、大豆製品について音読していたので、「ママは毎年大豆の収穫をしているんだよ〜」と声をかけたら、関心をもって収穫についてきました。そう、横浜市内の小学3年生は、秋に国語の教科書で「すがたをかえる大豆」という単元で学習をしているのです。

 

2023年11月11日、JA横浜田奈支店「ハマッ子」直売所「四季菜館」近く、恩田川沿いにある畑で、大豆の収穫を行いました。「遊休農地を活用する会」の皆さんに、2017年より森ノオトの大豆を作り続けてもらっており、毎年11月の収穫に森ノオトのメンバーも参加して一緒に汗を流します。ここで収穫した大豆は1〜2月に選別して、3月に手前味噌づくりを続けてきました。

娘たちもこれまで、母に付き合って大豆の収穫を体験してきていたのですが、今年はちょっと様子が違います。ちょうど学校で学んでいるタイミングだったので、大豆を見るなり「あ、これ教科書にも出ている」と言い、収穫後に一枝持ち帰って、ベランダに置いて、教科書と見比べていました。そして、学校に大豆の枝を持っていき、教室に飾ってもらいました。

恩田川沿いの畑で、大豆を収穫する。結構な力仕事になるが、全てひっこ抜くと爽快な気持ちになる

 

毎年大豆のはさがけを背に、遊休農地を活用する会の皆さんとの集合写真

大豆は、姿を変えます。

私たちが普段目にする大豆は、種の状態で、それを植えると芽が出て、葉が広がり、ぐんぐん成長して、夏には枝豆になります。それが秋を経て、立ち枯れるような状態で乾燥したら収穫の合図。森ノオトで作ってもらっているのは「津久井在来」という品種で、一般の大豆よりも粒が大きく糖度が高いのが特徴です。味噌づくりによく利用されるほか、甘みが強いので煮大豆にも向いています。

ちなみに、枝豆も大豆からできるのですが、枝豆としておいしい品種はまた別にあり枝豆だけでも400種以上とも言われています。私は、津久井在来の枝豆も夏においしくいただきましたが、枝豆の形では市場に出回っていません。

 

大豆は、ほかにも「きなこ」「豆腐」「納豆」「味噌」「醤油」「もやし」などに姿を変えていきます。お正月料理の「黒豆」も大豆の仲間ですね。私たちの暮らしや食文化に、大豆がいかに欠かせない食材かがわかります。

森ノオトが主催して2018年より続けてきた「100人のひとしずく〜手前味噌プロジェクト〜」の様子。にいはる里山交流センターの吉武美保子さん(手前左)の協力のもと、料理家のみつはしあやこさんの持つ大きな木桶に味噌を仕込んできた。

農水省認定「地産地消の料理人」「濱の料理人」代表で、横浜市庁舎2階にある「TSUBAKI食堂」オーナーシェフの椿直樹さんは、横浜市18区の農業の個性を生かした「横浜18区丼」という活動を2021年〜2022年にかけて行ってきました。2021年に「青葉区丼」のコーディネーターを務めた私は、昨年、「食育をテーマに再び青葉区丼をやりたい」と相談された時に、すぐにネタが浮かばなかったのですが、11月に大豆の収穫をした時、「これだ!」とひらめきました。

今、わが子が学校で学んでいるテーマが、私たちの活動に直結しています。「すがたをかえる大豆をテーマにやりませんか?」と椿さんに提案したところ、出てきたのがこちらのメニューでした。

2月の青葉区食育丼のテーマは「すがたをかえる大豆」。松花堂弁当の中に、大豆がいろんな形で詰まっている

丼というか……松花堂弁当なのですが(笑)、美しいお弁当の中身は大豆づくし。左上から時計回りにご紹介しましょう。

 

・がんもどき(水気をきった豆腐に野菜などを加えて丸めて揚げたもの)

・炒り大豆の衣の天ぷら(添える醤油も大豆が原料)

・白玉団子のきな粉がけ

・煮豆

・ごはん(青葉区奈良町の農家、三澤さんの「はるみ」

・豆腐の炒り煮

・味噌汁(森ノオトの手前味噌を使っていただきます!)

 

お味見しましたが、大豆づくしなのに豆だけ食べている感じがしない。和食文化と大豆が切っても切り離せないものであることを痛感します。大豆は姿を変えながら、私たちの食生活に根ざしています。

青葉区食育丼、後半は「あおば小麦プロジェクト」の奥山誠さん(左)がコーディネーターを務める。青葉区食育丼の主役である大豆を生産してくださっている「遊休農地を活用する会」の三澤元芳さん(左から2番目)、横浜川崎ふるさとの生活技術指導士として長年味噌づくりを指導してこられた三澤百合子さん(右から2番目)とともに

1月下旬の晴れた日、大豆とお米をいただきに、「遊休農地を活用する会」の三澤元芳さんのご自宅を訪ねました。今年採れた大豆は40kgほどです。

大豆は6月ごろ種をまき、11月に収穫して豆になるまで約半年。雑草、鳥害、夏の高温と水管理など、大豆を無農薬で育てるのはとても大変な作業で、長期間に渡って手間がかかります。収穫後も完全に乾燥するまで天日に干して、その後、機械で脱粒、選別をかけます。出荷するまでにはさらに、目視できれいな大豆を選り分けていきます。

 

こうした作業を経て市場に出荷される大豆ですが、市場に出回っている大豆の値段を見ると、農家さんたちの手間と苦労にそぐわない金額であることがわかります。三澤さんは「大豆の生産は大変で、横浜では正直、自家用くらいでないと作るのは難しい」とおっしゃいます。私たちが買った大豆と、農家さんの手間とが割に合わないことは、私もその実態を知るにつれ、本当にその通りなのだと感じています。今後、農業が持続可能であるために、「食べる側」の私たちが何をしたらいいのか、考えさせられます。単に私たちの買取価格を上げれば済む話ではなく、システムとして考えていかないと、根本の問題は解決しないのでしょう。

乾燥した大豆を一枝ずつ機械にかけて脱粒する。細かいチリが舞い、目に入ると痛い

少なくともこの7年、大豆作りをお願いするなかで、これまで知りもしなかった「大豆がどのように生産されるのか」を見て、聞いて、感じて、それでも「横浜産の大豆で味噌をつくりたい」と言い続けられるのかどうか、今、自分自身に問いかけています。

 

子どもたちが学校で習うことの裏側にある、大豆がどのように育ち、収穫され、手元に届くのか、生産環境や農作物の取引価格についても、大人たちは知るチャンスがあり、知ることでよりよい環境を作ることができるはずです。これもまた、食育の一つなのかもしれません。

 

たとえ小さな力であっても、森ノオトにできることは「伝えること」しかない。椿さんの食育丼を通して、大豆がどのように生産され、姿を変えて、食卓にのぼるのかに、思いを馳せていただければ幸いです。

機械選別をかけた後は、目視で大豆を一粒ずつ選り分ける。粒が小さいもの、石のように固いものは、茹でる時にも硬いのではじいていく

コロナ禍の時期から大豆の手選別を森ノオトのメンバーで行うようにしました。今回の大豆は、椿さんにも選別に参加してもらいました。

「うわ、これ手でやるんすか……。大変ですね。俺、できないわ……。料理を作る、その以前のことをもっと知らなきゃですね」と、椿さん。

森ノオト事務所のウッドデッキで、大豆の選別をしました。奥山さんはとても器用に、パパッと大豆を選り分けます。「小麦の選別も目視でやってますからね」と余裕の表情

今回、煮豆に使うのは、椿さん自らが選り分けた大豆です。TSUBAKI食堂の料理人たちが、愛情込めて料理してくれます。

味噌汁の味噌は、みつはしあやこさんの100kg入る大きな木桶で熟成させたもの。コロナ禍の3年間、おおぜいで味噌を仕込むことができないなかで、クラファンなどで志と味噌種をつないできたものです。椿さんも「自分も味噌を仕込んでみたいな」と言っており、これから味噌づくりがまた新たな形で発展していくかもしれませんね。

TSUBAKI食堂のホールを任せられている輿水隆太郎さん(左)と、椿さんの右腕で調理場の守護神・枝吉直樹さん(右)。アットホームで温かいスタッフの皆さんとの交流も、TSUBAKI食堂を訪れる楽しみの一つ

青葉区食育丼は、横浜市庁舎2FにあるTSUBAKI食堂で2月1日(木)〜15日(木)に期間限定で食べられます。1日限定20食。絶対に食べたい方は、予約してから行くのがおすすめです。

Information

TSUBAKI食堂presents「青葉区食育丼 前半」

日時:2024年2月1日(木)〜2月15日(木)

1日限定20食(予約がおすすめです)

※後半は2月16日(金)〜2月29日(木)まで。テーマは「あおば小麦」です。続報はまた森ノオトでお届けします。

 

TSUBAKI食堂

住所:横浜市中区本町6-50-10 横浜市庁舎2階 LUXIS FRONT内

営業時間:11:00〜15:00 / 17:00〜22:00

電話番号:045-211-4300

詳細はTSUBAKI食堂HP(https://tsubaki-shokudou.com/)またはFacebookページ(https://www.facebook.com/tsubaki.ygc)でご確認ください。

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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